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傭兵in異世界  作者: キリサキ隊長
傭兵の戦
49/86

傭兵、ウィーズへ

話をどこで切るべきか悩む。あんまり細切れにするとグダグダになるんですよね。

というわけで、お付き合いくださいませ

「........無視か」


でかい声で呼び掛けたのに誰も出てこない。障壁の先は霧が立ち込めたように霞んでいて中が見通せないのでここで待つしかないのだが、誰も出てこないと非常に困る。........やっぱ嵌められたか?


「うぉー........」

「聞こえている」

「!!」


いきなり声をかけられた、後ろから。何かと思って振り向くとそこには1人の初老の男がいた。頭は白いがふさふさで、目付きの鋭い老人はその貫禄のすごさも相まって只者ではない雰囲気を辺りに漂わせている。纏っているローブ?も一般兵の物よりもいいものであるのは一目瞭然だ。さぞかし位の高いやつだろう。


「斬崎刃人で間違いないか?」

「さっき名乗っただろうが。耳掃除はしてるか?」

「フッ、これは手厳しい。中に入れ」


促されるまま歩き出す。驚いたことに今まで砲弾だろうがなんだろうが何1つ通さなかった障壁はまるで水面のように波打つだけで、俺が入るのを拒みはしなかった。


「........なんと」


入った先はまあ、おおむね想像していた通りだった。機械を持たないウィーズの明かりは松明で、3角形のテントがあちこちに張られている。だが異様な点が1つあった。


「少なすぎる」

「もう気づくのか。聞いた通りの洞察力だ」


今回攻め寄せてきたウィーズ軍の兵力は80000~90000と聞いていたが、この中にはどう見てもそれだけの数がいない。気配があまりにも少ない、恐らく100いるかどうかといったところか。


「ここには必要最低限の人員が常駐しているだけだ。兵が必要なら本国から直接転移魔法で呼び出すようにしている」


なるほど、そりゃ理に敵ってる。道理で粘れるわけだ。

そうして辺りを観察しながらしばらく歩くと、中央に出たのかテントに囲まれた広場に出てきた。周りにはさっきの気配の主達であろう魔法使い達が整列している。........どいつもこいつもその辺のヤツとは纏っている気迫が違う。降った兵士をホームグラウンドで見ても警戒を解かない百戦錬磨の強者達だ。


「........思った通り100ちょっとか。なあじいさんよ、俺がこれを見て暴れだすとは考えないのか?」

「確かに君と君の中の12594の強者は手強いだろう。だが、気づいている通りここに集うのは我が国が誇る精鋭達だ。その狙いがすべて君に向けられるとわかっていてなおそんなことが出来ると?」


........何でこいつはこんなに俺のことに詳しいんだろうか。俺の中にどれだけの魂があるかを話したことはあまりないし、俺を殺せば勝ちってとこまで知ってるなんて。


「........それもそうだ。ここで賭けに出ても仕方ねえし、ここでお前らを全滅させたらそれはそれでホントにウィーズから大軍が押し寄せてくるだろうなか」

「そこまで考えるか、ますます気に入ったよ」


何が楽しいのか笑い出す白髪のじいさん。それにつられるように周りも静かに笑い出す。........間違いない、こいつが指揮官か。


「自己紹介がまだだったな。我はマクリル、ウィーズ国軍総司令官である」

「........マジかよ」


予想以上の大物っぷりに動揺を隠せない。まさか総司令官自ら陣の外でお出迎えとはな、大した肝っ玉だぜ。........ん、マクリルってどっかで聞いたな?あ、確か来訪者について知ってるってやつがそんな名前だったっけ。後で聞いてみるか。


「早速だが我らが君を........」

「おっと、その前にお前達がここから引き払うのが先だ。いつまでも居座られたんじゃたまらん」

「........なぜ君がそれを求める?単なる傭兵がなぜガーンズにそこまで義理立てをする?」

「あー、半ば裏切る形で出てきたからな。これくらいはしとかないと夢見が悪そうで嫌なんだよ」

「ふむ、承知した。全員に告ぐ!直ちに撤収の準備をせよ!」

「「「はっ!」」」


見てくれからは想像できないようなでかい声で指示を飛ばすと、テキパキとした手つきで作業を始める兵士たち。........よく訓練されてら、大した統率力だ。

そうして10分ほどで作業が完了し、辺りには整列する兵士と1ヶ所に集められた資材以外は更地になった。遠巻きに見ていたが物を宙に浮かせたりして非常に効率よく作業を進めていた。........やっぱ魔法って反則だわ。


「マクリル様!準備完了いたしました!」

「ご苦労。あとは我がやる、そこを動くな」

「了解!」


報告をした兵士がきびきびと隊列の中に下がっていく。おまけに兵士に慕われる司令官らしい。........不覚にも、俺も見習わなければと思ってしまった。何が不覚なのかはわからんが。

すると今度はマクリルが手を合わせて何かを呟き始めるが、近くにいても何を言ってるのかは聞き取れない。これが呪文ってやつか?

