夢の中の傭兵
晴れの日と休みが合わない。........畜生め!
レイチェル戦はとても地味です。派手な戦闘より書きづらいのに何してんですかね?
そんなんですが、どうかお付き合いくださいませ
「........うおおああ!!」
いきなり身体に走る鈍痛に悲鳴をあげる。無理やり覚醒させられた俺の視界には、見覚えのある天井があった。
........ここは大佐の部屋か、どうやらソファーの上でうたた寝をしていたようだ。俺はソファーから転げ落ちたらしい。
「........お目覚めかい?傭兵」
大佐が俺に声をかける。その声色は呆れたような、安堵したような感じだった。........なぜかはわからんが、随分久しぶりに大佐の声を聞いた気がする。
「転げ落ちるなんて珍しいね。うなされてたけど大丈夫かい?」
「あー........とてつもなく長い夢を見ていた気がするんだよなぁ。何だったかは忘れちまったが」
「戦争が終わったからといって気が緩みすぎなんじゃあないかな?」
「かもしれん........」
鈍ってんのかなぁ........。俺達の影の努力によって戦争は終わって平和になって..........平和に?
「........何か違うなぁ」
「違うって何が?」
「平和が」
「傭兵には平和は似合わなそうだね」
「うるしゃあ!」
余計なお世話だっつーの!
「........他の連中はどうした?さっきまでいたろ」
「窓の外を見てごらんよ」
「........なるほど」
大佐に促されて外を見ればすっかり暗くなっていて、かすかに星が見える。時計を見たら夜の8時だった。
「じゃあ大佐は何してんだ?」
「........何してると思う?」
大佐の声が低くおどろおどろしいものになる。ま、大方溜め込んでた書類でも片付けてたんだろう。軍人がお払い箱になりつつあるってのに何でこの人は毎度忙しくしてんだかねぇ........。
「次に大佐は『手伝ってくれるかい?』と言う」
「........早く手伝って、帰れないじゃないか」
ありゃりゃ外れちまった。やっぱりジョ○フのようにはいかねぇな。
それにしても、寝覚めが悪いのか知らんがどうにも違和感がある。まだ夢の中にいるような、俺の知っていることと何か違うような........ホントに平和ボケでもしてるんかねぇ。
ーーーーーー
「はぁ~~、終わったぁ~」
「信じられねえ........何があんなに忙しくしてるんだ」
「ボクも出世したからね~。忙しくもなるよ」
「え?出世したの?」
「したよ!君もいたじゃないか!」
........まるで思い出せん、そんなことあったか?何か昼寝してから記憶がごちゃごちゃしてるな。ついさっきまで戦ってた気がする。
「ひどいよ傭兵........」
「あー........すまん」
「罰として今日は飲むよ、倒れるまで」
「倒れるまで!?」
大佐、それは死刑宣告だぜ。
「とりあえず........あそこでいいや、傭兵行くよ!」
「おい、ちょ、引っ張るな!た~す~け~て~」
手近なバーに入る。店には他の客はいなくて、バーテンが1人、無言でグラスを磨いてるだけだった。とりあえずカウンターにならんで腰掛け、適当に飲み物を注文する。
「で、傭兵。なにか悩みでもあるのかい?」
「あ?何だって?」
「夕方からどこか浮わついてる感じがするからさ。何かあったかなーと」
........よく見てるな。間抜けなのか鋭いのかよくわからない、ただ人の上にたてる器であることは確か、それが大佐だ。だからこそ、こんなことにも違和感を感じるなんて........。
「........あんとき起きてからさ、まだ夢の中にいる気がするんだよな」
「ふーん........どんな夢だった?」
「よく覚えてねぇんだが、戦ってた。戦争は終わったのに戦争の夢を見ていた........気がする」
「........傭兵らしい」
クスクスと笑いながら酒を飲む大佐。いつの間にか俺と大佐の前にはそれぞれグラスが1つ置かれていた。
「だけどもう戦争はない。ここは平和な世界だよ?傭兵のおかげで、ね?」
「それはわかってるんだ、俺が何をやってここまで来たかは覚えてる。だがそれが今とても疑わしく見えちまうんだよ........」
「ずっと戦い漬けだったんだから仕方ないよ.......だけどもう迷うことはない、今は確かに平和なんだから」
「そうか........心配をかけたか?」
「長い付き合いだもの、当たり前さ」
「........感謝する」
そのあとはずっと他愛のない会話をしながら夜を明かした。胸にはその間もずっと違和感が居座っていた。
ーーーーーー
「なるほど~、これがあなたの平和........素朴ね~」
気に背中を預けて眠りこける刃人の前でレイチェルは目を閉じながらしきりに呟いていた。横にはヤチヨとジョニーが静かに寝ている。3人とも目覚める気配はない。
「ヤチヨちゃんとこの教官さんは生かしておくけど、あなたは見逃せないのよ。ごめんなさい」
レイチェルが呪文を唱えると、刃人の身体が赤く発光する。毒々しい赤い光は、纏っている者の身体に害をなすものであることを物語っていた。
「聞こえてないだろうけど聞かせてあげるわ。あなたはこれから夢にとらわれて、じわじわと死んでいく」
「死にたくなければやることは簡単よ?起きればいい」
「だけどできるかしらね?あなたが望むものすべてがある夢から果たして覚めたいと思うかしら?」
レイチェルはそのまま聞き手不在の独り言を続ける。
「私は夢に介入できる。それに手を加えた魔法が私の十八番、『スイート・ナイトメア』よ。あなたに破れるかしらね?」
「せめて、あなたが死ぬまで見ててあげるわ。私がここまで男性に興味を持ったのは初めてだから、終わりまで見ててあげる........」
花粉が猛威をふるいはじめてますね。すでに鼻がズビバビです。皆さんも花粉症にはお気をつけて........。
それではこの辺で失礼します




