傭兵と屍然姫ネクロ
今度はアルファサファイアにハマってました。
ルビサファは世代だったのでつい........
というわけで今回は少し長めです。少し〆方が強引かもしれませんが勘弁してください
それではどうかお付き合いくださいませ
「........」
なんだろう、力が溢れてくる。さっきまでの俺とは比べ物にならないくらいだ。今なら何でもできる、そんな自信に満ち溢れた力だ。
「とりあえず、邪魔だな」
力を込めて俺は絡み付いてる枝を千切る。ビックリしたのはさっきまではびくともしなかった枝が布団を跳ね除けるような感じで千切ることができた。
「........嘘」
「残念だがホントだ」
俺だってこんなどんでん返しにあったら嘘だと思いたくなる。正直自分でもまだ信じられない。死人から力をもらうとかどんなファンタジーだよ?
『聞こえるか?斬崎』
(........おう)
『どうだ?感想は』
(........これなんてチート?)
『だろうな』
仲間の声が聞こえる。頭の中で聞こえたそれは思うことで返事にすることができるらしく、声に出さずとも会話が成立した。
「私を無視しないでよ!」
今度は頭の中からではなく外から声がした。そっちを見るとネクロが顔を真っ赤にしてぷるぷるしていた。........最初のクールさ的なもんはどこにいったんだろうか?
「あなたはワタシのことだけ考えて死ねばいいのよ!」
「お断りだよそんなの!」
「このぉ........エイヤァ!!」
ネクロが突撃をかましてくる。さっきよりも更にスピードたパワーが上がっているようで、紫色のオーラみたいなのを纏っている。だが........。
「見えてるぞ?」
俺には全てが見えていた。相手の攻撃の軌道やタイミング、目線からどこを狙っているかとか。予測するしかなかった要素が全て見えていて次にどんな動きをすれば避けられるか、どんな受け方をすれば完全に防げるのかが脳に鮮明に浮かんでくる。まるで5秒先の未来が見えてるみたいだ。........これがニュータ○プか。
「フッ!テイッ!ハァッ!」
「........」
突きと横薙ぎが極めて変則的に繰り出されるのを、最低限の動きで避ける。見えるのもそうなんだが結構無茶な動きをしているはずなのにきちんと身体がついてくる。今の俺はきっと端から見れば残像が伴ってるんだろうな、特に上半身。荒ぶる上半身........気持ち悪ッ!
「........隙あり!」
「甘い!」
ネクロの一突きを払いのけ、出来た隙を突いてネクロを蹴り飛ばす。少し距離を置くぐらいで蹴ったと思ったのに、思いの外飛んでいったことにビビった。
「ありゃ、すまんなネクロ。ちょいと強すぎた」
「........一体何なのよあなたは。ホントに人間なの?」
「失敬な!紛れもない人間........のはずだ」
「そこは言い切りなさいよ........」
何か呆れられた。俺だって人間ですよ少なくともさっきまでは........何か不安になってきた。
(なあ........俺って人間じゃねーの?)
『人間である保証は出来ないよ』
『少なくともスペックは化け物だ』
『『『全くだよ』』』
仲間からも人間だと言ってもらえなかった。.......流石にこれは凹む。味方は万を越すかってくらいいるはずなのになんだ?このとんでもないアウェー感。
『........ァァァアア』
「!」
どっかで聞いたことのあるうめき声。見ればそこら中に土くれゾンビが出てきていた。ゾンビの壁の向こう側ではネクロが青く光る手を身体に当てている。ゲーム的に言えばありゃ治癒魔法ってやつか?
「........なんて考えてる場合じゃねーな。どうすっかなぁ........」
放っておけばネクロは全快する。かといってこのうじゃうじゃいるゾンビの壁を無視するわけにもいかない。しかし排除するには数が多すぎて時間がない。
『多いな』
『おまけにキモいと来たもんだ』
(どうしたもんかね?)
『簡単さ』
(何?)
