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傭兵in異世界  作者: キリサキ隊長
傭兵の羽休め
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傭兵の厄日

大佐の執務室が私の頭の中でははがないの部室みたいになってる........。

今回は傭兵がひどい目に遭う話です。どうかお付き合いくださいませ

「あ゛~~........ちくしょぉ、今日は厄日かよ」


時刻は午前10時、太陽がそろそろ建物の影響を受けずに日光を供給できる高さになった頃、俺はなぜかずぶ濡れであった。


「ぶえっくし!........おおう、ブルッと来たぁ........」

「きゅ~........っぷし!」

「ハハハ、お前もか」


道にはそこかしこに水溜まりができている。昨夜は短時間に結構な量の雨が降ったようで、道の凹凸次第でそこそこ大きな物もある。

何のことはない、車が通ったときに水を引っかけられただけなのだが、全身ずぶ濡れになったのははじめてだ。........それに今日はこれだけじゃないのが腹が立つ。

朝起きていつも通り大佐のところに行こうとして、これまでに2回鳥の糞を投下され、3回何かしらが空から降ってきた。そのうち、落ちてきたトイレットペーパーは直撃した。極めつけは近所の悪ガキに泥団子を顔面にダイレクトアタックされたことか。........とにかく今日はツイてない。おかげで1度出直してきてこんな時間である。


「........気が重い」

「........きゅ~」

「俺の運が悪いのかお前が俺を巻き添えにしてるのか........前者だったらすまんなぁ」


........ったく、月曜日じゃあるまいし、何が悲しくてこんなブルーな気分で出かけなけりゃならんのか。


ーーーーーー


「うぃ~........おはようございま~す斬崎刃人でーす」

「........どうしたの傭兵。いつになく機嫌が悪そうだけど」

「いやぁ何........今日は厄日らしくてな」

「?」


荷物を下ろし伸びを1つ。仙里はその間にそそくさと俺から降りて本棚の上によじ登る。その辺にいると誰かしらにもみくちゃにされるので最近は俺が帰るまで基本的にはそこから降りようとしない。ただし食べ物で釣れるのは内緒だ。


「んで?なんか進展はあった?」

「まだ。報告待ちかな」

「........今日も動けずじまいか」


ウィーズから脱走してきたが、俺が逃げたくらいでマクリルが引き下がるとも思えない。ヤツが何かを企んでるというのは報告したが、どうやらこれには上層部にも引っかかることがあるらしく、わざわざ偵察隊を編成してウィーズに密かに送り込んでいた。

それまで俺達は待機な訳だが、いかんせん暇になってくるのである。........これは俺、来なくてもよかったんじゃね?


「何だ、俺の道中の苦労は報われないのか........」

「あー........災難だったね」

「ちきしょー」

「まあまあ、こんな美人と一緒にいられるんだからチャラってことで、ね?」

「自分で言うなよ」

「いや、冗談だからさ、その可哀想なものを見る目はやめてね?」


確かに美人だろうが、自画自賛したら負けな気がする。


「お~刃人だ~」

「........おそよう~?」


不意にソファーから間延びした声が2つ、ピンクの頭とセットで出てきた。言うまでもなく、ニールとネールだ。髪が長い方がニール、短い方がネールである。........髪の長さ以外は全くそっくりなので、この違いはかなり重要だ。


「いたのか万年お寝む共」

「言ってくれますな~」

「ぬかしおる~」

「常に眠そうじゃねぇか」

「そうね~だからね~」

「ゲームをしましょ~」


何がだからなのかはよくわからんが、そう言って双子が取り出したのは1つのゲームソフト。パッケージには『ボマーウーマン』と書かれていた。説明を読むと、どうやら俺の世界でのボン○ーマンと同じらしい。違うところと言えば爆弾を扱うキャラクターが可愛い女の子になったことだろう。........世界が違えど、考えつくのは似たようなことなんだなぁ。


