表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春秋戦国物語  作者: 梅を愛でる人
趙の両虎
8/52

2

「もし、澠池へ行かなければ、天下に秦に屈したと喧伝するようなものです。気を良くした秦王は、更に我が国へ軍旅を向けるでしょう」


 廉頗は恵文王に強く反対した。

 しかし、納得のいかない恵文王は、救いを求めるように藺相如をみた。


「廉将軍の言ったとおりになりましょう。秦に弱腰をみせたあとでは、諸侯との関係も難しくなるでしょう」


 藺相如までもが、行くよりないと首を横に振る。

 そのあとも、恵文王は渋ったが、ふたりに強く反対された。


 恵文王は愚かな王ではない。

 ふたりの強い説得で、自分が出向かねばならないことを理解すると悲壮な決意を固めた。


「もし帰国することが叶わぬなら、太子を王として立てよ」


 これを聞き、驚いて黙ったままの廉頗の方をみると、恵文王は続けた。


「そのような事態になれば、我が弔いとして、そなたが軍を率い秦国を伐つのだ」


 声を励まして、力強く廉頗をみた。


「王が千年(亡くなる)の後には必ずや敵討ちいたし、昭襄王を屍にいたします」


 答えた廉頗にも、恵文王の覚悟がわかった。

 なんといっても、相手は昭襄王である。いかなる事態が起こるかわからない。

 藺相如も恵文王の決意を聞き、声をあげる。


「繩池の会見には、私も共にまいります」


 命を捨てて、恵文王を守る覚悟をした。


 祝宴ということもあり大軍を率いるわけにはいかない。

 結局、少数の兵ではあるが、廉頗が選抜した精鋭のみで軍を編成することにした。

 人数に不安はあるが、山賊を退けるには多過ぎるし、秦の批難をかわすには限界だろう。


 藺相如がこの鋭兵を率いて、恵文王と旅立った。

 見送った廉頗は、兵を集めるように指示を出し、不測の事態に備える。

 だが、繩池は秦国内であるため、変事の報をきいてからでは、軍を率いて急ぎ駆けても、間に合わないことは廉頗にもわかっていた。

 そのため、もし三十日のちにも恵文王の帰国がなければ、新王即位を決めている。


 恵文王を虜にして、無法な要求をしたり、王不在の趙への侵攻を考えんとする、昭襄王の野心をくじくためであった。

 廉頗は、恵文王の消えた先を見つめて、無事に趙へ帰国することを願った。



 

 その恵文王だが、繩池に到着して絶句する。

 出迎えた昭襄王は、秦の大軍を率いていたのである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