唱えること1分、足元が青白く光だし魔方陣が浮かぶ。丁度ネクロを助けた連中が出してたあれだが、規模が圧倒的に違う。転移魔法ってのがどれほどの難易度かは知らないが、単純に考えたらこのマクリルという魔法使いはとんでもない実力の持ち主だろう。........むやみに暴れなくてよかった。


「では参ろう。我々の祖国へ!」


青白い光が強くなり、視界が塗りつぶされた。


ーーーーーー


「ようこそ斬崎刃人、我が国ウィーズへ!」

「う........くぅ…...」


マクリルの声を聞いて我に帰る。どうやら強い光で一時的に視覚が使えなくなっているようだ。陣笠のお陰で目を開けていても大したダメージはないものの、やっぱり防ぎきれなかった。目を閉じたり開けたりして目を慣らしていると、段々と周りの様子が見えてくる。


「いかがかな我が国は」

「........まだ何も見てねぇだろ」

「それもそうか、だが時期にわかるだろう」


転移した先もまた広場だった。しかしそこかしこにウィーズ兵がいて、軍の施設であることは間違いない。辺りを見ればすでに資材を片付け始める兵士がいた。


「君はこちらだ、ついてこい」


マクリルに促され歩き出す。軍の敷地の中を2、3度曲がって抜け出すと、大通りに出た。城下町みたいな町並みの向こうの方にでかい建物があるのが見えた。見た目はター○・マハルみたいな感じなんだが、はるかに大きくごちゃごちゃしていた。........ご立派だこと。


「もしかしてあれ?」

「その通りだ、我が軍の参謀本部である」


立派過ぎだろ!こんなビジュアル重視の軍の施設なんて初めて見たわ!


「行くぞ」

「あっ、おい待てや!」


声をかけられると早くも人混みに消えかけるマクリルがいた。見失わないようになんとかついていくのが精一杯だったぜ。


ーーーーーー


「ここが君の部屋だ、好きに使ってくれ」

「........は?」

「次に呼びに来るまではここから出ないように、以上だ」

「........いやちょっと待て」

「なんだ」

「俺捕虜だよな?」

「そうだが?」

「普通は独房行きじゃね?」

「何か不満があると?」

「........いいや、何でもねぇ」

「では後程」


部屋から出ていくマクリルを眺めながら俺はあてがわれた部屋を眺める。別に文句がある訳じゃない、異常な事態だけに驚いているのだ。


『........すげえなこりゃ』

『え?ホテル?』

『ずいぶん厚待遇な捕虜だな』

(........どういうことなの?)


仲間もずいぶんと戸惑っているが無理もない。なんせ俺達は貴族の部屋みたいなのに通されたのだ。

自慢できる話じゃないが、捕虜になった経験も1度や2度じゃない。その度に拷問にかけられたりガチホモと一緒の牢屋に入れられたりと偉い目にあってきたが、ここまでの環境は初めてだ。

床一面に敷き詰められた絨毯に天井にはでっかいシャンデリア、ベッドは天蓋付きでその辺にある椅子とテーブルにはお茶の用意が出来ている。まるで状況が飲み込めないが、これじゃウィーズに観光に来たのとそう大差ないと思う。........もしかしてあれか、処刑直前は食事が豪華になる的なあれか。これからやっぱり公開処刑か。


「ま、慌てても仕方ねぇよな」


熟考のすえ、とりあえずはゆっくりすることにした。一通り部屋を調べて特に何もないらしいので。

背負っていたコンテナをおろす。一気に肩が楽になり、思わず顔が緩む。


「........ん?」


よくわからん違和感を感じ、コンテナを見る。........かすかにだがカタカタと震えている。中で爆薬でも爆発したか?なんて、思ってるといきなりコンテナが開き中から何か出てきた。


「きゅ!」

「........え?嘘!?」


出てきたのは仙里だった。野郎いつの間に........まるで気づかなかったぞ。だが同時に嬉しくもある。完全にアウェーなこの場において仲間がいるのはありがたい。正確にはモフモフがありがたい。


『俺達じゃ不足だってのか!』

『着ぐるみ着れば解決だね!』

(お前らだと温もりとモフモフがセットにならないんだもん。やだよ)

『あ~~んまぁりだぁ~~!』


俺の心のうちはわかってるはずなのにぼやきだす仲間に突っ込みを入れながら笑う。

とりあえずは楽しくやれそうだ。何事も前向きにってやつだぜ!


捕虜になってもマイペース、それが傭兵斬崎刃人。

次回あたり核心に触れるかも、お楽しみに!

それではこの辺で失礼します

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