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傭兵in異世界  作者: キリサキ隊長
傭兵の羽休め
71/86

傭兵と大佐

更新遅れましてすみません。ボリュームだけはサボったぶんを巻き返すように増えました。

それではどうかお付き合いくださいませ

「........何?テレビだと?」

「そ、テレビ」


それはとある昼下がりに告げられた。何でもテレビの取材が俺たちに入るらしい。具体的にはいつもの大佐以下のメンバーにスポットライトが当たるそうだ。


「あ、ちなみにこの取材のメインは傭兵らしいから、よろしく」

「はぁ!?」


全くもって寝耳に水である。心なしか大佐の機嫌が悪そうだが、多分リーダー格なのに自分にスポットライトが当たらないのが気に入らないんだろう。だが、俺としてもそんな話はごめんである。


「俺ぁやだぞ。傭兵が目立っていいことなんざ1つもねえからな」

「え~、もう受けちゃったよ........」


この大佐、今日はいつになく余計なことをしてくれる。第一なんでまた俺たちにテレビ取材の話が来るのか、さっぱりわからん。


「何で俺らにそんな話がくるんだよ。今まで軍の鼻つまみ部隊だったじゃねぇか」

「あそっか、傭兵は知らないのか」

「何がだ?」

「あのゴッドクレーターの防衛戦のあとにね、兵士たちにインタビューが入ったんだよ。そこで傭兵たちの活躍ぶりを前線の兵士たちが語るものだから世間がボクらに興味を持っちゃったらしいんだよね」


........要するにあの時に暴れすぎて顔と名前がかなりの人数に覚えられて、さらにそれがメディアに流れたからさあ大変、って訳か。それにしたってなんでまた........。


「今の傭兵はこの国ではどっちかって言うとアイドルみたいになってるよ?」

「え?マジで?」

「ボクらはあの戦いで大分名を上げたよ。巷じゃ『英雄部隊』なんて呼ばれてるらしい。その筆頭が実戦隊長の傭兵って訳」


........大佐の機嫌がどんどん悪くなっていく。言葉を発する度に頬は膨れ、目線がじっとりとしたものになっていく........まさか。


「なぁ大佐よ。まさかとは思うが........怒ってんのか?」

「........フンだ、依頼人より目立つ傭兵はテレビにもみくちゃにされればいいんだ........」


うわ、めんどくせ!


「拗ねんなよそんなことで........」

「........はぁ、とにかく詳しいことはこれに書いてあるから読んどいてね。後はよろしく」


それだけ言い残して大佐は机に突っ伏して寝始めた。........仕事はもうないらしいから問題ないだろうが、いったい何が気に食わないのかわからん。こんなことに拘るほど器の小さい人じゃなかった筈なんだがな........。


ーーーーーー


「........ん」


おかしいな、起きたのに真っ暗だ。まだ寝ぼけてるらしい頭を整理して、ボクが現状を把握したのは3秒後くらいだった。


「........帰ろ」


部屋が真っ暗なことからわかるように、この部屋にはボクしかいない。腕時計を見てみると蛍光仕様のアナログ時計が午後8時を指していた。........寝過ぎたな。


「大佐~、起きてますか~?」


扉の外から声が聞こえる、副官さんだ。........正直名前で呼ぶよりもこっちの方がしっくりくるんだよね、ボクより大人だし。


「いるよ。お好きにどうぞ」

「では、失礼します」


扉が静かに開き、部屋に明かりがともされる。急に明るくなったから瞬間的に頭が痛くなる。


「........もしかして待ってた?」

「ええ、私が大佐より早く帰るわけにはいきませんから」

「そこは気を利かせて待ってないって言うところじゃない?」

「それは大佐に彼氏が出来てからその人に言ってください」

「........む」


割りと早い時期でバレたけど、この人はボクが傭兵のことを好きだということを知っている。それを承知で『彼氏』なんて言葉を使う辺り、意地悪な人だ。


「その調子だとまだ手をこまねいてるんですか?」

「........ホント、君は容赦ないよね」

「大佐を思っての事ですから♪」

「ボクを思ってるならボクが何でこんな時間まで帰らずに寝てたか当てられる?」

「........私はてっきりただの寝坊かと」

「いいから考えてみてよ」


ボクがいっぱいいっぱいなのに目の前で余裕そうにしてる彼女にイタズラを仕掛けてみる。どちらかと言うと子供じみた八つ当たりだけど、今は副官さんをいじってボクの精神を保全する方が大事と勝手な理由をつけてボク自身を納得させる。