『俺たちの姿を強く念じろ』
『覚えてるだろ?俺らがどんななりをしていたかは』
(........やってみるか)
目を閉じて仲間の姿を思い浮かべる。とりあえず10人ほど思い浮かべてみたら、やがて俺の身体から何かが絞り出される感覚がした。それと同時に気配が増える。やがて気配が10増えて、それ以降は何も起きなくなった。
(........まさか、マジかよ!?)
目を開けて視界を確保する。するとそこには信じられないものがあった。
「........お前たち」
『よう斬崎、久しいな』
『隊長、再び戦場で会えて光栄です!』
『オラ刃人!さっさと片付けっぞ!』
そこには死んだはずの仲間がいた。身体が青く薄い光を放っている以外は至って普通な、最後に見た姿のままで俺の目の前に立っていた。よく見るとかつては敵として戦場で戦ったことがある者もいた。........何となく思い描いたんだがなぁ。一体俺の中にはどれだけの魂がいるんだよ。
『驚いたでしょ?』
『言ったろう?力を貸すとな』
『いわば私たちは魂が具現化した状態です』
『その気になれば貴様の中に渦巻く12594人の魂を1度に解放できるぞ』
『我らはこれよりお主の理想を支える矛となり、盾となろう』
『今の君は例えるなら一人の軍隊だ』
『さあ斬崎刃人!指示をくれ!指揮官はあんただ』
こんなに嬉しいことはない。これほど心強いことはない。今、俺の中には迷いも焦りも何もない。あるのは勝利の確信だけである。
「お前たちはこのバケモンを殲滅してくれ。その間に俺が本体を叩く!」
『『『イエッサー!』』』
「行くぞ野郎共ォ!」
『『『オオーー!!』』』
『『『野郎じゃないのもいるけどオオーー♪』』』
俺を含めた近接武器を使う者は突っ込み、飛び道具が得物の者は援護射撃をかける。驚いたことに、俺と肩を並べて戦ったことがない者がいるのに10人の味方は最高の連携を以て俺を援護してくれている。
ものすごい勢いでゾンビの壁が蹴散らされていく。所々にロケット弾が撃ち込まれたり、グレネードが投げ込まれたりする。他に目を向ければナイフで急所を的確に刺していくやつもいるし果てには素手で殴って爆砕するやつまでいる。
かくいう俺は、太刀からフレアブレードに持ち替えて目の前の敵をバラしていく。握って加熱するのだが、俺がおかしくなったせいか今は刀身が異常なまでに赤熱している。お陰でゾンビに刀身を当てて力を込めるだけでスッパリ斬れる。........こりゃ帰ったら何が出来るのかを探るのに時間がかかりそうだ。
ゾンビの壁が目の前から消え失せ、ネクロの姿が出てくる。どうやら壁を貫通したようだ。相手の方は俺の姿に驚いたようだが、瞬時に頭を切り替えてこちらを迎撃する構えをとる。........てか、華奢な女の子が錫杖をフルスイングって聞いたことねぇぞ!?それに飛んでるのにどうやって踏ん張ってんの?
