黒くて暗い
目を開けた時、最初に入ってきたのは黒だった。起き上がりながら、状況を確認する。
黒色で覆われていた。それ以外に見えるものはなく、その黒に世界が支配されているようだった。なにも分からず、俺は立ち上がりながら、次の情報を望んだ。
そうして気づいたものは、臭いだった。異臭がしたのだ。その臭いを嗅いだことがあるかと聞かれれば、無いと断言できる。だけど、なんの臭いか察することができた。
ーー血だ。獣臭さがあって、鼻の奥に溜まるような臭い。だけど、怪我をした時に嗅いだ臭いと何かが違う。不思議な臭いだ。
「うっ……気持ち悪い……なんでこんな所に」
全てが分からない。次々と疑問が湧いてくる。そしてその答えが欲しいと思う。
でもそれ以上に、ここに長い時間いるのは無理だと思った。だけど周囲に何があるか分からないから、迂闊には動けない。
「どうしたらいいんだ? あっ、そういえば……」
その時、目が覚める前、というより自分が眠る前のことを思い出した。
「ステータス」
ーーステータスーー
名前
レベル99
属性
HP1000
MP1000
攻撃力1000
防御力1000
素早さ1000
[スキル]
付与
ーーーーーーーーー
「え……?」
無かった。『光魔法』も、『説明』も。俺が欲しかったものがなかった。あるのは数字の羅列だけだった。
『光魔法』も、『説明』も、希望だったのだ。たとえ僅かなものだったとしても、思い出した時、確かに希望が生まれていた。
なのに、無かった。
「なんで……?」
希望が絶望に変わっていく。
「嫌だ、嫌だ、いやだ……怖い」
そして、耐えていたものが溢れ出す。
不安だった。目覚めたら、知らない場所にいて、シュポンという謎の人に会って、今のこれだ。限界だった。
心も暗くて、黒に閉ざされていく。