表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春秋戦国物語  作者: 梅を愛でる人
趙の両虎
18/52

長平の戦い

 閼与の戦いから四年後、慧眼を持って名臣を見出した恵文王は亡くなり、新たに趙王として孝成王が即位する。


 さらに七年後、戦国最大の役として有名な長平の戦いがはじまるのであった。


 趙、韓、燕、魏は、いずれの国も、秦と領土を接している。

 強国である秦の侵攻を防ぐため、この四つの国は多少なりとも連盟して抵抗していた。

 しかし秦は、最も国力の劣る魏を攻めたてて服従させる。


 そして、次に秦に狙われたのは、韓であった。

 昭襄王は、将軍白起に討伐を命じて、韓に軍旅を向けた。

 白起が指揮する秦軍は、韓に侵攻すると、たちまち五つの城を陥とし、韓兵を斬首すること五万であった。

 更に南陽を攻めて、韓の国土を分断すると、一転、野王の地を占領する。

 白起の用兵は冴えわたり、秦軍は勢いに乗って上党郡にまで迫る。

 これに怯えた韓王は、秦に上党郡を割譲して和睦を願った。


 ところが上党郡の民は、秦に統治されるのを拒否したのである。

 領民と思いを同じくする上党郡の太守までも、韓王の命令に従わない。

 王命に背いて趙に使者を送り、上党郡十七県を献上いたします、と申し出たのである。


 趙の孝成王は、平原君と平陽君を召して意見を求めた。


「聖人は理由なき利益を受けるのは、非常な禍といたします」


 孝成王は、この平陽君の言葉に機嫌を損じた。


「民が、我が徳を慕ったのだ。理由がないと言えようか」


 平陽君は、孝成王が上党郡を受けるつもりであると知り、心を暗くした。


「韓は、禍を趙に転嫁しようとしているのです。上党の地を巡り、秦と争うことになります。決して受けてはなりません」


 平陽君は、秦と争う愚を説いて強く諫める。


 だが孝成王は、露骨に不満をあらわして平原君の言葉を待つ。


「百万の軍兵で数年にわたり攻めても、なお城邑を得るのは難しい。ところが、いま労なく十七の城邑が、趙のものとなります。断ってはなりません」


 進み出た平原君の意見に、孝成王は喜色を隠さない。

 すぐに形ばかりの軍を上党郡に発すると、趙に併合したのだ。


 当然、秦の昭襄王は激しく怒った。韓王の詐言をなじる。

 韓王は、秦に献上する為に軍を退いたのち、趙軍に奪われたと言い訳をした。

 だが、昭襄王には韓王の説明など、既にどうでもよかった。

 上党郡を手に入れる目前であったのに、韓王の言葉を信じて、趙に横から奪われたのだ。

 

 「ただちに軍を上党に進めよ」


(この怒りを鎮めるために、上党を討ち、趙兵の屍を築いてやろう)


 昭襄王は、その目に激しい憎悪を宿す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