「イツキもやろ~」

「4人でやろ~」

「いいよ、ちょうど手が空いたからね」

「あ~、ねぇネール~」

「何~?」

「あれやろあれ~」

「お~やりましょ~」


........なんか思い付いたらしいが、この胸騒ぎは何だろう。俺の5000万年の経験則が警鐘を鳴らしている。


「ビリの人は~」

「トップの人から~」

「「罰ゲームを受けま~す」」

「え゛」


予感的中。今じゃなきゃ乗ってたが、この空前絶後の厄日では結末は目に見えている。俺の思考はいかにしてゲームをやらずに済むかでフル回転していた。


「........俺ちょっと腹痛が痛いからやめとくわ。トイレ行ってくる」


無論嘘だが気にしない。そのまま宣言と同時に立ち上がる俺に当然残りの3人は食い下がってくる。


「じゃあ待ってるから速くしてね」

「いや~それがよ、ちょ~っとトイレと親睦を深める事態になりそうなんだよな~」

「胃腸薬ならあるけど~」

「飲む~?」

「何でそんなもんもってんだよ!?」

「「........」」

「なんとか言えよッ!」


ツッコミとはいえ6歳児に大声を出す5000万歳、絵面は最悪である。大人げないったらありゃしない。


「........グズッ」

「........ヒック........」

「え」


泣いちゃったよ!どうすんだこれ!


「........刃人は私たちが嫌いなんだ~」

「........だから逃げるんだ~」

「いや、それはだな........」

「........傭兵、さすがに今のはどうかと思うよ?」


大佐の声も冷ややかである。嘘をついたことはあっさりとバレてるようだ。........当たり前か、ベタすぎだもんな。

しかし、目の前で幼女2名が鼻をすすりながらむせび泣く様は非常によろしくない。罪悪感が間欠泉のようにジャンジャン溢れてくる。悪いのは俺なんだがな。


「傭兵、これはやるしかないんじゃないかな?」

「........わーったよ!やりますよ、手加減抜きでな!」

「わ~い」

「始めよう~すぐ始めよう~」

「てめぇら嘘泣きかよ!?」


........ 今日は俺、どこまでもダメだな。


ーーーーーー


「........泣いてもいい?これ」

「「「ダメ~」」」

「........あんまりだぁ」


結局定時になるまでずっとゲームをしていた俺達は、4人で帰宅する最中である。4人が4人手を繋いでた。ただ、周りは現実とちょっと違うものが見えているようだ。


「おい........あれ見ろよ........」

「うわ、すっげぇ美人」

「美女と美幼女........ムホッ、たまらん!」

「護りたい........この光景........」


........お気付きになっただろうか........。そう、彼らには見えるはずのものが見えておらず、代わりにあるはずのないものが見えているのだ。


「........プッ、ククク。........似合ってるよ、傭兵」

「ホントだね~」

「美人だね~」

「........」


斬崎刃人、女装なう。........俺だって好き好んでこんなことしてる訳じゃない。すべてはあの悪魔のゲームがいかんのだ。

案の定、ゲームで1番負けたのは俺だった。勝率にして2割、信じられないほど負けまくった。たまに大佐が負けて胸を揉まれたりしてたが、この姉妹はアホみたいに強く、どちらも1回も罰ゲームを食らわなかった。

で、罰ゲームの末に今の俺がいるわけである。髪は後ろで1本に結んでいたの三つ編みにされ、ご丁寧に先端にリボンまでつけられた。顔にも負けるたびにアイシャドウだのファンデーションだのでメイクを施され、終いには服まで女物で固められてしまった。

ゲームの最中に1回だけ副官さんが来たので助けを求めたのだが、そもそも俺だと気づいてもらえなかった。むしろ、「よろしければメイクの仕方を教えて頂けませんか?」なんて言われてしまった。固まる俺の後ろで3人が転げ回っていたのにはさすがに殺意がわいた。


「........ど畜生」

「まあまあいいじゃないか。女装してるってバレて白い目で見られるよりはさ」

「だからってこの状態で家まで帰るのはやりすぎだろ........」

「........嫌なの~?」

「私たち、嫌い~?」

「........うぐっ」


それに本日最大の痛手はこれである。この2人、俺が泣き落としに弱いことに感づいてしまったらしく、罰ゲームから逃げようとするとすぐに泣くようになってしまった。気づいてから涙腺を完全にコントロールするのに2分とかかっていないんだから驚きである。


「........少し弱すぎじゃない?傭兵らしくない」

「........俺もそう思う」

「ボクも今度からそうしようかな~」

「........勘弁してくれ、心が本気で折れそう........」

「か、かなり弱ってるね........。やめとくよ」

「........恩に着る」

「ネール~。ゲームって楽しいね~」

「そうだねニール~」


このあと大佐と別れて店まで帰ったが、そこで客と間違われた。それと後日、副官さんにニールとネールがネタバレをした際になぜか俺がビンタを食らった。何でかと聞いたら女を騙した罰だとか........解せぬ。




そろそろあれだ........成績が出る。恐ろしい話です........。

それではこの辺で失礼します

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