3 新しい仲間
妙に盛り上がってしまった場を、今回も「アラン隊長」がビシッと引き締める。
「だからな、時間ねえんだろ? 笑いたいとか、昔話したいとかの気持ちも分かるけど、そういうのはやることやってからにしようぜ?」
いつもより2人多い顔ぶれに、上からビシッと決める。
「はい、すんません!」
「ごめんなさい!」
「兄貴ごめん!」
「あの、ごめんなさい……」
「ごめん!」
いつもより多い2人も、常連3人につられるように、次々と謝る。
「わかりゃいい。そんじゃ始めるぞ」
「はい!」
5人が声を揃えて言う。
「俺、てっきりトーヤがリーダーになってるんだとばっかり思ってたけど、アランだったんだな……」
ダルがぼそっとつぶやいた。
「いやいやいや、違うぜ? いつもは俺がきっちり締めてんだけどな、時々こうしてアランにも花を持たせてるんだ」
「本当かなあ」
ダルは完全に信じていない顔だ。
「いや、それは本当」
アランが言う。
「一応いつもはもうちょっとしっかりしてるんです。戦場とかでは特に。けど、なんでか時々こんな風に、ガキみたいにうちの妹とギャンギャンやり合ったり、めんどくさそうにダラダラする時があるんすよ、トーヤ。そんな時はしゃあないんで俺がこうしてます」
「そうなのか」
その言葉にダルも一応納得したようだった。
「あー、でも言われてみれば、なーんか分からんでもないなあ。そういやトーヤってそんな感じだった。離れてたらいいとこばっかり浮かぶもんだな」
「って、そりゃどういう意味」
「ほら、また脱線するだろ」
「すんません!」
「ごめんなさい!」
今度はトーヤとダルの2人だ。
「本当にアランはしっかりしてるからね」
シャンタルがくすくす笑う。
「おまえもだぞ」
矢印がシャンタルに向く。
「ひとごと、みたいな顔して笑ってんじゃねえよ。もうちょい真剣味持てよな。大体な、そもそもおまえのことだろうが!」
「はい、ごめんなさい!」
あのシャンタルが、いつも能天気でマイペースのシャンタルまでアランに叱りつけられるとこうなるのか、とミーヤとダルがびっくりする。
「おまえらさ、どうやって三年間過ごしてきたんだよ……」
ダルが思わずトーヤにそう言うと、
「まあ、ずっとこんな感じだ」
トーヤが愉快そうにそう答えた。
「ここを出てからあっちに行って、そりゃもう色々とあったさ。最初のうちはこいつもちびだったしな。すぐに戦場に行ったわけじゃねえ。金もたっぷりあったし、しばらくは世界中のあちこちを旅して回った」
「そうだったねえ」
シャンタルが懐かしそうに言う。
「中の国の砂漠もラクダで渡ったね」
「ラクダ!」
ダルがその言葉に反応する。
「ラクダって、砂漠を歩ける唯一の動物っていう、あのラクダ?」
興奮のあまりか、神聖なる主への言葉遣いが仲間へのそれになる。
「あ!」
言ってしまってから気づいて口を押さえたが、
「うん、それがいいね。ダル、これからもそうして話してくれる?」
「ですが……」
「その方がね、私も心地がいいんだ。すごく話しやすい」
「ですが……」
「頼んでるんだけどなあ」
美しい顔を少し傾け、お願いする顔でダルをじっと見る。
この表情でじっと見られて、それに逆らえる人間などいるだろうか。
「あ、あの……あの……」
忠誠心と甘い誘惑。さらに自分の立場を考えてその間でダルは大混乱だ。
「なあ、ダル」
横からトーヤが話しかける。
「ちょっとだけ考え方を変えてみねえか?」
「考え方?」
「ああそうだ」
そう言って立ち上がり、シャンタルの両肩にどしっと両手を置く。
「いったいなあ」
シャンタルがのんびりと、本当はさほど痛そうにではなくそう言った。
「おまえはな、こいつが神様だ、主だ、そう思うから固い口調に、どうしても敬語になっちまうだろ? けどな、こいつは今はおまえの仲間なんだ」
「仲間……」
「そうだ」
「うん、そうだね」
本人のシャンタルもそう言う。
「仲間にな、そう四角四面さようございますで話しててな、仲良くなれるか?」
「仲良く……」
「そうだ。八年前のあの時のように、今度はおまえがこいつに心を開いてやってくれよ」
「心を開く……」
ダルは当時を思い出すように、少しだけ空中に向かって顔を上げた。
「必死だったろうよ、こいつに心を開いてもらおうと」
「そうだったねえ」
「おまえさ、こいつにまたそういう作業させたいか? あんなザルで水汲むような作業」
「いや、そんなこと!」
「だろ? だからさ、仲良くしてやってくれよ、な?」
「仲良くって……」
まだもぞもぞと落ち着かない様子のダルに、今度はシャンタルが、
「うん、新しい仲間のシャンタルです、よろしくね~」
と、軽い感じでひらひらと両手を振るのにダルがびっくりする。
「だめかな?」
またあのお願いだ。
「わかりま……分かったよ、シャンタル、よろしく」
「うん、よろしくね」
「こちらこそ」
シャンタルの心の底からの笑みに、ダルもこれでよかったんだとやっと思えた。
「ってことで、あんたも頼むな」
「えっ!」
今度はミーヤが驚く。
「あんたも、こいつのこと、仲間にしてやってくれよ、頼んだぜ」
「え、でも、私は侍女ですし……」
ミーヤはダルとは少し違う。
この宮で、まさにこの方に仕えるためだけにここにいる、そんな存在なのだ。




