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春秋戦国物語  作者: 梅を愛でる人
荘王
36/52

鼎の軽重を問う

 荘王の目は中原へと向けられた。


 小国の(てい)を討って盟下とすると、宋を威迫して引き上げる。


 当時、最も力のある国は晋であった。

 晋国の君臣は、諸国を併呑して中原に進出せんとする楚を警戒しはじめた。

 そして、中原諸国に晋の威を示すべく、手始めに晋から離反して楚についた鄭を攻めたのである。


 その軍容は中原の盟主たるを誇示するように、晋を筆頭として、宋、衛、曹、陳からなる連合軍で編成された大軍であった。


 しかし、この大軍も楚の勢いを止めることは出来なかった。

 荘王は鄭の救出を命じて軍を派し、爲賈の率いる楚軍が連合軍を打ち破ったのである。


 勢いにのる楚は南方を平定し、小国を併呑して領土を拡大していく。


 国力を増大させ、まさに天を衝かんとする荘王は、ついに中原の覇権を窺うのである。


 荘王は大軍を率いて北西の戎を伐つと、帰国することなく洛陽へと軍旅を向けた。

 やがて、周王朝に近い洛水の畔で滞陣すると、大規模な演習をはじめた。


 この楚軍の行動に周の定王は顔色を変えて驚き、大夫の王孫満に問いかける。


「あの蛮族の王はどういうつもりだ。我が国を攻めるつもりではあるまいな」


「まさか。楚の君主は名君であると噂が高く、国力の誇示が目的でしょう」


「ならば我が国の間近で威勢を示すのは、どういう意味だ」


「楚子は爵位を欲しているのではありませんか」


 王孫満も首をかしげて答えた。



 定王が蛮族といったのには訳がある。

 楚は中原の国から、蛮夷の国だと蔑視されていたのである。

 そして、実際には楚へ周王朝が与えた爵位は子爵であり、王号は周王朝を軽んじた武王からの自称なのである。


 王孫満の予想も、楚子という呼び方も、こういった歴史からであった。


 不安の拭えぬ定王は、王孫満に使者を命じて派し、演習する荘王を慰労させた。

 王孫満を引見した荘王は、会釈もなしに訊ねる。


「古に鋳造された九鼎(きゅうてい)が洛陽にあると聞くが、その大小、軽重は如何なるものであるか」


 口を開くや、いきなり(かなえ)の軽重を問うたのである。

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