傭兵VS統率者マクリル
終わるかな~終わらないとヤバイな~
「だぁらっしゃあああ!!」
ズガガガガガ!
機関銃2丁でとにかく弾をバラ撒く。反動強めの代わりに高威力の軽機関銃はフラフラと歩いて迫ってくる人形どもを容赦なく削っていく。気持ちだけ足元を狙って撃ってるので、胴回りから脚を砕かれた人形はその場に倒れ伏すが、すぐに雲散霧消してしまう。そのわりに数が減ってる印象がないので、一定数を保つように補充されてるんだろう。
このままじゃあ拉致があかない。弾はそれこそ4次元コンテナのおかげで2年はゲリラ活動できるほどあるが、それでも決していい状況とは言えない。
「クハハハハ!先程までの威勢はどこへ消えた!?」
「ぐっ、うる........せぇ!」
ジリ貧ここに極まれり。正面から啖呵切っといてこの様たぁ笑い話にもなりゃしない。せめて刺し違えるくらいはやらなけりゃ今までの俺の人生何だったのよ?ってことになりかねない。
「ふぅ........やっぱ無理か」
「ほぉ........君という男がよもや諦めるなどというつもりか?」
「いやぁ何、独りはやっぱ無理ってことさ」
「........む?」
「今にわかるさ、こっからの俺は遺志を以て戦うからな!」
そう、俺は独りでは勝てない。だが仲間の魂を使って戦うわけでもない。俺はこれから、幾人もの先人が使ったいわゆる『遺志』を使って戦う、いや勝ちを獲るのだ。
「仙里ィ!どこかは知らねぇがその目をかっぽじってよく見とけ!俺は今から、大佐たちと共に勝利をつかんで見せる!」
何せ俺には『お守り』があるからな。
思うがままにやらせてもらおうかね?
「オラァ!」
まずはコンテナから槍を1本取りだし、敵に向かって突っ込んでいく。そして手近な人形に躊躇なく突き刺す、突き刺す、突き刺す!とにかく突き刺しまくる!そしてそのうち前に進めなくなる。手応えにして5体は刺した。
「こら、っせ!」
そして刺さって抜けなくなった槍を足場に跳躍する全くしならない固定された槍は足場としてよく機能してくれた。
「まずはこいつだ!」
取り出すのはクレイグの使ってた大型ランチャーとよく似たビームランチャーである。だがクレイグの様に近接戦用の大型ダガーやマシンガンなどはついていない、ホントにただのバカでかいランチャーである。
意外と捻りがないのにビックリしたが、他ならぬみんなのお守りだ、ハズレはない........はずである。
「うおおぉぉ!!?」
引き金を引くと砲口から青い粒子ビームが照射され、人形どもを一網打尽に薙ぎ払っていく。その圧倒的な火力がどれだけすごいかと言えば、反動もべらぼうなために俺の身体が滞空するほどである。
身体が無茶苦茶痛いんだが、それでも鞭打って砲口をスライドさせていく。全てを無に帰す死の閃光は次の獲物を求めて縦横無尽に動き回り、人形どもは呆気なくそのなかに飲まれ消えた。
「こりゃあとんでもねぇ代物だぜ」
確かにハズレはなかったんだが........お嬢ちゃんめ、俺の手にも余る代物をこさえやがって。他にもこんなのばっかだったらどうしよう........。
「ま、悩んでもしょうがねぇ........」
「お次はこいつだ」
何が出るかはお楽しみ、もはや気分はくじ引きだ。そして出てきた次の武器は双刃刀だった。反りが深い2つの刃が同じ向きで付いている。ゲル○グのビーム・ナギ○タが想像しやすいだろう。
「でえぇぇぇい!」
気合いに任せて辺りの人形を滅多切りにしていく。馴染みのない武器だが、相手がマヌケな人形のおかげで有利に渡り合うことができている。
しかしあれだ。ゲル○グみたいに手首が回転しないからあのぐるぐる回して突撃するやつができないのが残念だ。
ブンッ!
