傭兵たちとクリスマス
滑り込みメリークリスマス!
というわけでクリスマス回です。お楽しみいただければ幸いです。
それではどうかお付き合いくださいませ
「そうか、ホントならもうクリスマスか........」
「ん~?」
「クリスマス~?」
「「なにそれ美味しいの~?」」
持ってたカレンダーで何気なく今は何日かって考えてたら、ちょうどクリスマスだった。まあクリスマスに彼女と過ごすなんて洒落た真似はとてもじゃないが出来ないがな。........だが、あの町全体がどことなく楽しくなる雰囲気は嫌いじゃなかった。
「刃人~」
「無視しないでよ~」
「ん?あぁ悪い。何だって?」
「「クリスマスって何~?」」
そっかこの世界にはクリスマスはないのか。そりゃそうか、キリストのいない世界にクリスマスはできるわけがないわな。
「あー........、クリスマスってのは俺の世界のイエス・キリストってやつが生まれた日だ。その日は世界中の人々がお祝いをするんだ」
「お~」
「お祝いって何するの~?」
........そういえば何するのが正解なんだ?とりあえずクリスマスツリー飾ってケーキが食える行事だと思ってた。
「そうだな........。きっちりやる人もいるが、大概はクリスマスツリーって言う飾り付けした木を飾って美味いものを食うってところか?」
「「美味しいもの!」」
おー、食いついてきたな。それにしてもこいつらホントに食い意地が張ってんな。これから肥満体になるんじゃねーかとひやひやさせる食いっぷりだ。
「刃人~。クリスマスやろ~」
「皆でやろ~」
「「いいでしょ~?」」
「........参加者は自分達で集めてこい」
「行こうネール~」
「やろうニール~」
「「がんばろ~、お~」」
気の抜けたかけ声とともに部屋からダッシュで出ていくゆるふわ系姉妹。........思えば話す前にこうなることを予測しておくべきだったな、失敗したわー。
ーーーーーーー
「「集めてきた~」」
「おう、そうかい」
まあ誰が集まるかなんて考えるまでもないんだが、そこにはやっぱりお馴染みのメンバーが揃っていた。大佐、キルオン、アリス、クレイグ........クレイグ?
「お前さんが参加するとは思わなかったよマジで」
「俺とてそこまで堅物というわけではない。愉快な催し物があるというのなら参加するさ」
「さいですか」
誰がいてもかまわんけどね。むしろ準備をするなら人数がいる方がありがたいぜ。
「ほんじゃ準備を始めるか」
「よくわからないんだけど、そのクリスマスって言うのをやるには何が必要なんだい?」
「とりあえずはクリスマスツリーとケーキってとこだな。........どうせなら晩飯もそれっぽくするか」
「私たちは何をすればいいのでしょう?」
「うぬ。キルオンとクレイグはツリーに使えそうなものを持ってきてくれ。一応クリスマスツリーの絵を描いといたからそれを参考にな。急な話だから最悪、木っぽいものでもいいぞ」
「わかったぞ」
「了解」
そう言って部屋を出ていく2人を見送りながら、次の指示を出す。
「次、お嬢ちゃんとニールとネールとでツリーに使う飾り物を作ってくれ」
「えっと........どんなものがいいんですか?」
「基本的にはこの絵を参考にしてくれてもいいが、もちろん特に縛りはない。ただし、てっぺんにつける星だけは忘れんなよ?」
「わかりました!」
「「お~!」」
意気揚々と部屋を出ていく3人。歩きながら早くも何を作るか議論しているのが微笑ましい。何ができるか楽しみだ。
「........で」
俺は残った最後の1人、大佐に視線を移す。どんな仕事を割り振られるのかとそわそわしている。........すまんな大佐。
「残念だが大佐の仕事はない」
「何でぇ!?」
「上官をこきつかえるわけねぇだろ」
「........本音は?」
「大佐ほど何任せてもなんかやらかしそうなヤツはいないと思う」
「いくらなんでもひどくない?」
だって仕方ないじゃん!大佐に台所を任せたら今夜の晩飯はそのまま兵器課行きだろ。楽しいクリスマスの食卓にバイオ兵器が乗るなんてことはあってはならんよ流石に。........あ、やらせることあった。
