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傭兵in異世界  作者: キリサキ隊長
傭兵の決断
58/86

傭兵と復讐者の末路

何でか知らないけどもこの話を書くのにすんごく手が止まるんですよね。何でかな~。

それではどうかお付き合いくださいませ

「........フンッ!」

「何!?」


ウィンゴが言葉を切った次の瞬間、俺を大きな影が被う。それが一瞬で距離を詰めてきたウィンゴだと気づいたのは俺がすんでのところで攻撃を避けたところだった。........野郎、速力が増してるし、おまけにパワーアップまでしてやがる。反則級のスペックだぜ、毎度のことながらな。


「毎度のことだがよ、お前たちのそれはちょいと反則じゃねぇか?」

「........貴様が言うことではないな........」


速い、とにかく速い。間合いを詰めるスピードから巨大な斧が轟音をたてて空を切る動作まですべてが桁違いだ。

........仲間を呼びたいところだが、これを俺以外に受けさせるのはちと酷だな。だが援護射撃ならどうか?


(........背後に召喚する。背中から撃て!)

『わかった。任せろ斬崎』


俺の召喚は基本的に無音である。おまけに修行の成果である程度遠くに召喚することも可能になった。

それを生かして背後にコンバットファイターを召喚、そいつの得物であるスレッジハンマーで攻撃を仕掛けさせる。


「........わからぬとでも........?」

『「!?」』


その瞬間、ウィンゴの身体が膨れ上がったように見えた。斧を受けた状態で少しも動かずにいたが、その影が3倍近くに大きくなったのだ。しかし月明かりが逆光になってしまい、何が起きているのかわからない。


ガキイィィィン!


ウィンゴの影が大きくなった時、鋭い金属音が響いた。スレッジハンマーは確かに当たったようだがこの音は不可解だ、何に当たったんだ?


『う、うぉおおおおお!!』


そして信じられないことに断末魔を上げたのは馴染みのある声、即ち俺の仲間のほうだった。今の状態から反撃されたってのか!?相手はファン○ルでも使えるのか?


「ええい、くそめ!」


斧を全力で振り払い、同時にアサルトライフルを撃つ。当然避けられるが、距離をとるには十分だった。その隙に仲間から情報を聞き出す。........あんまりこう言う仲間の使い方はしたくないが、死なないのでいいだろと割り切るしかない。指揮官失格と言われても仕方ない。


(大丈夫か?)

『あー、痛ぇ........生身だったら死んでたな』

(そんなにか........何があったってんだ)

『ああ........髪の毛だ』

(髪の毛だとぉ?)

『髪の毛が異常に増えて硬質化したんだ。お陰で俺のハンマーは防がれちまった』


マジか、パワーとスピードに加えてガードまで強くなるのか、化け物か。勘弁してくれよ........。


『それにあの攻撃、あれも髪の毛だ。針のように飛んできたさっきのやつもそれだ!』


なるほどなぁ........。ゲゲゲの鬼○郎かよ、あれより太いけどよく似てるよな。

それにしても........どうしたもんかな。奥の手はあるが、あんまし使いたくない。ホントにセコいし。


「........ふぅ」


こういう時は1度リラックスだ。力を抜いて精神を落ち着かせる。........よし、これで行こう。引っ掛かってくれるといいんだが........。


ーーーーーー


「........そうれ行くぞぉ!『スピードデビル』!」


今度は1人でウィンゴに突っ込んでいく。俺固有の身体強化と魔法の相乗効果で大幅に速力をあげたことで、ウィンゴと互角以上の戦いをすることが出来るようになった。ただしこのときは仲間を呼び出すのは出来ないので注意がいるが、今回はその心配はない。


「........それがしと速力比べをするか........いいだろう........!」


それに応じるようにウィンゴの速力もより強くなった。さっきのとは比べ物にならない、神速の立ち合いが始まった。草原を縦横無尽に移動し、3次元的に上下左右から攻撃を繰り出し繰り出される。........そんな動体視力の限界に挑戦した戦いを演じているが故に、相手は反応が遅れた。


「........ぬぅ........!?」


密かにフレアブレードを1本取りだし、太刀とあわせて二刀流となった俺は、フレアブレードでガードを行い、攻撃を太刀で行う戦法を取った。ほんの一瞬の出来事ですべてが決まるこの神速の戦いの中で相手は俺の攻撃のタイミングを見ることに気をとられ、俺の得物が2本になっていることに気づくのが遅れていた。

