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春秋戦国物語  作者: 梅を愛でる人
趙の両虎
17/52

5

 許歴の予想は的中し、秦軍は、この趙軍を別動隊か、あるいは功に焦った趙将でも突出したのだろうと考えていた。

 秦軍は、小勢を揉み潰さんと、激しい勢いで攻め寄せた。

 迫る秦軍を、趙奢は陣を厚くして防戦する。


 攻める秦軍は、先陣が防がれたが、勢いは衰えることなく、次々と後続の兵がなだれ込み、攻め寄せる。

 だが、趙軍の陣は崩れず、塁にこもった弓兵の一隊がうるさく矢を放つ。


 戦いが激しくなると、再び、許歴が諫めたいことがあると願い出た。


「先に北山を占拠したほうが勝ち、遅れれば敗れるでしょう」


 この言葉に、趙奢は北山を仰ぎ見ると、うなずく。

 一万の軍を割くと、北山の占拠に向かわせた。

 側面を衝かれることを恐れた秦軍も、遅れて北山に軍を発したが、頂きで待つ趙軍に追い落とされでしまった。




 秦軍は窮地にあることに気付いた。

 陣を堅く守る趙軍は、ひと当てで蹴散らせるような小勢ではなく、大軍であった。

 しかも、北山の趙軍は、秦軍の横から攻めはじめる。

 秦兵の一人が退き足になると、全軍にたちまち伝播した。

 崩れだした秦軍は、軍令も届かず、兵士は散り散りに敗走をはじめた。


 攻守が逆転すると、趙奢は陣を捨て、全軍に出撃を命じる。

 趙の大軍が襲いかかり、北山の趙軍も、包囲するように逃げる秦兵を追いたてる。

 趙奢は、敗走する秦兵を徹底して追撃した。

 逃げる秦兵は、更に魏軍からも攻撃され、退却は困難を極めた。

 やがて、傷ついた秦兵が帰国したが、趙軍の猛追から生き残った兵は僅かであった。





 閼与を囲んでいた秦軍を破り、凱旋した趙奢を迎えた恵文王は、手放しで称賛し、活躍をねぎらった。

 僅か三十里で進軍をとめて、二十八日間も滞陣した趙奢を、叱責することもなく信じて見守ったのだ。

 この趙奢の勝利は、恵文王の忍耐力と信頼があってのもので、それだけに恵文王の喜びも、ひとしおであった。


 恵文王は趙奢に千金を下賜すると、藺相如や廉頗と並ぶ、上卿に任命した。

 更には馬服君(ばふくくん)の称号を賜った。

 そして命懸けで趙奢に献策した許歴も、国尉の官職を賜る。


 趙奢は、閼与で戦った兵士たちに感謝し、恵文王より贈られた千金の財を惜しみなく散じて、共に喜び、大いに戦勝を祝ったのであった。

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