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 6 二人の世話係

「本日より、アーダと共にこのお部屋の世話係となりましたミーヤです、よろしくお願いいたします」


 ミーヤがアーダと共に「エリス様」の部屋へ挨拶をしにやってきた。


「先日は従者が大変お世話になりました。これからよろしくお願いいたします、とのことです」


 ベルが「エリス様」の言葉をミーヤに伝える。


「私も引き続きミーヤと共にお世話させていただきます」


 アーダがニコニコして横から添えた。


「はい、アーダ様もよろしくお願いいたします」


 ベルもにっこりとアーダに言う。


「それから、私もミーヤと同じく、月虹兵係も拝命いたしました。月虹兵が『宮』に参りました時には、両名とも少しばかり忙しくしていることもあるかも知れません。決して皆様を疎かにはいたしませんが、少しばかり慌ただしく見えることがありましたら、その失礼をお許し下さいませ」


 アーダが続けてそう言って頭を下げる。


「では、今日は早速ですがミーヤ様に皆様をお任せして、私は今日来られるダル隊長と少しお話をさせていただいてきます」

「はい、ダル隊長によろしくお伝えください」

「はい、分かりました、ではミーヤ様、よろしくお願いいたします」


 そうしてアーダは下がっていった。




「いやあ、なっちまったか」


 まだアーダを見送っているミーヤの後ろ姿に向かって、誰とは言わないがそう言った者がいた。

 ミーヤが振り返り、仮面をかぶった人物をじっと見た。


「えっと……」


 言い出したものの、なんて続けていいのか分からない。


「おっしゃっていた通りでした」

「え?」

「キリエ様は、私を守るため、そして動きやすいようにとあえて離していたと」

「ああ」


 やっぱりそうだったか、とトーヤは思った。


「それがなんでいきなり」

「セルマ様が、私に『おまえがあのミーヤか』と」

「え?」

「八年前、託宣の客人の世話役になり、一時(いっとき)はシャンタル付きになったのが私かと」

「ああ」


 そうして、「エリス様」ご一行の前でセルマとのやり取り、キリエと話したことなどを説明した。


「そっか、じゃあそのセルマって『取次役』が、あんたのことからキリエさんを攻撃するネタにするって可能性もあるな」

「やはりそうなのでしょうか」


 ミーヤが暗い顔になる。


「私が、知らぬ顔でおっしゃる通りにしておけば、キリエ様にご迷惑をかけることもなかったのでしょうか」

「いや、そうとも言えんだろう」


 トーヤが続ける。


「今、この時にあんたのことを思い出してなくても、色々探ってるうちにそのうち行き着く。考えようによっちゃ、その時ににっちもさっちもいかなくなってからより、今の方がよかったかもな」

「そうでしょうか」

「そう思うしかないだろ?」

「それはそうですが」

「なるようにしかならねえんだからよ」

「そうですけどね」

「そうですけど、なんだよ」

「やっぱり、キリエ様にご迷惑をおかけしてるように思えて」

「だからって、その時にあんた、自分の考えを曲げてごもっともって言うこと聞けてねえだろ? そんな性格じゃねえしな」

「なんでしょう、なんだか少し引っかかるおっしゃり方ですね」

「いや、頑固だしなあ」

「まあ」


 やり取りを聞いてシャンタルがクスクスと笑った。


「なんだよ」

「いや、マユリアが2人が話しているのが面白いって言ってたなあと思って。それに、アランとベルと会ってすぐからも、トーヤはベルとそんな感じだったよね」

「そ、そうか?」


 なんとなくベルの名前を出されたことで動揺する。


「うん、すごく気にいってるんだなあとすぐに分かったよ」

「そんなことねえだろ、あんな小汚えくっせえガキ」

「るせえな!」


 ベルがトーヤの反応に噛み付く。


「いや、本当、なんだこいつって思ったぞ。そんなんをほっとけねえ、連れてくって言われてやれやれだったわ」

「なんだと!」

「ほんとのことじゃねえかよ」

「思い出した! 人のこと、乱暴にゴシゴシゴシゴシ洗いまくりやがって、どんだけ痛かったか、どんだけお湯飲んだか!」

「そりゃおまえが文句言うからだよ。黙って洗われてりゃそんなことなってねえだろうが」

「かわいい女の子にあんな扱い、思い出しても許せねえ!」

「どこが女だ、ああ?」

「女だよ! なんなら証拠見るか? え、おっさん!」

「誰がおっさんだ!」

「いってえな! はたくな!」


 と、そのへんまで続けて2人ともハッと止まった。

 恐る恐る、横を見る。


 オレンジ色の侍女がニコニコと笑って見ていた。


「えっと……」

「あの……」


 笑顔が、怖いか怖くないか微妙なところだ……


「あ、あのな」


 トーヤが急いで言う。


「こいつ、見つけた時な、もう3年も風呂入ってなくて、そりゃもうどろんどろんに汚れまくって、そんで臭くてな」

「そ、そうそう。そんで、お風呂にぶち込まれたんです」

「泡も立たなくて、そりゃもう大変だった」

「けど、もうちっと優しくしてくれてもよかったと、今でも思う」

「しゃあねえだろう、触るのもいやなぐらいだったし」

「なにを!」


 また言い合いが始まりそうになるのに、


「本当に仲がいいんですね」


 と、オレンジの人がにっこりと笑うのに、2人が思わずゾッとした。


 どっちだ!?

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