傭兵の魔法の師
最近だらだら書いてる癖にクオリティが思うようにならない。ちくせう。
それでもよろしければどうかお付き合いくださいませ
「違う!何度言ったら分かるんだ、こうだ!」
「え、何?こうか!?」
「違う!こう!こうするんだ!」
あれから大きな進展があった。なんと、魔法を教えてくれる人を確保できたのだ。
思えば魔法の魔の字も録にわからない俺が魔法を完全に独学でやるのは少しばかり無理があったようだ。やっぱり書物に記された実体の伴わない情報だけではうまくいかないし、わからないことが出てきてしまえばお手上げだ。
そんなときにたまたま出会ったのが俺の目の前で魔法を実演しつつ指導してくれているこの男である。
「今日はここまでだ」
「あざーっす!」
この男、名前をジョニーと言う。見てくれは俺と同じ20代前半、服装は魔法使いの一般的な服装でローブ、顔は目出し帽のようなもので隠していて目しか見えないが、なぜかその頭の上にはキャスケット帽が乗っかってる。........なんとも前衛的なファッションセンスだ。
「大分良くなってきたな。イメージもしやすくなってきたんじゃないか?」
「おう、やっぱりイメージは大事なもんなんだな」
「そうだ、イメージをいかに早く自分の中で作り上げるかが魔法の上達において重要な要素だ」
なるほどね、道理で辛子云々の例えじゃわかんねぇわけだ。更に言うなら塗り薬でもダメだった。ジョニーが言うには同じ魔法でもイメージは人それぞれで、教科書に載ってるようなのはまるであてにならないらしい。例えば、俺の回復魔法のイメージはズバリ、温泉である。癒しをより強くイメージするのがコツらしい。
「しかしなかなか飲み込みがいいな。本当にお前はガーンズの人間なのか?」
「あー、やっぱりウィーズの人間じゃなけりゃそうなるか........」
「そうさ、この世界にはウィーズとガーンズの2国しかないんだ。ウィーズの人間でなければガーンズの人間になる」
........それは知ってる。この世界は長きにわたる戦争によって隣国を吸収し続けた結果2つの大国が出来上がった。それがウィーズとガーンズである。
まあ、そんな事情があっても実際は違うんだがね。俺はどっちでもないし。
「そんなこたぁどうでもいいだろ。俺は傭兵だぜ?どっち側なんてねぇよ」
「........そのような存在が国としては一番危ういんだが」
「........じゃあなんで俺に魔法を教えてくれんのさ」
「お前の所属と素性がわからないと言うのは仕方ないが、お前そのものの思想にはとても興味がある。........戦争を終わらせる、か」
「笑うか?」
「いや?良いものだ、俺はそう思う」
「........そうかい」
「戦争を望む者自体はごく少数だ。だが、声をあげて戦争に異義を唱えるものは多くない」
だろうな、多くのヤツが実害を被ってる訳じゃねぇからそんなことにもなるんだろう。しかし、そんな世の中において戦争を終わらせるなんて世迷い言ととられてもおかしくない言葉を信じるとは、なんとも酔狂なやつだ。
「まあいいか、飯にしようかい?今度は俺の番だ」
「うん、それは任せた。やはり軍隊飯はお世辞にもうまくないからな」
........そうなのか、軍人じゃなくてよかった。
ーーーーーー
「うーまい!」
テーレッテレー!
「そうかそれはよかったな」
飯を振る舞いながら俺は思う。........そのリアクションはあのお菓子を連想するんだよなぁ、あの効果音も余裕で再生できるぞ。
俺がジョニーに魔法を教わる際に、ある条件がつけられた。それは修行後の食事は俺が作るということだ。
始まりは暇をもて余した俺が夜な夜な軍施設内の厨房に忍び込んでは俺と仙里の夜食をこさえていたところを、ジョニーに見つかったのである。別に禁止されてた訳ではないが、夜中に隠れてやってたところを見られたのは非常によろしくないと思った俺はその時作っていたラーメンを献上した。言うなれば口止め料である。
正直こんなので買収できるとはさすがに思ってなかった。が、ジョニーは思いの外食いついてきた。曰く、こんなうまいものを食ったのは初めてだ!らしい。でかい声で誉めてくれんのはありがたいが夜だからやめて、ばれる。
まあそんなことがあって、ジョニーから礼がしたいと言われたのでじゃあ魔法を教えてくれ、と頼んだらあっさり了承してくれた。
「ところで斬崎、それは仙狐だよな?」
「ん?ああ、そうらしいぞ」
一心不乱に飯に食らいついていたジョニーが顔をあげて、俺にへばりつく小動物を指差す。こいつは最近は寝るか俺にぶら下がるしかしてない気がする。
........しかしジョニーが仙里に興味を持つとは、なんだろうか?
「どうかしたか?」
「いや、仙狐は知能が高くてな。魔法を扱うことができるという噂があるんだ」
「ふーん........」
「お前さえ良ければ試してみても良いだろうか?」
「うん?俺はいいけどよ、仙里は何て言うかな?」
「きゅ!」
左前足を1回上げて返事らしいしぐさをする。これは仙里のOKサインである。
「いいってよ。だけど言葉の通じない相手に魔法を教えるって出来るのか?」
「任せろ。むしろ教官魂に火が付くさ」
ジョニーはウィーズ軍学校の戦闘教官である。腕がよく、見た目は怖いのに本性はわりと間抜けなので生徒からは受けがいいとのことだ。早速魔導書を片手に仙里に講義を施すジョニーを見て、ジョニーがさっきまで食ってた飯の皿を見て俺はため息をついた。
「........速ぇよ」
目の前にあったのはジョニーのからの茶碗とお椀と、空っぽになっていたおかずの皿だった。........俺まだおかず食ってないんだけど........ちくしょうめ。
ぜい肉を効率よく減らすにはどうすれば........。
あ、それではこの辺で失礼します