「........!」
「セイッ!」
鋭い掛け声と共に錫杖が振られる。だが、俺にはあらかじめ見えていた。
フレアブレードを2本とも後ろに投げ捨て、スライディングの要領で下に入る。錫杖はとても華奢なネクロが振るったとは思えないくらい豪快な音を立てて空を切った。
「あ........」
「悪いな、俺たちの........勝ちだ 」
そのまま俺はネクロの足元と翼に、持ち替えたハンドガンで弾を撃ち込んだ。
ーーーーーーー
「うっ…くぅ........」
「さて、俺の勝ちだな」
ネクロに声をかける。足から血が出ているのは見てわかるが、急所は外したし死ぬような傷ではない。それに死んでもらっては困る。
「さて、お前さんには捕虜になってもらおうか。たっぷり知ってることを聞かせてもらうぞ?」
「ハァ........。わかったわよ、降参します。あとは好きにして」
「物分かりがよくて助かるぜ」
手をさしのべる。流石に足を負傷してるやつに歩けとは言えない。ネクロが手をつかんだその時、それは唐突に現れた。
「!?」
行きなりその場から弾き飛ばされる。まるで予想だにしなかったために盛大にしりもちをついてしまった。見ればネクロの足元に紫に光る魔方陣が浮かび上がっていた。しかし、ネクロ自身も何が起きたか把握できてないらしく戸惑っている。そして徐々に人の形がそこに現れてきた。
「ネクロちゃん大丈夫?」
「あ、あなたたち........」
「........救いに...来たぞ........」
「........フム」
数は3人、男が2人に女が1人。どいつもこいつも一筋縄ではいかない強さなのはこの空間にいるだけでひしひしと伝わってくる。
『........』
「やめろ」
仲間が銃をかまえるが、俺はその武器をおろさせる。流石にここで3人相手にするのは得策ではない。それに彼らは戦いに来たと言うわけでもなさそうだ。
「賢明な判断ですよ、斬崎刃人」
出てきてからずっとこっちを見ていた白髪の眼鏡の男が言葉を放つ。その風貌からは戦う者と言うよりは研究者といった方が正しいかもしれない。
「俺を知ってるってことは........貴様らも『獣おろし』だな?」
「いかにも........」
今度はデカイ男が静かに、それでいて凄みのある声で答える。ウォーガーと同じくらいのでかさだが、ヤツと違うのはとても軽装なことだ。ピッチピチのタンクトップにジーパンである。
「睨まないでちょうだい。今のところは坊やに何かしようって訳ではないのよ」
坊や呼ばわりかそうですか。このチャイナ服的な格好の女は次会ったら本気で殴る。
「なるほど、覚醒したのですか........。これはあの方もお喜びになるでしょう」
「........捕まえるか?」
「いえ、今はネクロさんを逃がすのが先です」
敵の前で作戦会議とはずいぶん余裕じゃないかね?
「おいおい、俺たちはそいつに聞きたいことがあるんだがね?」
「残念だけど、質問タイムは受け付けてないのよ」
足元に再び魔方陣が浮かび上がる。同時に半透明の壁が展開され、俺たちには手出しができなくなる。........悔しいが、今回は指をくわえて見てるしかないか。
「........そうですね。勝者に何もないと言うのは失礼なので、少し情報を与えましょう」
「何だと?」
「我らは近く........ガーンズに侵攻する」
「目標は首都キューカズ。成功すれば私たちの勝ちだし、ホントは奇襲をかけるつもりだったのだけどね」
「........」
嘘かホントか、ここでは計り切れん。これは持ち帰って大佐に報告すべきだな。
「........あのお方とはなんだ?」
「私たち『獣おろし』の父であり、主であるものです。そして、この世界におけるあなたの存在の鍵を握る人物です」
「じゃあ何か?俺がここにいるのはそいつのせいだってのか?」
「当たらずとも........遠からじ、だな........」
魔方陣の光が更に強くなる。こうして敵を見送るしかできないのがなんとも歯がゆい。
「それじゃあ傭兵さん、また会いましょう?」
「刃人、次は私のものにしてあげるからね........」
一瞬だけ強い光を放って、魔方陣と共に4人の姿は消えた。
『........なぜ撃たなかった?』
「むやみに引き金は引けねぇよ」
『そうか........では俺たちは貴様の中に戻ろう』
「おう、諸君らの活躍に感謝する」
そう言って目を閉じて、再び目を開けたらそこは俺だけになっていた。
「さぁて、帰るか!」
『『『オオーー!』』』
そうして俺たちは来た道をたどって撤収した。
(........俺はなぜこの世界にいるのか、か)
ようやくチートっぽくなってきました。
細かい設定とかわからないところはは聞いてくれればお答えしますので遠慮なくどうぞ~。
それではこの辺で失礼します。




