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傭兵in異世界  作者: キリサキ隊長
傭兵たちの最終決戦
74/86

突入する傭兵たち

お待たせしました。いやホントに。


それではどうかお付き合いくださいませ。

『見えた!あれだ!』

『皆、間違えないでよ!?』


耳のヘッドホンから声が聞こえる。高速で落下しているこの状態でまともな意思疏通は難しいなので。通信でやり取りしているのだが、感度は良好だ。

高低差2000mのパラシュート降下、自由落下しているうちにそのスピードは時速200㎞に到達するという。しかし、そのスピードにビビってパラシュートを開くのはアウトだ、狙った場所に着地出来なくなる。その点、今はみんな順調に着地コースをたどっている。

そうこう言ってる内にデバイスのアラーム機能が作動する。パラシュートを開くタイミングを教えてくれているのだ。それに合わせて周りの連中は続々とパラシュートを開いていく。

1番最後に、つまり1番先行している状態で俺はパラシュートを開いた。降下速度がガクンと下がり、古城を観察する機会が生まれる。........歩哨が8人、中庭に3人と城壁に5人いる。まだこっちには気づいていないようだ、奇襲をかけるには絶好のチャンスである。


『っし、俺が露払いだ!』

『了解した、頼んだよ?』

『任せろ、他の連中はゆっくり急いで降りてきてくれ!』

『何だゆっくり急いでって!』

『キルオン、そこに突っ込んじゃいけませんよ!』


耳元で相変わらずのやり取りを聞きながら、スモークグレネードをばらまく。地面に落ちるのと煙を撒き散らすのはほぼ同時で、あっという間に中庭は真っ白になった。


「何だ!?敵襲か!」

「狼狽えるな、持ち場を守れ!」


おー、慌ててる慌ててる。なら遠慮なくやらせてもらいましょうかね?

というわけでパラシュートを切り捨て、再び自由落下で下降する。


「ぐほぉ!?」


お、ラッキー。着地の時に敵兵を踏んづけて1人ダウン。まだ生きてるだろうがさぞ痛かったろうなぁ........御愁傷様。


「敵だ!応戦しろ!」

「逃がすな!」


着地時に1人落とせたはいいが、そいつが間抜けな悲鳴をあげてくれたお陰でバレた。だが相手は俺の位置をまだわかってない。一気に片をつけることにする。

暗視ゴーグルを着けて視界を確保する。スモークで視界が悪かったが、これで敵の位置が丸見えである。1人1人を丁寧にライフルで始末していく。なるべく殺さないようにはしたが、こちらを探して右往左往してくれたお陰で2人は死んだ。戦場だし許してくれとは言わないが、人を殺す度に何ともしがたいものがある。


『よし、安全を確保!』

『了解』


敵を掃討し終わったら後続のメンバーを降ろさせる。危なっかしいやつもいたがどうにか全員着地できた。


「まずはクリア、だな」

「うん、先生たちを呼ぼうか」


大佐が通信機を取り出したその時、いきなり俺の横を何かがすごい勢いで飛んでいった。一瞬理解が遅れ、それが俺の正面にいた大将が投げたもんだと気づくのに2秒はかかった。


「大将!危ないだろうが!」

「あんちゃんよ、後ろを見てみな」


何かと思い振り返ると、俺のすぐ後ろに1人の兵士が倒れていた。こんなところで倒した記憶はないし、その額には刺した覚えのないダガーナイフが刺さっている。


「詰めが甘いぞ」

「なるほど、だが今日の俺はツイてるぜ」


頼もしい仲間がいてほんとによかったぜ、いやマジで。


ーーーーーー


「待たせたな!」

「「おまた~」」

「こら!女の子がおまたとか言うな!」


このアホな掛け合いも恒例である。まして戦場だし、ユーモアがないとやってられない。


「準備は万端だぞ?そっちはどうだ?」

「とりあえずいきなり敵が出てくるってことはなさそうです」

「ならば速攻でやるか」

「それが1番だろうな」


協議の結果、スピード重視でさっくりとなかを制圧することにした。どうせ中の状況はわからないんだ。うだうだやるだけ無駄なのである。


「キルオンやーい、行くぞ」

「おう!わかっ........何だぁ!?」


外を眺めるキルオンがいきなりすっとんきょうな声をあげる。何事かと思い城壁の上まで行って確認する。........まあ、予想はできてたよな。


「やっぱり来るよなぁ........」


古城の湖から見える岸辺には大量の灯りが点っていた。数えるのも馬鹿馬鹿しいほどのその灯りが何か、想像するのは難しくなかった。


「傭兵、あれ........」

「ま、増援だろうな」

「すごい数だな、目測だと........10000はいるだろう」

「高々10人の部隊相手に頑張りすぎだろ」

「傭兵がいる時点でその評価は間違ってるんだけど」


そりゃそうだ、俺がいるってことは部隊の規模が10000を越えてるわけだがらな。ある意味マクリルが相手なら正当な評価だろう端から見ればアホだろと思われるだろうが。


「ま、備えは当然してるよね?」

「大佐よぉ、さも当たり前のように言うけどな、そりゃ本来大佐が指示するもんだろ」

「ボクは傭兵を信じてるからね、で?」

「いけしゃあしゃあと言いやがる........」


だが手は当然打ってあるのだ。


『出番だぜお前ら。全力でやっちまえ!』

『『『オオオ!!!』』』


岸辺からさっきまでのとは違う雄叫びが聞こえてきた。それに続いて発砲音が響き渡り、照明とは違う戦闘の光が視界を覆い尽くした。


「伏兵かい?あんちゃん」

「そ、これなら結構な時間が稼げるぜ」


その代わり、実戦部隊を全部あそこに忍ばせていたのでこっちの援護は出来ないがね。


「エージェントフィクサーとオールメディックを置いていく。先生、あんたが本陣の責任者だからよろしく」

「あ、あたしで大丈夫か?」

「あらヤチヨ先生、いつになく弱気ですね?」

「この調子ならそのままボクが傭兵をもらっていけるかな?」

「うるさい!今関係ないだろ!」

「ダメならここにいる皆は任せねぇだろ。胸を張れよ」

「お、おう........」


その後何度も激励と冷やかしを入れてようやく承諾してくれた。........事前にあれだけ言ったのは何だったんだろうか。


「........さあ、始めようか?」

「おうよ!」

「やるぞぉ!」

「ええ、やりましょう!」

「ボス、準備は?」

「問題ねぇ、後は作戦開始だけだ」


もう後戻りはできない。中に突入し、マクリルを倒すまでは止まれないのだ。そして、号令が下った。


「作戦開始!」

暖かくなってきて良かったです。いやマジで。


それではこの辺で失礼します。

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