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春秋戦国物語  作者: 梅を愛でる人
趙の両虎
12/52

2

 このやり取りが、密やかな噂となる。

 その噂は、ついに廉頗の耳にも届いた。

 藺相如と従者の話を聞いた廉頗は、足下が揺らぐような衝撃を受けた。


(国に尽くすを忘れ、自らの名誉のために席次を争うなど、なんと愚かであったか)


 客に介添えを頼むと、懺愧にたえぬ思いで、藺相如の家の門前に駆ける。

 肌を出して(いばら)(むち)を背負い、大声で叫んだ。


「この鄙賎(ひせん)なる者は、あなたの寛大なる、お心を知りませんでした。」


 そして、這いつくばるかの如くに頭を下げる。


 謝罪の叫びを聞き、家から出てきた藺相如は、肉袒(にんたん)負荊(ふけい)(当時の謝罪)して地面に頭をつけた廉頗を見る。


「廉将軍よくぞ、いらしてくれました」


 声を掛けて、うずくまる廉頗に近づくと、笞を払い、手をとって門内へと招きいれる。


 藺家に入るや、そのまま二人は国家について語り合い、互いを知るのである。

 藺相如と歓談して間近で知ることにより、その高潔さが分かった廉頗は感動した。


「相如殿のためならば我が頸(首)を()ねられても、かまいませぬ」


 心の震えるままに藺相如に声をあげた。


「私も廉将軍のためなら、頸を刎ねられようと悔いることはありません」


 柔らかく微笑んだ藺相如も、廉頗に同じ思いであることを伝える。


 こうして、藺相如と廉頗は刎頸(ふんけい)の交わりを結ぶのである。


 こののち、二人はまさに両輪の如く、国難に協力しながら趙を支えてゆく。

 やがて、藺相如と廉頗により、趙国は最良ともいえる時を迎えるのであった。

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