傭兵、初任務を受ける
評価ポイントがついていたことに驚愕と感動を覚えました
ありがとうございます(^_^ゞ
「おはよう傭兵。よく眠れたかな?」
「おはよーさん大佐。どの口がそんなことを吐くんだコンチクショウ」
「あはは。あれで酔い潰れるとは傭兵も修行が足りないね」
「普通のやつは歓迎会と称して飲み会をする際に樽でワインを飲み干すなんて芸は披露しねぇよ」
更に言えばそれを他人に強要したりもしねぇよ!お陰でただいま絶賛2日酔い中だわどうしてくれるのか。
........しかし、大佐と契約を結んではや1周間。特に戦場に駆り出されることもなく、大佐からの指示があるまでは暇してるしかなかった。暇すぎて契約した2日後にバイトを始めた。
とはいえ、全く無駄な時間だったかと言えばそんなことはない。この1週間でこの世界の事がある程度はわかった。この辺で整理してみるとこうなる。
・この国は機械技術が発達している国「ガーンズ」と言って、お隣のなんちゃって戦争の相手国は魔法とか錬金術が発達している国「ウィーズ」と言うらしい(最初に見た人間をミンチに変えてた魔方陣みたいなのも魔法らしい)。
・少なくともこの国の内情は安定している。特にデモとかテロがあるわけでもなく平穏に見える。
・お互いの国は志願兵で軍を動かしているらしいが給料がいいらしく今でも志願兵は来るらしい(志願する本人はサラリーマンになるくらいの心構えとのこと)。
・お互いの国の国民に戦争をしているという実感はなく、前線に出ている命を懸けている兵士だけが戦争を感じている。
・この国の機械技術、科学技術は俺の知っているものよりはるかに高度なものだった(四次元や反重力といった俺の世界でも理論が確立したばかりの代物が実用化されてた)。
・大佐は尋問局とか言うところの局長で、捕虜についての全般を任されている(ちなみに大佐にはファンクラブがあって男女両方から高い支持があるらしい)
・詰所の近くの定食屋は激ウマ(俺のバイト先)。
情報は定食屋でバイトをする際にそこの大将から教えてもらった。大将は元軍人で屈強な老人であるがその外見からにじみ出る厳しそうなイメージとは無縁の気さくな人物だった。
しかし、こうやって整理してみるととんでもないところに来ちまったっぽいんだが、俺生きてけるのか?これ。
「........聞いてるのかい?」
「へあ!?」
いかんいかん。大佐がなんか言ってたらしい。
「全く........。そろそろ傭兵にも働いてもらおうと思ってるんだけどね?ボクは」
「おっとぉ?ついに俺にも仕事が来たか?」
「いかにも。30分後に概要を説明するからボクの部屋に来るようにね」
「了解!!」
さて、どんな任務なのかねぇ........。
~45分後~
「待たせたね」
そう言って大佐は堂々と遅刻してきた。金魚のふん........もとい知らないおっさんを引き連れて。
「........誰だ?」
「我が軍の将軍たちだね。気になる人がいるならあとで自分で質問に行ってね」
「何でいるんだ?」
「もちろん君を紹介するためさ。この戦争を終結させる切り札になりうる人物がいるって言ったら是非とも見てみたいと仰ってね」
「........」
いやいやいやいや待て待て待て!!明らかに敵意しか向いてこないんですけど!?
「それでは作戦を説明します。将軍方もよろしいですか?」
「構わんよイツキ大佐。始めてくれたまえ」
「では始めます........。さて、傭兵。今回は救出ミッションだ。君はここに向かってある人を救出してほしい」
そう言われた時、目の前にホログラムで何かの見取り図のようなものがあらわれた。これは........街か?
