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春秋戦国物語  作者: 梅を愛でる人
荘王
45/52

3

 和睦を許された襄公は、人質を荘王に差しだし、あらたに盟約を結んだ。


 楚の勝利を祝って宴を開いたのち、荘王は軍馬を黄河の畔で休息させるため、北に向かって進軍した。


 三ヶ月もの激戦が続いたために兵士たちも傷つき、疲労の色が濃い。


 だが、北進する荘王に驚くべき報せが入る。


 晋軍がいまさら鄭の救援に来たというのだ。


 楚軍は、とても晋軍と戦える状態ではなかった。

 荘王は国に引き上げる前に、せめて軍馬に水を飲ませようと急ぎ軍を進める。


 しかし、再び急報が入り、すでに晋軍は黄河を渡り、こちらに向かっているという。


 荘王は退却を命じようとしたが、側近の伍参が進み出た。


「晋の六卿は対立し、政治は乱れています。命令は実行されず、兵士も誰に従えばよいか迷うほどです。戦えば必ずや晋軍を撃ち破れるでしょう」


 伍参は強く出撃を主張した。


 しかし、荘王が答える前に反対の声を上げた者がいる。

 子越に殺された爲賈の子で、令尹の孫叔敖(そんしゅくごう)であった。

 孫叔敖は民に慕われる名宰相であり、その言葉は重い。


「昨年は陳を討ち、そして今年は鄭を討って、休む暇がありません。これ以上の戦いは不要。軍を南へ向けるべきです」


 荘王は迷った。


 以前に晋将の士会に敗北を味わったこともあり、疲労の見える兵士たちを率いて戦えば、とり返しのつかぬ惨敗もありえる。


 しかし、目前に迫る晋軍を避けて退却すれば、晋の名を高め、楚の武威は地に落ちるだろう。


 悩んだ荘王だったが、孫叔敖に命じた。


「軍を北に向けよ」


 そして、鄭の領内にある菅という地に陣を構えると、やがて到来する晋軍を待った。




 晋軍が迫ると荘王は、楚軍の疲弊と孫叔敖の諫めもあり、小競り合いののち、和睦を求めることにした。

 晋軍の帥将である荀林父(じゅんりんぽ)と上軍の将である士会は和睦の申し出を了承する。


 しかし、ここからは晋の六卿の対立もあってか、混乱が続く。


 晋の中軍の佐である先穀が和睦を認めず、再び戦うと宣告してきた。


 だが、荘王はまたしても和睦を求める。


 これも了承され、盟を結ぶ日まで決まるが、楚の楽伯が晋兵を殺したために、晋の厨武子がまたも楚に戦いを告げる。


 厨武子は楚兵に追われて晋の陣に逃げ帰ると、決戦を唱えた。


 だが、荀林父は許さない。

 厨武子をなだめながら、趙旃が声をあげた。


「我ら功名を立てる機に恵まれず、せめて和睦の使者として頂きたい」


「では晋が和平を欲することを伝えて、荘王の疑惑を晴らしてまいれ」


 荀林父はこれを認めて、趙旃と厨武子のふたりを和睦の使者にした。


 しかし、楚と晋の盟主を賭けた戦いは、このふたりから始まるのである。

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