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傭兵in異世界  作者: キリサキ隊長
傭兵の決断
52/86

傭兵の答え

今回は長いです。それでもいいのであれば何なりとお読みください。

それではどうかお付き合いくださいませ

「ふむ、気分はどうかな?」

「........てめぇの顔だけでムカムカしてくるが概ね問題はないな」


俺がストレスだけでダウンしてから次の日、件の長テーブルの部屋で俺とマクリルは対峙していた。1つ違うのは今ここにいるのは俺とマクリル2人だけと言うことだ。


「.......では続きといこうか。こちらはできる限り早く計画を終わらせたいのでね」

「おっと、そいつは記憶を完全に取り戻した俺の推理を聞いてからにしてもらおうか」


俺の事を知らないこいつにこれ以上遠慮もへったくれもない言い方をされてはたまらない。ここは1つ、答えあわせという形で俺の精神的負担を軽減しながら相手の狙いを探り出すことにする。


「ふむ、では問おう。我らの計画とは何だ?」

「その前にてめぇは俺を、いや導魂族ってよんでる存在を探してた。そうだろ?」

「その通りだ、というよりは我らの計画は導魂族の存在から立案されたものだ」


ほむほむ、まあそんだけ確認できればもういいか。この野郎が何をしたいのかはわかったし。そして同時に俺の答えも決まった。


「........今完全に合点がいったわ。お前たちは、神を呼び出す気だな?俺を使って」

「........フハハハ!まさか本当に答えにたどり着くとは!ますます君は恐ろしい存在だ、君をガーンズから離れさせることができて本当によかったよ」


........図星かよ、まあこいつは昨日の話でも創造神についてやたらと強調してたからな。だからこそ俺は聞き入れるわけにゃあいかん。何せ神をその身に宿すってのはこの野郎が考えてる以上にリスキーな話だからだ。


「で?何でそんなアホな話を思い付いた?下らない理由であれば当然却下だが、今のてめぇには素直に俺の質問に答える以外の手はないぜ?」


わざと仰々しく手をあげてアサルトアーミーを2人召喚し、攻撃体勢をとらせる。確かにこいつも凄腕の魔法使いだろうが果たして俺たち12595の兵士を相手に1人で生き残れるかね?


「フフフ........そう熱くならずともすべて話すさ。これは君にとっても我にとってもいわば商談、対等な交渉の場だ。君の機嫌を損ねても我には何のメリットもない」

「分かってるじゃねぇか。こっちの司令官はどうやらこっちの参謀共クズのあつまりと違って聡明らしい」


話がわかるのは評価できるが一体こいつの口からどんな話が出てくるか、油断ならないと言わざるを得ないな。


「君も知っていると思うが、この戦争は300年にわたり果てしない泥沼の戦いを繰り広げてきた。それは月日をかければかけるほど醜悪な欲望にまみれた意義なき戦いとなっていった」


こいつもこの戦争は一部の戦争で儲けられるやつの手で仕組まれてるって事を知ってるらしい。だがそんなさわりの話から始めるとは一体何のつもりなんだ?


「最早この戦争は人の手では止められない、欲望渦巻く人の手では。ならば、我らより上位の存在があればいい」

「......それが神だって?」

「その通りだ、人の手で起こされた罪の権化は神によって裁かれるべきだ」

「ふざけた戯れ言を........宗教家気取りか?あ?」


何を言い出すかと思えば。まさか頭の中はお花畑とはな、これならテキトーに騙くらかして無理だとわからせた方がいいか?


「我とて最初から神を信じていたわけではない。この計画はすべて1冊の書物から始まったのだ」

「書物だと........?」

「いかにも。我が父の蔵書の中に紛れていたそれは、導魂族についてまとめられていたものだった。読めば読むほど飲み込まれたよ。そこにはこの世界の起源から魔法がいかなるものか、すべてが記されていた。どうやらこの世界に移ってきた導魂族の1人が書き記したもののようだった」

「そんなもん書いてるのがいるたぁ驚きだぜ」


まるで俺たちが滅んで別の知的生命体が現れるのを予見していたから書いたような物だな。そいつには会えるなら会ってみたいね。

........しかし変だな。普通その書物ってのだけでこんな荒唐無稽な計画を立案してなおかつ実行に移すなんてするか?


「まさかその書物1つを鵜呑みにしたって訳じゃねえよな?」

「もちろんだとも。........これはごく少数のこの国の起源を知る者しか知らぬことだが、この国にはほんの100年前まで導魂族がいたのだ」

「........!?」


こいつぁぶったまげた、まさか俺以外にも最近まで生きてた同胞がいたとはな。俺みたいに不死の身体を持つには気の遠くなるほどの魂をその身に取り込む必要があるのだが、俺以外にもそんなやつがいたとはな。


「その者はハンクという。彼は以前から不死の身体とその圧倒的なカリスマで我がウィーズの頂点に立っていた。そして国の大事の際、その不死の身体を以て神を宿し、たった1発の魔法で巨大なクレーターを作った」

