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春秋戦国物語  作者: 梅を愛でる人
荘王
35/52

2

 天災は避けられず、楚は大飢饉に襲われた。


 それだけに留まらず、国力の衰えた楚に対して属国が次々に離反し、反乱した。


 だが、荘王に変化はなく、享楽に満ちた宴会は果てなく続き、遊蕩は終わらない。


 そんなある日のこと、侍女を抱いて虚ろな荘王の前に、側近の伍挙が進み出て平伏した。


「荘王さま、謎掛け遊びをいたしましょう」


「申してみよ」


 酒浸りの荘王は機嫌よく笑って許した。


(おか)の上に大鳥あり、三年もの間、鳴かず飛ばずです。何という鳥でしょうか」


「三年も鳴かぬなら、ひとたび鳴けば人々を驚かし、飛べば天をも衝くであろう。伍挙よ、分かっておる。退がれ」


 しかし、この後も荘王は変わらず、遊興の日々を続けるのであった。


 伍挙の謎掛けに答えたあとも、変わらぬ荘王に堪りかねた大夫の蘇従は、ついに声をあげて直諫した。

 荘王は激しく怒り、蘇従を大喝した。


「諫めれば死罪とするのを忘れたのか」


 蘇従は決死であった。


「我が主君を名君とするのが、望みであります。命など惜しみません」


 荘王は何も言わず蘇従を退がらせると、罰することはしなかった。




 翌日、荘王は未明から登朝していた。


 荘王は玉座に座り、蘇従に帳簿を渡した。

 蘇従は帳簿に記載されているのに従って、朝見へと来た家臣を左右の席に分けてゆく。

 右と左に別れた席は、官職や家柄も関係ない様子で、みな不思議に思って首を捻った。


「幾日も宴会をいたしておる間に、国に忠なす良臣と、害をもたらす賎臣を見極めた」


 そう一同に告げるや、荘王の行動は峻烈であった。


 右に座った者たちを引き上げ、要職に就けた。また新たに目を付けていた者たちを雇う。

 その一方、左に座った者たちは免職、あるいは死罪としたのである。


 この時に粛清された者たちは、数百名とも言われる。




 人事を終えると、荘王はすぐに軍を出した。

 爲賈(いか)たちを助けるためである。


 百僕や慶など、次々と離反する属国に悩んだ爲賈たちは、討伐して再び楚国の威をみせようと考えた。

 しかし、遊興にふけり、政務を放棄している荘王には献策できない。

 楚の国軍は動かせず、太夫である彼らは、私兵のみを率いて出発したのである。


 反乱した国々は連合すると、大軍をもって爲賈たちに対坑した。


 爲賈たちは寡兵ではあったが、懸命に策をもって戦っていた。

 急ぎ駆けた荘王の軍は爲賈たちと合流すると、次々と離反した国を討ち破り、そのひとつである庸国を滅ぼした。

 その後も爲賈に百僕を討たせるなど、瞬く間に南方の諸国を従えたのである。



 まさに親政をはじめた荘王は、孫子の言うところの、その動くこと雷の震えるが如くであった。

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