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〜幕間〜

「王よ……今、お助けいたします。このダロス、命に変えても————」


 白を基調とした美しい城内は淀んだ空気に犯され、歪な雰囲気を漂わせていた。

 満身創痍となった身体を引きずりながら襲い来る敵を退ける。敵は何者かなのか、なんの前触れもなく突如として現れたそれは、人間でも魔物でも無い“何か”——渾身の力を振るいながら敵を倒しては守べき主君のもとへダロスは向かった。


「王よ!! ご無事ですか————ぁ、ぁぁ」


 その目に飛び込んできたのは、白骨の仮面を被った燕尾服の人物。その手に吊り下げられていた変わり果てた主君の姿。

 そして王座には、誰にも望まれず、何の資格もない一人の男が不遜な態度で座し、命がけで辿り着いたダロスを歪んだ双眸で見つめていた。


「まだ、生きていた人間がいましたか、はい。この国で重要な人間には皆さん死んで頂く予定ですので、はい。さようなら」


「いや、こいつは生かしておく。どうだ魔法使い? 私に仕えないか?」


 玉座に座ったままダロスを見下げる男。だがダロスは、その顔に見覚えがあった。


「貴様は——異世界の!? 国王様の御恩上をこのような形でっ、よくも」


「私は選ばれた人間、特別な人間がそうでないものを統べるのは当然だろう? おまえ達が王と慕うこの男は選ばれなかった、それだけのことだ」


 その男は、ダロスを睥睨しながら口角を歪に吊り上げた。


「誰が貴様などに——この命尽きようともこの場で貴様等を討つ!!」


 ダロスは残り少ない魔力をその命を犠牲に絞り出し、掌へと魔力の渦を出現させる。


「これは、これは——死際に一矢報いようとする。美談ですねぇ、はい。術式もお上手です、子供の落書きにしては。はい」


 燕尾服の人物は仮面の下に揺らぐ双眸を歪に光らせ、軽く撫でる様にダロスの行使しようとしていた術式を消し去った。まるで児戯だと言わんばかりに砕かれた命がけの一撃は、同時にダロスの心も粉々にした。


「これ程までに、力の差が——」


「ふはっ、滑稽だな魔法使い? おまえの命がけは消えてしまったようだが——さあ、選べ。今すぐ死ぬか、私に仕え、生きたまま死ぬか」


 男の双眸が弧を描き、屈辱と憎悪に打ち震えるダロスを見下げる。


「殺せ! 私が仕えるべきお方は国王のみ、死んでも貴様などに屈っするものか」


「確か、こいつの息子が逃げたようだったな? おい、エンヴィル——すぐ追いかけて殺せ」


「御心のままに、はい」


「––––ガルム殿下が生きて?! ま、まってくれ、頼む……それだけは」


 ニヤリと口角を吊り上げた男は、エンヴィルと呼んだ仮面の男を下がらせるとダロスの前へ立ちはだかった。


「今この時より、余はエルサールの国王ドリュファスト! 跪いて忠誠を誓え」


「————っぐ」


 ダロスは噛み締めた唇の端から血を流しながら自分の全存在を殺し、憎き敵の足元で膝を折った。


「ふ、はははははははっ!! 弱者とはそうだ、そうあるべきだ! さて、生き残った兵を集めろ、今からちょっとしたゲームを始める」


「畏まりました我が君。どのような遊戯をなさいますか? はい」


「ケモノ狩りだ——せっかくこんな世界で王になるのだ、楽しまなければ損だろう? まずはアリオル領とやらだ、世話になったあの夫婦と娘に褒美をくれてやろう、特にあの娘の願いはかなえてやらないとなぁ、ふふ、ふははははははは」



 不遜な高笑いが響く城内。歴史あるエルサール王国は、この日たった一人の男の手によって崩落した。


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