「........どっかで聞いた話だ」


てかあれだな、ゴッドクレーターの話のまんまじゃん。神降ろしを実行したもんがこさえたクレーターを偶然にもゴッドクレーターなんて名付けるとは不思議なもんだな。


「なるほどな。最初に本で情報を得て、それを裏付ける存在を知ったてめぇはこの計画を思いついたと」

「その通りだ、そして我は君のような存在を見つけるために『獣おろし』を作ったのだ」

「何........?」

「『獣おろし』の最大の任務は君のような者を見つけ出すことだった。最も、カメルが君を見つけ出してくれたお陰であとがスムーズになったがね」


........まさか『獣おろし』の連中がたびたび言ってた主だの親だのって言い回しはホントにそのまんまだったとはな。........どうやってるのか興味があるが、多分教えてくれないだろうから聴かないことにした。


ーーーーーー


........まあなんにせよ収穫は上々だ。次はこっちの番だな。


「さて、と。聞きたいことはだいたい聞いた、次は俺の話だ。聞きたいことは?」

「当然、君が我らに協力するか否かということだ」


まあそうなるわな。そのために俺をわざわざこんなとこまで連れてきたんだからよ。


「結論から言えば却下だ。例えどんなに報酬を積まれようとも俺はてめぇの計画とやらに協力する気はない」

「........理由を聞いても?」


思ったよりは淡々とした反応をされた。別にできる計画と思ってなかったのか、それともまだ隠し玉があるから問題ないとでもいうつもりか。


「まず、俺たちにとって魂とはいわば記憶を有した生命エネルギーを生産する永久機関であり、肉体はそれを有形の状態にする器のような存在だ」

「ふむ........」


興味深い話だと言わんばかりに耳を傾けるマクリル。その目は知識を貪欲に吸収使用とする学者のような感じだった。........まあその手のことに興味があるやつには面白い話かもしれんわな。


「神をその身に宿すには俺たちのように魂を吸収する力の他に、不老の身体を持っていることが条件だった。もちろんそれでもすべてうまくいくわけじゃあなかったがな」

「........」

「俺たちは魂を吸収するごとにその器である身体を保つべく耐久性をあげることができた。そしてそれが一定のレベルに達すると身体は年月で崩壊することがなくなる。それが俺たちの不老のなりかただ」

「実に興味深い、我はそこまで考えがおよばなんだ」


適当に要所で相づちをうってくる。こいつの聞き上手っぷりは油断してると余計なことまでしゃべりそうだから気をつけにゃならん。


「さて、俺たちの神降ろしってのは正確には神の情報と力を有した神の魂を身に宿すことだ。だがよ、神の魂ってのはそんじゃそこらの魂とは比べ物にならんほど強い。そんなもんを身体に宿そうとすれば当然身体にかかる負荷も大きい、つまり早死にするって訳だ」

「ふむ、つまり不老の身体を持つことによって神を宿すリスクを軽減する必要があると」

「理解が速いな、そういうことだ。だがよ、負荷ってのは何も身体にしかかからない訳じゃねぇ。むしろ重大なのは精神の方だ」

「........?」

「これは経験してねぇから確かなことは言えねえが、神は宿ったとき、そいつの肉体を奪おうとするらしい。その中で肉体の本来の持ち主の精神を蝕んで肉体を乗っ取る」

「........君が恐れるのはそういうことだね?」

「そうだ。かつて俺の近くにも1人、神を宿すことができたやつがいたが、そいつは自分を失うのが怖くて神と戦い、挙げ句の果てに狂い死にしちまったよ」

「........ほお」

「てなわけでお断りだ。俺はてめぇらのために自分を失ってまで協力する義理はねぇよ」


........あの様はすさまじかった。普段は燃えカスのように動きもせずに沈黙するだけだったが、唐突にのたうち回ったり辺りを攻撃したりとエライことになっていた。

「助けてくれ」と呪詛をばらまきながら苦しみ続けたそいつは、神を宿してから1週間で自我を失い死んだ。意気揚々と神を宿した者が最後に神を恨みながら死んだのは、幼かった俺の脳裏にいまだ焼き付いている。


「........残念だよ、我の計画には賛同してくれないとは」

「どうする、俺を殺すか?」

「........今君を殺すには我1人では力不足だ。そもそも、君は殺してしまうには惜しすぎる。ならば........」


次の瞬間、俺めがけて何かが発射された。当たったところまでは何とか見えていたが、とっさの出来事過ぎて避けきれずに腕に被弾する。するとその部分に一瞬だけ締め付けるような痛みを感じた。慌てて袖をまくり確認するとその部分には黒い帯状の印がついていた。


「飼い殺しにするまでだ」

「貴様ァ........!」

「死にはしない。それはいわば首輪のようなものだ」

「何だと?」

「君にはこの町のなかでのみ自由を与えよう。だが君は我々の監視下におかれていることを忘れるな?」

「........かーっ!この俺に首輪なんてもんを着けたのはてめぇが初めてだよ。覚えとけバカ野郎!」


これ以上話すことはないと思い、捨て台詞を吐いて部屋から出ていく。........くそ、どうしたもんかなぁ、これから。








ここで語る魂の定義とかはすべて私の妄想です。真に受ける方がいるとは思えませんが念のために。

それではこの辺で失礼します

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