「んじゃあ大佐よ。あんたには重要任務を与えるぜ。失敗は許されないぞ?」
「ボクを誰だと思ってるんだい?傭兵」
「いいヤツだがドジな大佐」
「あんまりだよ........。で?中身は?」
「それはだな........」
ゴニョゴニョゴニョっと耳打ちをする。一応サプライズ作戦だからあんまり聞かれたくないしな。
「なるほど。クリスマスっていいものだね」
「だろう?んじゃ、スタンバイよろしく」
「了解したよ」
さて、こっちも始めますか。久しぶりにマジで料理をするなぁ。
ーーーーーーー
「んじゃ........メリークリスマース!」
「「「「「「かんぱ~い!」」」」」」
ところ変わって定食屋『味おやじ』。俺のバイト兼下宿先である。大将は用事かあるから店を開けるとあらかじめ言ってたので、1階の飲食スペースを(無断で)借りた。
部屋にはクリスマスツリーが飾ってある。........なんというか変形しそうなクリスマスツリーだ。
残念ながら木ではなく鉄で出来ているのだが、なかなか完成度が高い。聞けば木は調達出来なかったからわざわざスクラップ置き場に行って鉄屑を加工してきたそうだ。その時のキルオンの口出しっぷりがすごかったらしい。おかげでこのクオリティかと思えば納得だが。
加えてお嬢ちゃんたちが作った飾りも中々のものだ。見た目こそオーソドックスな星だったり長靴だったりだが、その1つ1つが複雑な光を放っている。ちなみにてっぺんの星はミラーボール仕様だ。うーん流石技術畑の人間、その辺のクリスマスツリーとは比べ物にならない出来だ。
「それにしてもこれうまいなー」
「うむ、とても粗野な斬崎刃人が作ったとは思えぬ」
「悪かったな粗野で!」
自分で言うのも何だが、俺の料理もなかなか好評だ。メニューはテーブルの真ん中の大きなチキンとサラダ、それに1人1人の前にあるグラタンである。寒い日にはいいよな、グラタン。
「むぅ........ものすごく悔しい気分だよ」
「お兄さんに負けるなんて........屈辱です」
「お前たちはまず食品を兵器化するのを直せ」
「「じゃあ料理を教えて(くれ・ください)!」」
「そのうちなー」
料理ができないことを嘆くのが2名、確かにあれは放置してたら死人が出そうだ。........しかしこいつらは味噌汁を硫酸に変えるように食品を産業廃棄物に変えるからな、お前ら実はお隣の国の魔法使いだろ?違う?
「うま~」
「美味~」
「「クリスマスってサイコーだね~」」
「わからんでもない。この日が生き甲斐って人もいるからな。特に子供に多いぞ?」
「何で~?」
「美味しいものが食べられるから~?」
「まあそれもあるな」
「「?」」
「まあ、お子様は細かいことは考えずに楽しめってことさ」
「「そうする~」」
こうして夜は更けていき、ひとしきり食ったり歌ったりゲームをしたりで、解散したの日付が変わった頃だった。クレイグは呼び出しがかかったとかで先に帰り、ここには俺と大佐とキルオン、それに疲れたのか眠りこけるアリスとニールとネールがいた。
「んじゃ、オデはアリスちゃんを連れて帰るからな」
「おう、気ぃつけろよ」
「お休みキルオン」
「お休みジント、大佐殿。........アリスちゃん、行くぞ」
「........わたしは~、バインバインに~........なります........」
キルオンとお嬢ちゃんを見送ってる間、俺と大佐はお嬢ちゃんの寝言を聞いて必死に笑いをこらえていた。そんなに気にしてたのか........。
「それじゃボクらも帰るよ。後片付けを押し付けてすまないね」
「手伝う時間があるなら早くその2人を布団に放り込んでやれ。........あとは頼むぞ」
「ん、任せといてよ。完璧にこなしてみせるよ」
「そんじゃまた明日、いや今日か?」
「そうだね。それじゃあまたあとで、かな?」
大佐たちを見送ってから俺はドアを閉めて部屋に向き直る。
「さーて、........面倒くせぇなぁおい」
そこには宴会の証がそのままそっくり残っていた。........ああは言ったけど手伝ってもらえばよかった。
『隊長もずいぶん丸くなったな?』
(そうか?)
