傭兵たちの訪問者
仙里と大将が空気だったので半ば無理やり気味に出しました。
それではどうかお付き合いくださいませ
「ふぅあ゛~........暇だなぁ」
戦場においてあまりにも間の抜けた声が出るが、正直仕方ない。暇なんだから。
「やっと頭の固い参謀方もまともに動き出したし、もう今回は御役御免か?」
ウィーズ侵攻から1週間がたった。ホントに激戦だったのは最初の2日ぐらいで、それからは迫撃砲とドローンを使って半自動で敵部隊を迎撃する体制を整えたために、人員は周りで睨みを利かせてこれ以上の侵攻を妨害する戦法に切り替えた。ホームグラウンドだからできる一種の兵糧攻めである。
効果が出てきたのか、最近は出てくる部隊もめっきり減って俺たち実戦部隊はたまに出てくる部隊を追い払い、伏兵の有無を確認するくらいである。故にこうやってドデカイ欠伸をかます程度の余裕があるわけだ。
「........眠い」
........こうやって草原に寝っ転がって青い空を眺めてると非常に眠くなる。耳をすませばゴッドクレーターの方からかすかに戦闘の音がするんだが、それがとても遠い世界でやってるかのような錯覚に陥る。仲間も特になにも言わないし、........寝るかぁ。
........ぽふ
「........?」
何だ?何かが俺の上に乗っかっている。特に害はないらしく、身体に異常はない。あるのは何かが乗っているってだけだ。
ぽふ、ぽふ
「........ぬぅ」
跳びはね出したらしいので、生き物であることは間違いない。が、軽過ぎてどうも何が乗っかってるかイメージしずらい。目を開けてみればすべて解決する話なんだが、なんか負けた気がする。好奇心vs眠気である。
「きゅ~!」
「........!?」
今度は聞き覚えのある声がする。........あれー、お前は確か置いてきたはずなんだけど?好奇心が押さえきれず、目を開ける。
「きゅ!」
「何でお前がいんのさ........仙里」
そこには下宿先に置いてきたはずの仙狐の仙里がいた。でかい尻尾とつぶらな瞳が可愛らしいし、相変わらずモフモフである。........それにしてもどうやってここまで来たんだ?首都からここまでは歩くには少しばかし距離があるんだが?
「........誰かが連れてきたんだろうな」
「きゅ?」
「聞きにいくか」
「きゅー!」
俺は立ち上がり、陣のテントに向かって歩き出した。その間、久しぶりのモフモフを堪能しまくったのは言うまでもない。
ーーーーー
「うぉーい、誰かいるか~?」
「「いませ~ん」」
「何を言ってんだお前たちは........」
テントに入って声をかけると2人分の声が聞こえる。この間延びした声は言うまでもなく桃頭幼女、ニールとネールである。
「あ、仙里だ~」
「貸して~」
「ほれ、落とすなよ?」
「きゅ!?」
「「モッフモフ~♪」」
「他には誰もいないのか?」
「さっきまでイツキとおじちゃんがいた~」
「けどいなくなっちゃった~」
おじちゃん?誰だそれ。軍のお偉いさんでも来てたのかね?........もしかして俺のことか?そうだとしたら探し出して大佐をフォローしなけりゃならんな。
「どこ行くって行ってたか?」
「知らない~」
「ニール代わって~」
「きゅ!きゅー!」
「あんまりいじめてやるなよ?」
「「は~い」」
........ヘタに探しにいくと入れ違いになりそうだな、待ってるか。それにしてもおじちゃんって何者なんだ、気になる。
「なあ、おじちゃんってどんなのだったよ?」
「「え~とね~」」
「黒くてムキムキで~」
「怖い顔だったけど大きな笑い声だった~」
「「あと美味しいお弁当持ってきてくれたの~」」
「弁当?」
「あれ~」
「刃人の分もあるって~」
........どれどれ、こいつか。っておい、弁当箱に味おやじのロゴが入ってんじゃねぇか。ってことは来たのは大将なのか?なら仙里が来たのも納得なんだが........。
それより腹減ってきたな、昼飯には早いが早弁をやっちまうか。........やった!激ウマだぞ!