それにウィンゴ本体には表面を撫でる程度に気になりづらい傷しかつけていない。なぜなら俺の目的は他にあったからだ。


「........なんだこれは........!?」


フレアブレードは焼き切る武器である。それが俺の強化と合わさって高熱を放出した状態で相手の武器を受けたらどうなるか?答えは溶ける、である。

ウィンゴの斧は刃の部分が溶けてでこぼこになっていた。あれでは叩き潰すことはできても斬ることは出来ない。


「........小癪な真似を........!」


斧を投げ捨て、拳を構えてファイティングポーズを取る。いくら化け物みたいなスピードで動けてもこの二刀流を素手で受けるのは至難の技、というかほぼ不可能だ。


「終わりだ!」


時間をかけるつもりはない。一思いに終わりにしてやろうとフレアブレードを振りかぶる。........しかし即死させようと振るったその矛先はウィンゴの命を刈り取る一撃とはならなかった。


「........何だと!?」

「........侮るなかれ傭兵よ........このウィンゴ、ただでは死なぬぞ........!」


素手で止めたのだ、赤熱化しているフレアブレードを。その右手からは大量の血が滴り、ジュウジュウと音をたてながら辺りに肉が焼ける臭いを放つ。そしてもう片方の手で、俺の頭を鷲掴みにした。

そんなとき、ミシミシと何かが壊れていくような音がなった。それは俺の頭から聞こえてくる。........まさか俺の頭を握りつぶそうってのか!?こいつの握力はゴリラかよ!?


「ふざけんな!離せこのバカタレ!」

「........言ったはずだ、ただでは死なぬと........貴様も道連れだ........!」


絶体絶命とはこの事だ、1人じゃこれは脱出できん。こいつさっきから俺の予想を上回りすぎだろ!........仕方ねぇ、奥の手出すか。


「ゴーストスナイパー!」

『『了解!』』


ガァン、ガァン!


「........!?」


辺りに響く2発の銃声と共に、ウィンゴの身体が地面に崩れ落ちる。左腕と右足を撃ち抜かれ、最早再起は不可能であることは一目瞭然だった。........だから嫌なんだよな、奥の手はセコいから。


「........い、いつの間に........狙撃主を........」

「てめぇが変身したときさ。伏兵を仕込むのはあのタイミングしかねぇと思ったからな」

「........卑怯者め........」

「吠え面かくなよ負け犬が。言ったろ?これは高尚な決闘なんかじゃねぇ、低俗な殺しあいだとな」

「........」

「それに、てめぇなら気づけたはずだ。なんたってお前は風が読めるんだからよ」

「........気づいていたか........」

「コンバットファイターが仕掛けたとき、あいつはてめぇの風上にいた。だからわかったんだろ?」

「........ぐっ、........正解だ........」

「頭に血が上りすぎたてめぇの負けさ、卑怯なんていってほしかねぇな」


そう、これが戦場だ。予想外のところから理不尽な攻撃でポックリ死んじまう。これが本当に決闘なら俺だってこんな手は使わない。しかしこれは言わばたった二人の戦争だ。戦争においては俺はとやかく言われる筋合いも、言わせる気もない。

改めてウィンゴの傷を見る。両方とも弾は貫通しているし、すぐに死ぬような傷ではない。ただ足は神経をキレイに撃ち抜かれているため使い物にならない。俺は狙撃地点であった木の方を向いて手を振り、ゴーストスナイパー2人を下がらせる。すると月をバックにしたその木のシルエットが変わる。........相変わらずとんでもない偽装術だぜ。


「........それじゃあもう立てねぇなぁ、どうする?死ぬか生きるか」

「........情けは受けぬ........」

「ああそうかい」


........このまま一思いに殺してもいいが、聞きたいことが1つあるんだよな。


「なあウィンゴよぉ、てめぇは何で自己満足で復讐何てやるんだ?」

「........それがしたちは、お館様のために果てるのは怖くない........だが、それがしたちはかけがえのない家族でもあった........」

「........」

「........先に散った者たちが........復讐など望まぬことはわかっていた........だが、それがしには耐えられなかった........」

「耐えられなかった、ねぇ」


確かに自分の家族が殺されたってのに下手人がのうのうと生きているのは腹が立つだろう。律儀で義理堅いこの男ならなおさらか。


「........それがしのやったことは........死んでいった兄弟への冒涜だ........死して冥府に赴き........罪を償わねば、ならぬ........」

「そうかい........んじゃあ今楽にしてやる」


太刀を高く振り上げる。その刀身は月の光を浴びてどこか神々しくもあった。まるでこれから斬られるウィンゴを包み込もうとしているかのように........。

ウィンゴが目を閉じる。目元から涙のような水滴が見えた気がしたが、俺はあえてそれを無視して太刀を振り下ろした。


「........お館様、お許しを........」






新章を考えています。そしてもう終わりまで見えてます。どうか最後までよろしくお願いしますぜ。

それではこの辺で失礼します

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