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実りの司様

現在、土木共同組合のゴブリン達が、賃金値上げを求めて地下鉄を占拠しています。

役員が交渉にあたっていますが、未だ進展は見られない模様です。

テレビの画面には、最近人気上昇中の青髮男性アナウンサーがポツンと机に座り、用意されたニュースを淡々と読み上げる。

幾つかの次元が崩壊し、何処かの神様が再構築した地球は、陸地が大幅に増え、天体としてもかなり大きくなった。

「市バスはどうなったんだょ」

古風なメイド服を着て、ちゃぶ台で味噌汁をすすりながら、俺は呟くしかできなかった。

ジリジリと喧しく鳴り響く携帯のアラームが、市バスの時間を告げる。

まぁ、一昨日から市バスでもストライキが起こっているらしいから、時刻表は当てにならないけど、とりあえず食器を流しへ片付けて前掛けを取り、黒地に銀ボタンのついた仕事用の上着を引っ掛け、自宅であるマジカル・ホロウを出た。

森と農地の混ざり合った世界を少しだけ歩くと、ボロボロにひび割れたアスファルトの道にぶつかる。その道をほんの少し南へ進んだ所に、ぽつんと赤い円形の看板が突っ立っており、その近くには雨よけの屋根と3~4人が座れる木製のシンプルなベンチが、風雨にさらされている。

そんなベンチの背後にでかでかと表示された看板は普段なら時刻表が張り出されているのだが、その上から紙が一枚貼られて読めない。

その貼り付けられた紙には、市バスの下層職員達の要求と、それらが叶わない限り市バスが動かない旨が飾り立てた言葉で書かれている。

直訳すると、もっと休みが欲しい。給料上げないと働かない。といったあたりだ。

「んだよ……また俺は徒歩か。いい加減に箒にも乗れと?」

俺は魔女のくせに、風の魔力を半減させる土の気を持っている。その為箒に乗るのが非常に下手である。

最近ではなんとかアパートの三階から飛んでも怪我をせずに降りられるようになったが、やっぱり苦手だ。

家にも一応箒はあるが……川を超えて南へ数メル行ったあたりの会社へ向かうには、少々危険が伴う。

諦めてバス停を背にバス通りを歩こうと一歩踏み出した瞬間、幼児の嬌声とともに何かが俺の足元をすり抜けてゆく。

春の日差しを受けたアスファルトの隙間から、いきなりたんぽぽの茎が伸び始め、花が咲く。

これは、かなり面倒な日にバスが動いていない。

地球が壊れたあと、何故かそこらじゅうから湧いて出た魔獣の類の一種。春から秋にかけて、作物の成長を司ると言われる実りの司様が、出たのだ。

実りの司様の実態は、大人の膝丈ほどのでかい人間の頭部のみで、同じ背丈の幼児のような声を上げながら西へ東へ大移動を繰り返す集団である。

彼らを潰してしまうと、どこかの畑の実りが減るらしい。さらに中から出てくる液肥を全身にかぶることになるので、誰も攻撃しない。

一体が群れからはぐれて走り抜けただけなら、そこまで騒ぐような騒ぎではない。が、地響きとともに幼児の嬌声が遠くから聞こえる。

「最悪だ」

なんでまた今日のように忙しい日に、実りの司様が出るのだ。

黒いスカートの下には、同じ色のショートブーツ。さてどうやって実りの司様を回避しようか。

はじめまして、テナー・キャサリンと申します。

拙い文章ですが、しばらくの間、魔女のユキと実りの司様にお付き合いください。

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