古き人、新しき人
「だぁぁぁぁぁ! 電力制限きたぁぁぁぁぁ!」
「宗司うっさい!」
「貴様の声で風発動かせ!」
風発……風力発電はさすがに人間の声では動かない。
資料作成中にいきなり電力制限がかかり、PCがシャットダウンした。
住宅管理ギルド〈ノアの家〉は目下、相原宗司の扱うPCですべてのデータを管理している。つまり、このPCが動かなければ会社も動かない。
旧式の台帳類もあるのだが、算盤を使わなければならないので却下。宗司にそこまでのスキルはない。
「つーかユキは?」
普段宗司の周辺にちょこまかといるへっぽこ魔女の遅刻連絡は3時間前……苛立ちのピークに達した彼は、デスク上に存在する黒電話を持ち上げ、ダイヤルを回す。
「宗司、お前何イライラしてんだ? 腹でも痛いのか?」
上司の声は聞こえないふりで、呼び出し音が終わった瞬間に叫んだ。
「いい加減に出てこい! いつまで待たせるつもりだ!」
『ぶぇっくしゅい!! な、なんれすか、かかりちょー』
電話の向こう側から、ぱちぱちと暖炉で薪が爆ぜる音がする。かなり暖かくなった春の日に、なぜ暖炉に火を入れているのだろうか。
『今風呂入って洗濯したとこです。もう少しで家を出まズ』