太宰再生計画
2015年、ブームが来ていた。
太宰治ブームだ。
あるお笑い芸人の影響と言わざるえない。
その芸人はブームが来る数年前から太宰治好きを公言していた。
それもテレビのトーク番組でだ。
変人と思われるのを自身のお笑いコンピュータで計算いていたかもしれないが。
しかし、その芸人がだ。
なんと驚くことなかれ芥川賞を取ったのだ。
何か、もの凄く違和感がある。
作品にではない。
太宰治好きが芥川賞を取ったことにだ。
その芸人の本は売れに売れた。
それをキッカケに来たのだ。
太宰治ブームが。
それから数十年が経った。
あれ以来、3度目の太宰治ブームが来ていた。
それはある天才科学者の影響だと言えよう。
その天才科学者は公言した。
「俺は太宰治が好きだ。
太宰の新作が読みたい。
そのために太宰を再生させる」
世間はそのニュースに驚いた。
「神をも恐れぬ、マッドサイエンティスト」
とその一報を耳にした海外メディアは報じた。
しかし、日本国民は「彼ならやり遂げるだろう」と内心思った。
さらに後押しするかのように企業や個人投資家が彼の研究を後押しをした。
それから3年が経った。
とうとう太宰治が再生された。
世間は騒然となり、ブームが到来したのだ。
当初はテレビ番組にも出演していた。
しかし、MCの質問やフリに沈黙で答えた。
再生されても、性格は暗かった。
そのため数ヶ月でテレビから姿を消した。
でもそれが功を奏し、新たな作品を次々と生み出していった。
やはりテーマは人間の葛藤についてだった。
人間とAI、つまり意思を持った人工知能との問題に深く切り込んでいた。
まさにそれが、社会問題になっているのだ。
太宰は、そこに今までとは異なる切り口で切り込んだのだった。
書き上げると、太宰は自慢語学力で各国の言語に翻訳した。
英語、スペイン、ポルトガル、イタリア、中国、ロシア、アラビア語などあらゆる言語に。
そうして、世界で太宰治がブームが到来したのだ。
「よし、あのアイドルも再生させよう」
天才科学者は呟いた。
2020年東京オリンピックを機会にスターに登りつめた美少女だった。
彼女は数十人の女性アイドルグループのリーダーだった。
リーダーというよりプロデューサーと言った方がいいかもしれない。
作詞、作曲はもちろん、映画をプロデュースし、本も生涯30冊以上出版した。
さらにテレビ番組を企画し、海外にも進出していた。
一年彼の淵源通り、彼女は再生された。
「失敗だ~」
天才科学者は呟いた。
再生された彼女は、2重いや多重人格になっていた。
彼女と話していると、すぐにそれが分かった。
でも、天才科学者はある程度予想していた。
そのため彼女のテレビ出演依頼を最初から断っていた。
「やっぱり、ゴーストライターか」
彼は呟いた。
そう彼は人体を再生したのではない。
彼らの意思を再生したのだ。
その基になっているデータは彼らの出版物だった。
本には意思や感情、知性が良く現われていて、
彼らの人工知能を再生するのに最適だった。
それから天才科学者の前に胡散臭いやつらが現れた。
そして彼らは言った。
「我々の神を再生して欲しい」
そしてやつらは経典を並べた。
天才科学者は頷いた。
「分かりました」
彼は即答した。
「彼女にみたいに多重人格者になっても知りませんよ」
胡散臭いやつらは無言で引き下がって行った。
天才科学者はやつらのような宗教家が来るのを予想していた。
そのためにアイドルを再生させたのだった。
これはあり得ないない話しではない。
幹細胞や卵子の保存バンクがあるように、
意思を再生させるための情報保存バンクが設立されようとしている。
そのために、さきら天悟は小説を書いている。
短編はもう100編に届こうとしている。
長編『愛と死のせつも』もよろしく。
出版社から連絡がないので、
12月に契約が切れそうなのでお求めはお早めに!
この物語は壮大なCMでした!!