「ふぉ!?」
余裕が出るといけないね。おかげで避けきれなかったぜ。真ん中の柄の部分で人形の腕部を受け止めるが、やっぱ力はさっきの比じゃない。だが、これがただの双刃刀だと思ったら大間違いだ。
「よっ、と」
柄の左右をわずかに捻る、すると双刃刀は分解し、2本の片手剣になった。そのまま腕を降り下ろした人形を細切れにする。
「さて、文字通り一矢報いてやるか?」
双刃刀をもとに戻し、今度は両手を籠手で被う。この双刃刀を最大限に運用するにはこの籠手が不可欠なのだ。
「何!?」
刃の先と先を指で繋ぐと、そこに一筋のエネルギー糸が走る。そのエネルギー糸を引くと、矢の形をしたエネルギー体が形成される。双刃刀はそのままエネルギーを射出する弓矢となった。エネルギー発生装置を籠手に仕込むことで近接武器と射撃武器とをワンセットの兵装に仕込んだって寸法だ。これにはさすがのマクリルもビックリの模様。
「思い知れ!お前が敵に回したものを!」
一矢を放つ。光を引いて矢はマクリル目掛けて一直線に飛んでいく。その射線にいた人形は壁の役割すら果たせずに矢に貫かれた。
「ぐっ!?」
矢はマクリルに命中した。脚に受けてうずくまるマクリルに呼応するように、人形の動きも緩慢になった。術者の集中が途切れたからか。
「これで決める!」
何はともあれチャンスである。最後に取り出すのは一本の薙刀である。しかしその長さ、刃渡り、すべてが一線を画すものだった。
「オオオオオオオ!!!」
しかし何よりの特徴は刃の根元に付いているとあるパーツである。お嬢ちゃん作、俺発案のこれはいわば「意思をエネルギー化するエンジン」である。それが今、猛りまくった俺の意思を吸い上げエネルギーへと変換している。
マクリルの顔色はすでにまっさおだ。それは薙刀に集められたエネルギーを見れば一目瞭然であるが、やっぱ独りにこの数を覆されるとは思わなかっただろう。
「こんな........こんなことが、あり得るものかあぁぁぁあ!!」
「くたばれぇぇぇえ!!」
薙刀を力を振り絞り横一文字に薙ぐ。オーバーロードを起こしたエンジンはそのまま振り終えたと同時に爆散し、明後日の方向へ吹っ飛んでいった。そしてその一瞬の後にそれは起きた。遅れてやってきた衝撃波の奔流、竜巻と見まがうほどの衝撃は、人形を木の葉のように舞い上げ八つ裂きにした。それだけでは飽き足りず、加害範囲に存在したあらゆる物質を傷つけ蹂躙していく。........俺の俺たちの意思が勝利をつかんだ瞬間であった。
ーーーーーー
「ククク、よもや本当に独りで我を降すとはな........」
マクリルは絞り出すように呟く。その腹部には横にどす黒く変色していた。人形が壁になったおかげで胴体切断とまではいかずとも、もう長くはない。
「独りじゃあないぜ。ありゃあ皆で作った武器だからな」
「........」
「だから俺は、9人で勝ちをとったってことになるな」
「あの大群を、たったの9人........か」
「人だってまだまだ捨てたもんじゃあない。神なんぞに頼ることなんざ初めからなかったんだ」
「確か、に........これが人の可能性、か........されど」
「........?」
「機は........熟した」
その時、俺はすっかり忘れていた。こいつを倒すのが目的じゃなかったことを。俺はまんまとマクリルの策に引っ掛かったということに今気づいたのだ。
頭上に浮かぶ桃色の卵、概念が形を持った神はもはや不定形の存在ではなく確固たる質量を持って顕現してしまった。
「人の可能性など........無限だからこそ、恐れるべきなのだ........」
「おい!てめえ!」
「我が計画は、我が死を以て........ッグ、完遂される........」
「ふざけんな!今すぐこいつをもとに戻せ!」
「さあ、抗え........英雄よ........君の足掻く様を........冥府より、見せて...もら........う........」
その言葉を最後にマクリルが事切れるのと、神が動くのは同時だった。最も手近な器に入り込むべく、一直線に俺に向かって飛んでくる。そして俺は、視界のすべてが神と同じ色になったと同時に意識を失った。
「ぐおおおおおお!!!?」
ノンストップかな~




