鬼ごっこ
―――地獄の鬼ごっこが…始まるよ。
「美咲!鬼ごっこしない?」
実樹がわたしに向かって言った。
「うん、いいよ。じゃ、鬼ごっこしよっか!」
わーい…と、周りにいた子供達がよって来る。
「じゃあ、鬼決めよ!」
「待って…美咲。」
「ん?どうしたの?実樹。」
「わたしに、鬼やらせて。」
そういう実樹の唇は青ざめている。
「いいけど…大丈夫?実樹、顔色悪いけど…。」
「大丈夫よ…。じゃあ、始めよう。」
「よーし!鬼ごっこ、始め!!」
子供達みんな、もの凄い勢いで走っていった。
まるで、捕まったら殺される…とでも言うように…。
変だな…と思いながらも、わたしは逃げ始めた。
気付くと、さっき逃げていった子供達がひとりも公園にいない。
うそ…子供達がいなくなっちゃった…。
わたしは鬼ごっこをしていたことも忘れ、子供達を探し始めた。
「みんなー!みんな、どこにいるの!?」
わたしが必死で探していた時、後ろから声が聞こえた。
「美咲……。」
「え…?」
見ると、実樹が後ろに立っていた。
手にしっかりと握られていたのは―――はさみ。
しかし、子供達を探すのに必死だったわたしは、実樹がはさみを持っていたことに気付かなかった。
「み…実樹!大変!子供達がいなくなっちゃったの!」
でも、そんなわたしのの訴えを聞くこともなく、実樹は黙ってわたしのことを見つめていた。
やがて、やっと実樹が口を開いた。
「…地獄の鬼ごっこが…始まるよ。」
「……え…?」
実樹はゆっくりとはさみを上げた。
そして、すばやく美咲に向かってはさみをふり降ろした。
―――ひとり、つかまえた。