不意に頭の中に声が響く。思えばクリスマス会の準備中は何も言ってこなかったな。
『昔のあんたなら幼子2人のためにこんなことはしなかったよ』
『不思議ですね~。ロードオブマーセナリーとまで言われた戦場の英雄が』
(ガタガタ言うな。お前らも後片付け手伝え)
『『『え~~~??』』』
ガタガタ騒ぐ仲間たちを無視して、俺は召喚を開始した。
ーーーーーーー
「ふわぁ~ぁ........ん?」
翌朝、思いの外散らかってた惨状を酒の臭いとともに帰ってきた大将にバレないようにすべく明け方まで奮闘していたため、眠い。眠気のせいなのか、足元が揺れている感じがする。
ドタドタドタドタ........
おお、音までついてるとは........今回の眠気はなかなか手強いな。
「「刃人~!!」」
「ごはぁ!!」
いきなり後ろから衝撃がきた。意識がはっきりしない状態で奇襲を食らった俺は当たり前のように前に倒れる。そんな俺の上で跳び跳ねる桃色頭の幼女2名、やめてください死んでしまいます。ついでにダボダボした袖が頭に当たって地味にこそばゆいのでやめてください。
「朝っぱらから何さね........」
「これ見てこれ~♪」
「起きたらあったの~♪」
といって見せられたのは小さなクマとウシのぬいぐるみ。なかなか愛嬌があるものだ。
「おはよう傭兵。朝から賑やかだね」
「........早くこいつらどけてくれ。昨日食ったもんが口から出そうだ」
マジで逆流しそう........。
「うひー助かったぁ。んで?何だって?」
「起きたら枕元にこれが~」
「寝たときはなかったのに~」
「お前らが寝たのは飯の最中だろうが........」
「「そうでした~」」
「はあ........そいつぁサンタクロースだな」
「「何それ美味しいの~?」」
そのとりあえず美味いかどうか聞くのはやめた方がいいと思うぞ。確かにクリスマスとかサンタクロースって食えそうな名前だと思えなくもないけどよ。
「サンタクロースってのはクリスマスイブ、つまり昨日の夜の間に世界中の良い子にプレゼントを置いていく太っちょなじいさんのことだ」
「プレゼント!」
「良い子!」
「「私たちは良い子なの~?」」
「じゃなきゃサンタはわざわざ異世界に来てお前らにプレゼント置いてったりせんだろ」
「「お~」」
「とりあえずは素直に喜んでおけ」
「「うんそうする~」」
「次はサンタさんに会えるといいね?2人とも?」
「「会えるのかな~?」」
「あ、クリスマスイブの夜にサンタを待ち伏せしてるとプレゼントもらえないぞ?」
「「じゃあイツキはダメだね~」」
「あ、あはは。そうだね........」
乾いた笑いで答える大佐。良い子にしてればもらえると思っているんだろうか。........後でおとなはもらえないって教えてやろうかね?
「「ね~ね~刃人~」」
「何ぞ?」
「「クリスマスって楽しいね~」」
「そうだな。来年も楽しみにしておけ」
「「そうする~」」
「行こうネール~」
「行こうニール~」
ぬいぐるみを抱えながら走り出す2人は、廊下を歩く他の人たちに片っ端からプレゼントを自慢している。喜んでいるようで何よりだ。
「これで成功でいいんだよね?」
「上出来だ大佐。お疲れさん」
「あの子達も6歳の女の子だからね。笑顔が一番かわいいよ」
「同感だ。........それと大佐、ほい」
「え?何?」
俺は大佐の方を向かずにラッピングされた長細い箱を大佐に手渡す。不思議そうな顔をしている。
「残念ながら大人にはサンタは来ないんだよ」
「!?」
「だがな、クリスマスにプレゼントをもらえるのは子供だけでも、そしてあげるのもサンタだけじゃねぇのよ」
「傭兵........」
「今日がホントのクリスマスだ。大佐よ」
「........メリークリスマス、でいいのかな?」
「上出来だ」
顔を会わせずにお互いが静かに笑う。我ながらずいぶん臭い真似をしたもんだ。
「ところでこれなに?」
「酒」
「1人酒をしろって言うのかな?」
「........」
「........ん?」
「わかったよ!付き合えばいいんだろ!?」
「よろしい。それじゃ........今夜を楽しみにしてるよ」
あーあ、大佐に酒なんか渡すんじゃなかったぜ。痛い目にあったことあるはずなのにな、俺ってホントバカ........。
自分で書いてて「なんだこれ........」ってなりました。
え?クリスマス?昨日今日でバイトでしたが何か?(半ギレ
俺もこんなクリスマス会したいです
それではこの辺で失礼します




