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傭兵in異世界  作者: キリサキ隊長
傭兵の逃走劇
68/86

傭兵の心の中

更新遅れまして申し訳ありません。最近の口癖は「勘弁してください」なキリサキ隊長です。

それではどうかお付き合いくださいませ

「........もう何度目か」


周りは全て暗闇だった。景色の類いは一切見えず、また音も何1つ聞こえない。だが俺はここを知っている。ここは........俺の中だ。


「........俺の中って何もないのな」


これが俺たちの種族の力なのかはわからないが、ここが俺の中とわかっているととても寂しく感じてしまう。何せ何もないのだ。

他人の心の中がどうなってるかは知る訳がないのだがここまで何もないと言うことはないと思う。


「所詮俺は空っぽか........」


クレイグにはあんな説教をたれたが、本当は俺にあんなことを言う資格はない。俺には俺固有の戦う理由はないのだ。俺は戦う事が目的であり、生涯の使命だ。無数の命を無許可で踏みにじってきた俺が安息に身をおくことは許されない、だからこそ俺は戦うのだ。

が、俺の中にはもう1人の真っ当な人間としての俺がいる。そいつは俺に、そんなのは戦う理由にならないと言うのだ。戦う理由はもっと高尚で、意義のあるものだと、人間おれは無責任にがなりたてる。それが俺に戦う理由を探させるのだ。

そして俺はいつしか、自分の事を刀と形容するようになった。自分は刀だ、持てぬものの意志を代弁する声なき刀だと。俺は命令に従い戦うだけ、俺の戦う理由は依頼人の戦う理由だと。真に戦う理由を誰かに依存していたのは俺の方だったのだ。


「........だからこそジョニー、お前の死を認めたくなかったんだ」


ジョニーは俺の理想についてきたのだ。だが、俺の理想は他人のもので、俺はそれを拝借していたにすぎない。そんなもののために俺を庇って1人の命が失われたと言うのを、俺はどうしても認めたくはなかった。


『そうだったのか』

「!」


後ろから声がする。実際には声は響いていて、どこから声がしたのかは判別しづらかったが、反射的に後ろを向いていた。

そこには紛れもなくジョニーがいた。死別した時間は1時間もたっていないので、それがジョニーであることは視界に入った瞬間理解できた。


『つまり俺は、お前に騙されていたと言うことか?』

「........間違ってはねえな。俺の理想じゃないもんな」


そう、俺の理想じゃない。この世界で俺が戦う理由は大佐が与えたものだ。


「........恨むか?お前を騙した挙げ句死なせた俺を」

『いや?』


........これは意外だぜ、恨むのが人間なはずなんだが。

姿は見えずとも俺にはジョニーは笑って許してくれそうな感じがした。


『俺も結局、死んでいった教え子たちと同じさ。平和な世を作る歯車として生き、平和な世を作る礎として死んだ』

「........俺と一緒に戦わねぇか?」


今まで記憶を押さえつけていたお陰で無自覚に死んでいった者たちの魂を縛り続けてきた俺だが、今ならそれを任意で行える。解放することも縛ることも、だ。が、平和な世を望んだ男はその要求にこう答えた。


