傭兵のトラウマ
50回目です。読んでくださる皆さんがいるからここまで来れました、ありがとうございます!これからもよろしくお願いします。
今回は少しばかり台詞が多めです。........考えてることを文章に起こすのは大変ですね、お陰でレポートもはかどりません。
それではどうかお付き合いくださいませ
「さて、君に来てもらったのは他でもない。君に頼みがあるからだ」
時は少しだけ流れ時刻は夕時、ちょうど晩飯を作り始める時間だ。そんな時間に俺は何をしているかと言えば、マクリルとその部下とで長いテーブルを囲って座っている。これまた豪奢な部屋で不思議と肩を竦めてしまう。
........メンツはお誕生日席のポジションに俺とマクリルが向かい合う形で、右側にはかつて会ったメガネのひょろ長い男にウィンゴ、左側にはこれまたかつて会ったチャイナ服の女と外套とフードで全身をすっぽり隠した人物がいた。........なんかどっかで会ったことある気がするな、このフード。
「やって欲しいこと、ねぇ」
「その前に我は君に話すことがある。我々の目的と、君の正体についてだ」
「........何だと?」
今なんて言った?俺の正体だと?何でこの野郎が知ってるってんだよ。
「少し長くなる。何せ分かりやすく説明するにはこの世界の起源まで遡る必要があるのだ」
「長い話は嫌いじゃねぇが、退屈する話は嫌いだぜ?」
「貴様!お館様になんという無礼を!」
「よいウィンゴ。いい機会だ、お前たちも聞いておきなさい。『獣おろし』とは何か、まだすべてを語ってはいなかっただろう?」
「........了解」
こうして俺達は、マクリルの長い長い話に耳を傾け始めた。
ーーーーーー
「君の世界には我々と同じ種族がいるな?」
「そうだな、というか俺がそれだ」
「........まあいい。君の世界にはかつて人間よりも前により優れた種族が存在した。その種族は魂を導き互いに助け合うことで完全平和を実現した、いわば我々の上位種にあたる」
「我はこの種族を導魂族と名付けた。彼らの文明を調べれば調べるほど、彼らは我々よりも優れていることが証明された」
「ほう、で?」
「しかし彼らは人間が足元にも及ばないほどの力を持っていたにも関わらず、ある時に現れた種族に滅ぼされてしまった」
「........マクリル様、その種族とは?」
ひょろ長いメガネが口を挟む。どうやらこいつらにとっても初めての話だったようだ。
「........人間だ。正確に言えば人間の祖先である原人たちに、だ」
「........」
........何だろう、どことなく違和感を感じる。何がとはわからないが。
「さて、我が注目したのは導魂族の持っていた力だ。彼らは数こそ少なかったものの我々にはない力を持っていた。それが魂を導く力だ」
「彼らはその力を使って他の者とより密接に結び付いて強固な絆を形成した。中でも強い者は死者とすら繋がることができたという」
「........っ」
どっかで聞いたな、そんな話。........それはそうと今日はあちぃな、汗が垂れてきたぞ。
「そして驚くべきことに........彼らはその身に全知全能の創造神を宿すことができたという」
全員が驚愕の顔を浮かべる。全知全能の創造神なんてのがいるって話から信用しづらいんだが、それを宿すなんて荒唐無稽の話をされても困る。
「........そんな話に大人しく付き合えと?笑わせるじゃねぇか、あ?」
「まあ待て、これからだ」
........すごく聞きたくない。聞いたら何かしらが壊れるような気がする。この言い様のない不安感はなんだ?
「神と俗世のインターフェースとして、神と盟友と言ってもいい関係を築いた導魂族は原人たちに滅ぼされる間際に神に願った。『我々のための世界が欲しい』と。そして神はその願いに応えた」
なるほど、話の流れ的にそれがこの世界って訳か。
「後はここにいる君たちならわかるだろう?以上がこの世界の起源、導魂族、創造神についてのこれから話すことの前提だ。これを踏まえて本題に入らせてもらおう」
........頭がいたい、心なしか吐き気もする。俺の中のあらゆる機関が警告を発しているような感じだ。ここから今すぐ立ち去れ、話を聞くなとでも言うように........。
「さて、斬崎刃人君。君は己をなんだと思う?」
「........何?」
「君は、一体何者かな?」
「........俺は人間斬崎刃人だ。紛れもなくな」
思わず言葉に力がこもる。しんどい、痛い、辛い........。なんだ、何が起こってる?
