傭兵と欲望に忠実な者
スマホアプリの雛ちゃんシリーズにはまってしまいました。皆さんもやってみると面白いですよ?
それではどうかお付き合いくださいませ
「はじめまして、反逆者の皆さん」
3人とも距離をとり居ってと対峙する。相手は見た限り1人、白髪に眼鏡の白衣の男である。マクリル配下の最後の1人だ。
「と言っても、2人とは顔見知りでしたね」
「........やっぱりあんたか、ヒュー」
「ええ、追撃部隊を指揮しているのはマクリル様の配下である我々、『獣おろし』ですから」
この男は名前をヒューと言うらしい。さらりと自分が『獣おろし』であることを白状したが、お世辞にも戦えるやつには見えない。顔色は良くないし、今にも死にそうなほど存在感がない。身体がゆらゆら揺れているのも合わせてまるで蜃気楼と会話しているようだ。
「さて、斬崎刃人。ここまで逃げたということはレイチェルはやられたわけですが、最後に聞きます。我々に降る気はないのですね?」
わざわざ最後通牒を出してくるとは律儀なもんだ、相手だって返事はわかりきってるはずなんだがな。
「逆に聴くがよ、見逃してはくれねぇか?」
「お断りです。私は私の欲望のためにマクリル様に仕えていますから。受けた恩よりも上をいく欲望が」
「欲望、欲望ねぇ........」
今までのやつはマクリルを親と表現したりと、普通の恩人の域を越えた信頼があったが、こいつにはそれがない。なら、何がこいつを動かす?こいつを動かす欲望とはなんだ?
「神とは、存在の不確かなものです。それは誰も知らないことと言い換えることができる」
「何?」
「私は神を見たいのです。今知らぬことを知ろうと思う、それが私の欲望です」
「だからマクリルのもとにいるって言うの?」
「その通りですよヤチヨ。彼が神を見るための最短ルートであるわけですから、彼を確保しようとするのは至極当たり前な発想なのです」
「それを俺たちが許すとでも?俺たちにとってもこいつは必要な存在だ」
傍らの2人がとてもありがたいことを言ってくれる。........ここであっさり売られたらどうしようかと思ったのは、俺がこの2人を信じてないみたいなので黙ってよう。
「........私は無駄なことは極力控える性格でしてね」
ヒューが手を挙げる。それが合図で、周りに兵が展開される。この交渉は時間稼ぎだったようで、すでに辺りには一個中隊ほどが展開しているようだ。
「あなた方にはこの世から退場していただきます」
それが戦闘開始の号令になった。
ーーーーーー
「こなくそぉぉぉ!!」
ライトマシンガンを乱射して眼前の敵を一掃する。敵1人の練度は高くないものの数が多い。それこそ3人合わせて一個中隊はとっくに撃破したはずなのだが、まだまだ敵が湧いてくる。
「おい斬崎!お前の仲間はどうした!」
「狭いんだよここは!こんなとこで出しても仲間が被弾するだけだ」
「数が多すぎる、これじゃ潰されるぜ!?」
「ちょっと待て、これにはからくりがあるはずだ。今探してる!」
確かに俺たちがいるこの広場では仲間は出せないが、敵が湧いてきているその外周は話は別だ。そこに部隊を展開して辺りを威力偵察させているが、今のところ報告がない。........速くしてくれぇ!
「粘りますねぇ........」
なんか背筋がぞわっと来た。乱戦の中で敵をいなしながら目だけをヒューに向ける。その手には鉄パイプが握られていた。あれで戦うのかと思ったが、どうにも様子が違う。
握り方が銃のようなのだ。長い鉄パイプに短い突起状のパイプが伸びていて、短い方がグリップ、長い方をバレルに見立てたような握り方なのだ。........ホントにあれで何する気なんだろうか。
と思ったらその鉄パイプが歪な音を出し始めた。バキバキと音をたてながらぐねぐねと歪んでいく。そしてひとしきりあらぶった後にヒューがその手に握っていたのは、鉄パイプではなかった。ヒューは容赦なく引き金を引く。
「な、何ィ!?」
なんと鉄パイプがライフルに変身した。ライフルっぽい形をしていただけだったものが発射機構を備えたのだ。おいおい勘弁してくれよ、お前はどこの錬金術師だよ!?
そばにいた敵兵を盾がわりにして防御する。盾にしたやつも急所は外れているから問題はなさそうだ。すまんね。
「知識こそ最高の武器です。行きますよ」
今度は針金をナイフに変えてこっちに迫ってくる。スピードやパワーはさほど高くないし、接近戦は苦手なのか立ち回りもどこかぎこちない。返り討ちにしてやろうと太刀を振るう。
「ぐ、ぐあああ!!」
俺の斬撃はそのままヒューを真っ二つにするはずだった。しかし紙一重で避けられたようでヒュー
を絶命させるには至らなかった。........だが収穫もあった。
「その腕じゃあ戦えねぇだろ」
「........乱戦の中なら私でも仕留められると思ったのですが........甘かったですね」
俺の斬撃はヒューの左腕をとらえ、切断していた。その辺に真っ赤に染まった白衣の腕が転がっている。
しかし不思議なのはヒューだ。腕を叩っ切られたのにその顔は不適な笑みを浮かべている。あれは自分の思い通りにいった時の顔だ。
「死んでもらう!」
「!?」
しまった!ヒューに気を取られて気づくのが遅れたか!
すでに俺の背後にはエネルギー弾が迫っていた。自分を囮にしてまで隙を作らせるとは........今思えば予想するべきだった。
感覚が狂ったのか、弾の速度が異常に遅く見えるが避けられない。意識に身体がついていかない感じだ。
やべぇな、こりゃ急所直撃コースだ。........諦めるかと思ったそのときだった。
「斬崎危ない!」
何かが俺の前に飛び出してきて代わりに弾を受けた。それが俺にとって大切なものであることにしばらく気づくことができなかった、というよりは認めたくなかった。
「ジ、ジョニー!」
弾を放った敵を吹っ飛ばして。ジョニーを抱き抱える。すでに息はなく、死んでいるのは誰の目にも明らかだった。
「オールメディック!是が非でもジョニーを助けてみせろ!」
『隊長........その人は』
「うるせぇ!さっさとやれ!」
「刃人、残念だけどそれじゃジョニーはダメだ」
先生がオールメディックたちと同じことを言う。この当たり所では助からないのは俺だってわかってる。だが、何もできないで戦友の死を受け入れることはどうしてもできない。
「おいジョニー!起きろよ!まだ敵はいるんだぞ!」
「........」
「何とか言えよ........!何してんだよ........!」
「................」
いくら呼び掛けてもジョニーは反応しない。戦友の死ははいて捨てるほど経験したはずなのに、慣れることは決してない。その証拠に俺は今も敵の前でジョニーを抱えたままうなだれるだけだった。その間に周りは少しずつ包囲されていく。
「刃人、切り替えろよ!ジョニーはもう帰ってこないんだよ!」
「........嘘だろおい........協力してくれんじゃなかったのかよ........」
「あーもー!いい加減に........ん?」
その時音が聞こえた。あまりにも小さくて聞き逃しそうだったが、確実に聞こえる音がある。ババババというその音は段々と大きくなっていく。そこではじめてその場にいた者は何かが近づいているのだと気づいた。
『傭兵!ヤチヨ先生!伏せて!』
「!」
スピーカーを通したような女の声が辺りに響く。それと同時に空から大きな影が近づいてきた。
山に入りますのでしばらく更新が止まりますがご容赦を。
それではこの辺で失礼します