『........断るよ』

「マジか、お前が望んだ平和な世を生きられるのにか?」

『俺はあくまでも人として平和な世を望むんだ。魂だけの、幽霊と変わらない姿にしがみついてまで生きるつもりはない』

「........そうか」

『決してお前を貶める訳じゃない。俺はあの世で教え子に会いたいからな』


他にやりたいことがあるんじゃあ仕方ない。相手がやだと言うのなら無理に引き留められねぇわな。


『もう逝くよ。短い間だったが、お前と出会えてよかった。俺はお前と会ったことで人生を華々しく終わることができたぞ』

「そう言ってくれるとはありがてぇ。あの世でも達者でな」


あの世でも達者で、とは何とも変なフレーズだがこの際無視だ。今俺に出来ることはこれから旅立つ戦友を送ることだけだ。


『........あぁそうだ。お前にもう1つ言うことがあるんだった』

「何だ?」

『戦え』

「........了解」


至ってシンプル、だからこそ分かりやすい遺言である。俺はそのまま遠ざかるジョニーの声と気配に無意識に敬礼していた。


ーーーーーー


「........すまん」

「あ、起きた」


起きてまず聞こえたのは、ガンシップのプロペラ音とキルオンの声だった。どうやら今は飛行中のようだ。


「大佐殿ォ、ジントが起きましたぜ」


身体を起こすと俺は中央に寝かされていて、両脇には大佐たちが眠りこけている。キルオンだけが起きていた。この場にいないお嬢ちゃんがこれを操縦しているらしい。


「ん........ありがとうキルオン、少しそこ変わってもらっていいかな?」

「了解です」


キルオンが後ろに下がり大佐が出てくる。その顔はとても不安そうである。........俺のせいだよなぁ、これ。


「傭兵、気分はどうだい?」

「........憑き物が落ちた気分だ。清々しい」

「それはよかった。........で、聞きたいことがあるんだけどいいかい?」

「俺はここからどうするか、か?」

「うん」


大佐は考えてることが割りと顔に出るからとても分かりやすい。逆に言えばこの人に心配をかけてたりするとそれもポロッと出るのである意味では気を使う相手だ。


「俺はよ、ジョニーに会ってきた」

「え?」

「あいつは俺に『戦え』と言った」

「そう........そうか」


不安げな大佐の顔はうって変わって笑顔になった。........いい笑顔するよなぁ、この人。........で、大佐の周りにいるこいつらだが。


「ところで、狸寝入り決め込んでる連中はなんの理由があってそんなことしてんの?」

「「ギク~」」


分かりやすいリアクションが聞こえてくる。........自分でギクって言うってどうなのよ?


「むぅ........看破されてたか」

「だから言ったのに~」

「クレイグのおバカ~」

「「おバカ~」」

「くっ........」

「........プッ、アッハハハハハハ!!」


久しぶりにこのアホみたいなノリを味わった。だが、嫌いじゃない。こんなに大いに笑ったのはいつ以来だったか?


「いいねぇ、これ。俺の戦う意欲に火が着くってもんだ!」

「傭兵、それじゃあ........」

「おう、戦おう。俺が死ぬその時までな」

「やっとお兄さんのボケも治ったんですね」


コックピットのお嬢ちゃんが手厳しい事を言ってくれる。しかしこのささやかな罵倒さえも今の俺には心地よい。


「確かにボケてたのは俺だな。戦う理由を誰かに依存していたのは俺だったのにな。すまんなクレイグよぉ」

「いや、あの言葉のあと俺も考えた。結局のところ俺達も誰かに戦う理由を依存していたのには変わらない」

「........じゃあ契約は継続でいいのかな?」

「任せろ........我が身が朽ちるその時まで、あなたの意志を代弁する矛となりましょう」


少しキザったらしい気がするが、ここは心機一転、ビシッと決めておきたかった。........やべぇ、言ってから段々羞恥が込み上げてくる。ほれ見ろ、大佐なんか顔真っ赤にしてプルプルしてる。


「よっ、傭兵~~~~、ボクはか゛ん゛と゛う゛し゛た゛よ゛~~」


しまった!これはへばりついてくるパターンだったか!おいお前ら!生暖かい目で見てないで助けろ!笑うんじゃあないちくしょぉおお!!


「何だ~?うるさいぞぉ........」


その後、ホントに寝てたらしいヤチヨ先生が乱入してガンシップが墜落寸前まで落ちたのはまた別の話だ。思い出したくもねぇ........。

この前ついに二十歳になりました。酒が飲み放題だぜ!

というわけで今日はこの辺で失礼します

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