「果たしてそう思うか?君の中の数多の死者の魂、誰にでも好かれる異常なカリスマ、常人にはどうあがいてもたどり着けない戦闘技術、どれをとっても君は人間ではないという結論にたどり着くのが自然だ」
「........何が言いたい?」
ヤバい、なんか嫌な汗がにじんできた。吐き気や頭痛も強くなってる。早く終われ、俺を解放してくれ!
「忘れてしまったのかはたまた思い出すのを避けているのか........だが君は認める必要があると知るべきだ」
「........やめろ」
何かが頭のなかを過った。ちらっと頭のなかで見えただけなのにとても不快に感じる。 食事中に汚物を見かけた感じがする。........気持ち悪い。
「........君には酷かもしr...」
「黙りやがれ!そんな戯言なんざ聞きたかねぇ!」
たまらずテーブルをグーで殴りながら立ち上がり怒鳴る。力を込めすぎたのかテーブルには穴が開いていた。とにかくここから立ち去らなければ、俺の精神が限界まで汚染されかねない。........何を根拠にマクリルがそこまで辿り着いたのかは知らないが、今ここで真実を突き付けられれば否が応でも思い出しちまう。あのおぞましい記憶を........。
「........ウィンゴ」
「はっ!」
マクリルの一声でウィンゴが動く。一瞬の内に立ち上がった俺の背後に回り込んで羽交い締めにしてくる。くそ、振りほどけん。
「我らは君が本当に探している人物かを知る必要がある。斬崎刃人........」
やめろ........やめろやめろやめろ!言うなぁ!
「........君は人間ではないな?」
ーーーーーー
「........ぁ」
言われた、バレた、人間じゃないと。かつて何度も聞いた言葉だ、俺を苛み俺のトラウマを幾度となく掘り起こしたたった1行の文章。........嫌だ、もう思い出したくない。ガキの頃のトラウマは、人間ではないと思い知る度に俺の中を駆け巡り蝕んだ。
「........もう一度言おう、君は人間ではなく導魂族だ、間違いないな?」
「........ぁ........ぅあ」
「ふむ、気絶一歩手前か。どうやら書物に記された以上の惨劇があったようだ」
マクリルの野郎がなんか言ってるがよく聞き取れない。体が痛い、気持ち悪い、悲しい。
「........お師匠、この場はあたしに預からせてください」
それまで静かだったフードのヤツが喋りだす。どことなく焦った口調のその声は聞き覚えがあった。しかし、極度のストレスから正常な判断ができなくなっている俺には、それが誰だかを考える余裕はなかった。
「........どうすると?」
「このままでは話は続けられないどころか精神崩壊すらしかねません。あたしが何とかして見せます」
「........任せよう」
「マクリル様!この子は........」
何やらもめだしたな........ぁ........。
「........おい、気絶したぞ」
「トラウマだけで気絶するとは、どんなものか興味がありますね」
「まあ仕方ないんじゃない?私たちよりもずっと長生きだって言うし。........それよりマクリル様、ホントにこの子に任せるんですか?」
「うっさい!あたしに文句あるのか!?」
「ちょ、突っかからないでよ。冗談よ、可愛い顔が台無しよ?」
「かわっ....!変なこと言うなレズ野郎!」
「違うわよ?私は野郎じゃないし、百合って言ってちょうだい」
「何が違うというのか........」
「あーもうめんどくせぇ!お師匠!いいですよね!?」
「........任せるが、1つ聞いておこう」
「はい?」
「君は我を裏切るか?」
「........お師匠の弟子であるあたしは、お師匠を裏切れませんよ」
「ならいい。速く連れていってやりたまえ」
「わかりました、おいウィンゴ!手伝え!」
「........聞こえている」
「........騒々しい女ですな」
「可愛いと思わない?」
「そこ、うっさい!」
これは斬崎刃人が気絶してからの会話である。
いかがでしたか?これが私の妄想の産物です。もう大学生なのに何考えてるのさ私........。
それではこの辺で失礼します