「ここは国境付近の山岳地帯にある都市、ファクトルだ。今から1月ほど前にウィーズ軍の奇襲を受けて占領されてしまった。」
「随分広いな。おまけになんか工場みたいなのがごちゃごちゃしてるが........」
「その通りだよ。ここは都市全体が我が軍の重要な武器生産の拠点になっている。いわばこの街そのものが1つの工場なんだ」
「ほぉ~ん........。で、俺は誰を救い出せばいいんだ?」
「うん、この人物だよ」
そう言ってホログラムが切り替わり、一人の人物が写し出された。白髪、片眼を隠している包帯、メイドさんがつけてるような黒いカチューシャ、ツインテール........とにかく特徴的な女性、というより女の子だった。話の流れと軍服を着てるところから辛うじてこれが救出対象らしいということはわかったが、この2つがなかったら厨二病をこじらせたお嬢ちゃんとしか思えない。
「誰これ」
「アリス中佐、ファクトルに駐留している部隊の責任者だよ。」
「!?」
嘘ォ!!責任者!?こんなお嬢ちゃんが中佐!?そんなのありかよ!?どうなってやがる........。
「まあ気持ちはわかるが見た目はともかく彼女はいわゆる天才ってやつなんだ。」
「はぁ........」
そっか天才か。天才なら仕方ねぇな。
「続けるよ。傭兵には彼女をこれから1週間で救出してもらいたいんだ。彼女は国軍中佐である他にファクトルの武器工場の責任者でもある。彼女の頭のなかには試作段階の兵器の情報などががすべて入っている。情報を吐く前に連れ戻してくれ」
「待てよ。そのお嬢ちゃ「アリス中佐ね」........中佐が正常に生きてるってわかるのか?」
「1週間ほど前にファクトルにいた兵士の1人がここまで逃げ延びてきた。彼によれば戦闘の末に守備隊は壊滅、アリス中佐は敵の指揮官に捕らわれ尋問されているとのことだ」
「見てくれの割にはガッツのあるお嬢ちゃんだな。それともう1つ。時間がないのは分かるが何で『少しでも早く』じゃなくて『1週間』なんだ」
「さっきも言ったと思うけどここは我が軍の重要な武器生産の拠点だ。だからここは奪還しなければならない。そのための部隊を差し向けるのが1週間後というわけなんだ」
なるほど。占領したってことはここには利用価値がある。そこに奪還しようって輩が出てきたら戦闘になる。万が一に備えて大事なとこだけ先に引っ込めようってことか。
「作戦の概要は理解した。んで?人員や装備はどうなるんだ?」
「あー........それね。うん、今説明するよ」
........ん?なんか歯切れが悪くなってきたぞ?おまけにおっさんたちはニヤニヤしてるし、嫌な予感しかしねぇなぁ…。
「装備の方は傭兵が持ち込んだものとこちらで用意すべきものはリアルタイムで傭兵のもとに転送する方式を採ろうと思うがどうだい?」
つまり弾がほしいと思ったら大佐に通信で言えばその場にすぐに寄越してくれるってことか。すげぇな。
「わかった。弾薬やグレネードみたいな消耗品を頼むぜ」
「うん、手配しよう。それと人員の話なんだけど........悪いが今回は傭兵1人でこの任務をこなしてもらいたい」
「........は?」
今なんつったこの大佐?1人でやれ?俺は某伝説のボスの弟子の蛇じゃないんだがね........。第1ホントにこの作戦を1人でこなせると思ってんのか?
「バカか大佐は。これだけの作戦だぞ?いくら弾薬の支援があるとはいえ少なくとも3人は必要な作戦だと思うが?」
「わかっているさそんなことは。だけどこれは将軍方のお達しだ。君がウィーズのスパイなどではないのならこの任務を遂行してウィーズに弓を引けることを証明してみろってことなんだよ」
さっきから妙にニヤニヤしてたのはこういうことか。あいつらの中では俺は未だにスパイ扱いらしい。そんなやつらにとってこの任務を突っぱねるってことはスパイですって高らかに名乗ることになりかねない。
「........大佐ァ........覚えとけよコンチクショウ........」
「傭兵?」
「........いいぜ。誰かがやらなきゃいけねんだろ?だったら俺がやってやるよ」
「........ふふ。さすがボクが見込んだ傭兵だ........」
「あ?」
「いや、何でもないよ♪」
こうして作戦のブリーフィングは終わった。蛇足だが作戦を承諾したときのおっさんたちの驚愕した顔がかなり笑えた。あと、なんかしらんが大佐は次の日俺が作戦に出発するまで上機嫌だった。
........ふふ。さすが傭兵だなぁ。こんなボクの無茶苦茶な要求でも飲んでくれるだなんて........。やっぱりボクと歩んでくれるのは傭兵、ジントしかいないね........♪
........うん
最後のはいらなかったかもしれないですね