「そうですねぇ........さしずめ、傭兵さんが目立つのが気に入らない、ってところでしょうか?」

「........君、お昼の会話聴いてた?」

「いいえ?」


この人には敵わないよ........からかうつもりだったのに、看破されたらボクが恥ずかしいだけじゃないか。


「ですがその気持ち、わからないでもないですよ」

「え?」

「好きな人の魅力が多くの人に知られるって嬉しいようで腹が立ちますよね」

「う、うん」


なんか怖い........。


「この人の魅力を知ってるのは自分だけでいい、他の人が知る必要はない、そう思ってますよね?」

「そうなんだけどね、何でここまでわかるの?」

「そうですねぇ........私、1回失恋してるんですよ」

「そうなの?」

「はい、と言っても私のせいなんですけどね」


意外だった。副官さんだって全く魅力がない訳じゃない。それどころかボクが男なら間違いなく惚れてた。


「私はどうも相手を求めすぎる傾向があるらしくて........独占欲が強いという感じですね」

「で?」

「彼が振り向いてくれない時期がありまして、その時にちょっと強引な手段に出ちゃったんですよ。具体的には彼を監禁しましたね」

「........おわぁ」

「あ、心配しないでください。よくある殺害エンドではありませんから」


まるで笑い話のように自分の失恋話を語る副官さん。しかし内容がぶっ飛び過ぎていてちょっと言葉が見つからない。こういうとき、なんて反応すればいいの........。


「え~と、その話からボクは何を得ればいいのかな?」

「簡単に言うなら、大佐は私と同じタイプですからお気をつけて、ということです」

「え、なにそれこわい」


ボクがそんなぶっ飛んだことはできない気がする。


「そもそも、時間はあんまりありませんよ?」

「え?........あ」


そうだった、思えば傭兵は異世界の人だ。ボクの依頼を達成したら帰ろうとするはずなのは簡単に想像できる。もしかしたら帰る方法はもう見つけてるかもしれない。........どうしよう、意外と時間がない。


「いつぞやにも申し上げましたけど、後悔しないようにやってください。ただし、常識の範囲内で」

「何でもあり、か」

「恋は戦争ですから♪」


........ボクたち戦争を終わらせようとしてるんだけどね。


「それでは大佐、帰りましょうか」

「そうだね。お風呂入りたいし」


さて、そうと決まれば明日からやることやらなきゃね。


ーーーーーー


「おはーす~」

「........傭兵は何で普通におはようって言わないの?」

「あ~........オリジナリティ?」

「誰がそんなもの求めるのさ........」

「細けぇこたぁいいんだよ。んで、俺の記憶が正しけりゃ今日ってテレビカメラが入る日だろ?どこだ?」

「あーそれ、断ったから」

「マジでか」

「何を驚いてるのさ、嬉しいでしょ?」

「確かに嫌だとは言ったがよ........」


正直俺が言った程度で大佐が引き下がるとは思わなかった。なんかテンパってあまり寝れなかったのがバカみたいじゃねぇか。


「........傭兵のことを知ってるのは少ない方がいいしね........」

「そりゃどういう意味だ?」

「え?あ、いや、傭兵の知名度が上がると狙われたりするかもねってことだよ!」

「なんだ、わかってんじゃねぇか」


........今日の大佐はどこかおかしい。やたらとそわそわしてるし、顔も赤い。風邪でも引いたか?


「そ、それよりさ!1つ聞いていいかな!?」

「何だよいきなり........何だ?」

「........傭兵はさ、ボクの依頼が終わったらどうするの?」

「........あー、考えてねぇや」

「そうなの?」

「帰る方法なんざわからんし、気長に探すさ。見つからなけりゃこの世界に永住してもいいくらいだ」

「そ、そうなんだ。ふ~ん........」

「何だよ........」


今度はニヤつきだした、と思ったときにはすでに思案顔に早変わりである。忙しい人だなぁおい!


(とりあえずまだ時間はあるね........)

「おーい」

(でも油断はできないよ、ヤチヨ先生もいるし........)

「うぉーい、ちょっとー」

(アリスだって可能性は........)

「無視かぁ........」

(手っ取り早く言えばいいけどそれはハードルが........)


........何やら思考の深淵に閉じ籠っているが、無視されてるこっちとしてはとても気にくわない。こりゃ意地でも戻ってきてもらいましょうかね。


(........ん~!どうしよう~)

「そぉい!」

スパァン!!

「ふぎゃ!?」

「っしゃ!やったったぜ!」


大佐の頭をハリセンでどつく。音ばっかりデカイお嬢ちゃんの迷作である。今まで全く役に立たなかったがここに来ていい仕事をしてくれた。........それにしても『ふぎゃ!?』とはな........いいセンスだ。


「何するのさ!」

「うっせ、悩みがあんなら言ってみな」

「何でさ!」

「何でってそりゃあ5000万年生きた人生の大先輩が悩める大佐を援護してやろうってんだよ。ありがたく思え!」


自分でもびっくりするほどスラスラと即興で文句が出てくる。だが目の前でウジウジと悩んでるのを見るのはやだ、こっちまで辛気臭くなる。


(こ、このぉ~、誰のせいでボクが悩んでると........あ)

「どうだ?」

「........今は言わないよ」

「もったいぶるなって、茶化したりしねぇよ」

「その代わり、依頼が達成されたら言うことにする。その時はちゃんと答えてよね?」

「おう、任せとけ」


そこまで言って、大佐はようやく落ち着いて笑った。........ホントいい女だよなぁ、俺が普通の人間なら是非とも付き合って頂きたいもんだがなぁ。



以上、彼女いない歴=年齢のキリサキ隊長がお送りしました。自分で見てて痛すぎる........orz。

勢いで書いたものですが、今回はここまでです。次回から最終章を計画してます。

それではこの辺で失礼します~

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