8.偽り
「これはフェイクじゃな」
「「フェイク?」」
フェイクとは幻術の類で、一般には周囲にあるものを存在するように見せたり、逆に存在しないように見せたりと幻想を見せるものとして認識されている。しかし、フェイクは本来相手の脳内に暗示をかけ認識力に狂いを生じさせるものらしい。
「つまり、我らは”歩いていないのに歩いている”もしくは”この道はループしている”という幻術をかけられているのじゃ」
「なによそれ!ルルミどうにかできないの?」
「解く方法は第三者によるスキルの解除、または本人の精神の乱れのどちらかじゃの。まあ、ここには第三者がいないのじゃから、自力で解くしかないがの」
そう言い終わると同時にルルミは一度手を叩くと、周りを見渡しなるほどと一言呟いた。
「おい、ルルミどうしたんだよ!」
「我は自分にかかっているフェイクを解いたのじゃよ」
なら!
「解いてくれ、か?それは無理じゃ、我はあくまで守護者お主たちがここで終わるならそれも、またそれも運命じゃの」
「くそ!ルルミのやつ!アーデさんもなんとか言ってくださいよ!」俯き目をつぶっているアーデに向かって僕は言った。
「シオさんこんなところで躓いていては、遺跡を降り終えるなんて夢のまた夢です。だから私は自力でなんとかしないといけないと思うのです」
力を得るためにも最低限の力が必要。そのためにもこの遺跡には守護者たちがいる。これもその守護者の攻撃ならば超えなければならない。そう思ったアーデはもう一度目をつぶり自力で解こうと試みた。
それから約1時間が経過し、初めに口を開いたのは当然この男である。
「おい、ルルミ。早く解いてくれ!」
「なんじゃ、まだ1時間ほどしか経っておらんぞ?」
「うっさい、僕は最下層まで行って力を得られればそれで良いんだ。こんなところで解くまでへばってても意味がないんだよ」
さて、最近の奴らは甘いのお。
「なら、お主らにヒントをやろう」この言葉にシオが目を輝かせたのは言うまでもないが、俯いていたアーデまでもが顔を上げた。
「我はさっき解除の術を教えてやったじゃろう」
ああ、教えてもらった。でも、できないものはできないもんだ!ルルミに早く教えろと眼差しを向ける。
「はいはい、わかったわかった。まずお主らが自力で解く方法は、さっきも言ったが精神の乱れじゃ。お主らは平常の状態でフェイクという技にかかっている。つまり、平常ではない精神にすると解けると言うことじゃ」
ん??どうゆうことなんだろう。
「それはどうゆうことなの?」
おお、代弁ありがとうアーデさん。
「例えばじゃ、海辺で波が波打っているのを想像してみるのじゃ。その波は常に変わることなく波打つ。しかし、もしそこに岩を置いたとしよう。すると、どうじゃ」
「「波の打ち方が変わる」」
「そうじゃ、お主たちの今の心の波を変えることができればフェイクは解けるのじゃ」
なるほど、簡単に言いやがって、
「ルルミ!解けたわ!ありがとう!」
周りを見回してそういうアーデ。流石、勇者の末裔と言ったところではあるか。
「アーデさん、どうやったんですか」僕はゴマをするような手でそう聞いた。
「私はシオさんをぶった時を想像したら解けました」
ふーん、なるほどなるほど。おい、ちょっと待てそれはどういうことだ?僕を出汁にして嫌なことを思い出し、精神を乱れさせたと?
くそ、僕も仕返ししてやる
「むむ、むむむ〜…」目を閉じて想像する。ここを出たらアーデさんとイチャイチャ異世界生活、あれやこれやと手解きしてもらって…「むふふふふ…」
「どうせまた変なことでも考えているんでしょう」
「し、失敬な!そんなわけ、ふふふ…断じてアーデさんであれやこれやと、考えているわけではないですよ!」
しっかり、ぶたれました。ぶたれたと同時に閉じていた目を開くとそこには、先ほどの一本道ではなく、長いテーブルの食卓があるではないか。
「シオさん、これはどう思いますか」
「ご飯だ!ご飯!ごーはんごーはん!」
ダメだこの人と、改めてシオのバカさを思い知ったアーデだった。
はい、どうもストックが尽きた石です。いやあ、早いもんでなくなりました(笑)。これからは毎日あげるのは難しくなりますがよろしくお願いします。