「........なんだ傭兵、帰ってたのかい?」
「おうあんちゃん!1週間ぶりか?」
入り口から声が下ので見てみると、大佐と大将がいた。........こうして見ると大佐は小さい部類ではないんだが、大将と並ぶと小さく見える。大将は縦も横もでかいからな、仕方ねぇな。
「あれ?2人とも知り合い?」
「ん?ああ、なるほど」
そういえば大佐は大将があの店にいるのを見たことなかったな。そりゃ知らなくても仕方ねぇな。
「あの店はこのおっさんのだぞ?」
「あんちゃんよぉ、事実とはいえおっさんはねぇだろ」
「ええ!?........し、失礼しました元帥殿!うちの部下がご無礼を」
「気にするこたぁねぇよイツキ大佐、むしろこれくらい威勢がよくねぇとな!ガッハハハ!」
「元帥?」
「そういやまともに自己紹介しなかったなぁ。儂はガルシア、10年前までガーンズ軍元帥だったもんだ」
「........何ぃ!?」
大将どころか元帥だったとは、こりゃ大佐もペコペコするわけだわ。
「まあそんなことはどうでもいいんだよ。んで大将、何しに来た?仙里連れてきただけって訳でもねぇだろ?」
「よ、傭兵。少しは言葉を選んでよ」
「だから気にするこたぁねぇよって言ってんじゃろう。お前らにいい知らせがあってな、全員いるなら話ちまうが大丈夫か?」
「........あと一人いねぇんだが?」
「え?誰?」
「キルオン」
「変だなぁ、さっきまでいたのに........」
どうやらキルオンもさっきまでいたらしい。だがどうやらふらふらっと出ていっちまったようだ。........ったくホントに平和だな。........あ。
「おい大佐、いたぞ」
「え?ああ、ホントだ」
「椅子から転げ落ちたんだな、普通起きるだろ」
「起きてキルオン、話があるよ」
「........んぉ~?大佐殿にジント、おはよーさん」
気だるそうに体を起こすキルオン。椅子から転げ落ちたのが今来たらしく、所々身体をさすっている
。そのコント染みたしぐさにクスリときてしまう。
「これで全員か?」
「ええ、お話をお願いします」
ようやく全員が揃って大将の前に並ぶ。........もう馴染んちまったし、これからも大将でいいや。
「........にしても、見れば見るほど部隊らしからぬ顔触れだなぁ。下は6歳から上は5000万以上か?」
「........何で知ってんだ?」
「ごめん傭兵、喋っちゃった」
言いふらすことじゃねぇだろ........
「おう、話がそれたな。そう、いい知らせだ」
「ガルシア殿、いい知らせってのはなんですかね?」
キルオンも余所行きの口調になってる。........確かに元帥っぽいと言われればそうなんだが、俺からすればただの豪快なおっさんなんだがなぁ。
「おう、おめぇたちも頑張ってるのは色んなとっから聞こえてくるからよ、俺からプレゼントをくれてやろうと思ってな」
「色んなとこから聞こえてくんのか」
「後輩どもは変な意地張っていい評価をしねぇがな、前線に出るやつからの評判はいいぞ?」
「後輩って........」
「今の将軍どもだ、全くなんとかならんもんかね?あのバカたちは、さんざん教育したはずだってのに全部出ていっちまってる」
........あれより上に立ってたってのがこんなに気さくな人物とは、いったいどこで何が起きてしまったのか。
「あー、愚痴は店に帰ってから聞くとしてだ。なんだプレゼントって?」
「おう、戦闘ヘリだ」
「「「........は?」」」
「「Zzz........」」
3人の疑問の声と2人のいびきが響く。........お前ら静かだと思ったら寝てたのか。まぁ分からんでもないが。
それにしても元軍の最高位とはいえ一般人が戦闘ヘリを調達してくるとは........
「それから、物資の方も軍に融通を聞かせてあるから好きに使ってやれ。どうせ出し惜しんで腐らせるだけだからな」
「いや、それはありがたいお話ですが........どうやったんですか?」
「いやー案外儂の顔もまだまだ使えるもんだな。ちょっと頼んだらすんなり通ったぜ?」
そう言ってニタリと笑う大将。いや、その笑顔は人を殺すときのもんだろ。そりゃ肝っ玉の小さそうなお偉方はビビって承諾するしかねぇよ。
「言いてぇことはそんだけだ。じゃあな!さっさと終わらせて店を手伝え!」
「あ、ちょ!おい!待てぇ!」
言いたいことだけ言ってのっしのっしと帰っていく大将を無言で見送りながら俺たちはしばらく硬直していた。
「........まあ、よかったね!これで少しは動きやすくなったよ!」
「お、おう。後ろ楯っぽいのができたな」
「........ところで元帥殿、仙里を置いていってんだがどうすんだ?」
「え?あ........」
見ればさっきまで気づかなかったが、終始寝たまんまのニールとネールの間に仙里がいた。なんかうなされてるように身震いをしながら憔悴した寝顔なんだけど。
「まぁこいつはいいだろ。仙狐って賢いらしいし」
「そうか、ならいいか」
仙里の件はこれで一件落着である。........あ。
「そういやその戦闘ヘリとやらはどこにあるの?」
「「........あ」」
「行くよ!大将を追うんだ」
「お、おう!」
「待ってくれ~」
........何が言いたいことはそれだけだ、だ。大事なことが抜けてんじゃねぇかよ!なんて悪態をつきながら俺たちは大将を追いかけた。
後ろ楯を手に入れたところで次回から戦闘再開です。お待ちください
それではこの辺で失礼します




