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傭兵in異世界  作者: キリサキ隊長
傭兵と『獣おろし』
29/86

傭兵と死者の激励

自分でこんなこと書いてるのもあれですけど、発覚したらとにかく恥ずかしいですね。

それではどうかお付き合いくださいませ

「悪いが、今回は律儀に待ってはやらんよ」


自分でも不思議だったが、カメルやウォーガーの時には変身するときにわざわざ待ってやってた。思えばこれ、絶好のチャンスじゃん........。というわけでモヤに向かってアサルトライフルを発砲する。フルオートでぶっ放すが、どうも手応えがない。当たったときの肉に食い込む鈍い音もしなければ、弾き返された金属音もしない。


「........うぉっと」


放った弾丸が戻ってきた。正直予想だにしなかったので反応は少し遅れたがすんでのところで回避する。........一体どうなってんだよあれ。ロケット弾でもぶっ放したいところだがあいにくと今回はは持ってきてない。背中の4次元コンテナは入れたものの数が重さになるのであまり多くを持ち歩きたくないのだ。その代わり質量は関係ないのがありがたい。

とにかく遠距離は手持ちでは聞かないとわかった。しかしこの状態で接近するのはさすがに無理がある。相手の出方がわからない以上迂闊には近づけない。........結局待つしかないか。


「........!」


いきなり突風が吹いてきた。盾を取りだし構えて踏ん張るがとんでもない風圧である。その辺の死体やらが飛んでくるのがわかる........あ、何か砕けた。

やがて突風が止んで、代わりにバサッバサッと羽ばたくような音が聞こえる。状況を確認すべく盾をどけて前を見る。

そこには黒い翼を生やしたネクロが飛んでいた。足は鳥のそれのように鋭い爪のようになっているが、何より変化が激しいのはその顔である。髪が一気に長くなり、その代わりというように前髪が短くなって目元まで見えるようになっている。目元まで見えると改めて美人であることがわかるのだが、今回はそんなことは問題じゃない。なぜなら、その目は獲物を品定めするかのように獰猛に光っているのだ。........マジ怖い、狩る者の目とはあのことか。

怖いと言えばもうひとつ、相手の強さが跳ね上がったことである。カメルやウォーガーでさえここまでのパワーアップはなかったのに、ネクロからはさっきのは別人じゃねーかと思いたくなるくらいになっていた。........そういえば、『獣おろし』は魂を喰らって力にするんだったか、すっかり忘れてた。思えば最初から魂だ何だと言ってたが、警戒しておくべきだったな。

........あんなこといった手前負けられないんだが、正直勝てるか不安になってきた。


「........鴉か?」

「その通りよ。だけど変わったのは見た目だけじゃないわ........行くわよ!」


言葉と同時に急降下で突っ込んでくる。その速度はさっきと比べ物にならないくらい速い。おかげで完全に出遅れた。


「うぉっ!」


錫杖で押し付けるように俺ごと飛び続ける。その先には枝の壁があって、俺はそこに叩きつけられた。


「ぐはっ!!」

「まだよ!」


ネクロが飛び退いて何かを呟いているが、俺は叩きつけられた衝撃でうまく体をを動かせないでいる。........今気づいたが、どうやら太い枝にめり込んでるらしい。


「絡めとれ!『樹腕の抱擁』!」


今度は枝から枝が生えてきて俺を拘束する。蔦のようなしなやかさなのに枝のような硬さがある。........なるほどねぇ、見た目だけじゃないってのはこういうことか。


「........大した術だな」

「ええ、もっと言えばこの木そのものがワタシの術よ、この木はワタシなの。あなたはここで戦ってる限りワタシには勝てない」

「........」

「他の人は適当に殺してたけど、あなたは特別だから........ワタシの手で直に殺してあげる。少しずつ、ね?」


そう言って俺の首に手を伸ばしてくるネクロ。あぁ、ここまでかね........。大佐、すまん........。でかいことは言うんじゃなかったぜ。

俺は目を閉じた。


ーーーーーーー


「........」


目を開けてみる。当然そこには俺を絞め殺そうとするネクロがいるもんだと思っていた。

しかしそこには誰もいない、そしてそもそも苦しくもない。というか........。


「何もないな........」


何もないのだ。目の前にはただただ真っ黒が広がっている。俺を拘束していた枝も、無数に横たわる死体も何もない。「実は夢オチでした~」何て言われたら納得してしまうくらい何もない。あれ?前にもこんなことが........。


「そっか、死んだのか俺は」


思い出した。カメルとの戦いのあとに死にかけた俺は似たような所にいた。川がないのが少し違うが、まぁ死後の世界に川が必ずあるとは限らないしな。


「死んじゃったかぁ........」

『死ぬ?そんなことは許さんぞ』

「!?」


声がした。どこから聞こえてきたのかと首を回して声の主を探す。が、誰もいない。今の声、聞き覚えが........。


『何よ?私たちを忘れたの?』

『そんなはずはないんだがな』

『俺達を殺したのに忘れるなんて許せないな』

「!」


声の主が増えていく。それにつれて目の前に白い人影が現れ始める。声と影はどんどん増えていった。そのなかの一人の声で、俺はこいつらが誰なのかを全て悟った。


『お忘れですか?刃人隊長』

「お前は........」

『お久しぶりです』


戦友だ。俺が大佐に雇われる前、異世界に飛ばされる前の戦友たちだ。聞けばどれも懐かしい、俺の思い出を刺激する声である。だが、俺の戦友は皆........。


「だがなぜだ?お前たちは........」

『そうだ、我々は死んだ』

『だが魂は貴様の中に生き続けている』

「何だって?」


魂は生き続けている?どういうことだよ。それにここは何処なんだ?


『ここは隊長の中だ』

『お前に討たれた者、死してなおお前と共にありたいと思ったものはすべからくここにいる』

『そしてここにいる者全てはお前の死を望まない』

『ある者は討たれた怒りから貴様を呪った。ならば貴様は永遠に戦場で苦しみ続けよ、と』

『またある者はあなたを信じて死んでいった。ただ、あなたに生きてほしいと祈り続けて........』

「........マジかよ」


自慢する気はないが、俺は今まで多くの命を敵味方問わず死なせてきた。俺がこの手で殺した者、俺を庇って死んだ者、巻き添えで死んだ者........。そんな死者の魂を、知らなかったとはいえ俺は死んだあとも縛り続けていたなんて........。


『........何を勘違いしている』

『別に隊長をいじめようってんじゃありませんよ』

『というか君はまだ死んでないよ』

「え?」

『言ったろ?死ぬことは許さないと』


何を言ってるんだこいつらは。あの状況から逆転なんて援護してくれる味方もいない俺には無理だ。


『ならば俺たちと共に戦え』

『私たちの力を貸すわ』

『死人にここまで言わせるんだ。死んだら承知しねぇぞ?』

「........出来るのか?そんなことが」

『出来るから言うんだ』

『あとはお前次第だ』

「........」

『お前は死んでいいのか?生きてやりたいことはなかったのか?』

「!!」


生きてやりたいこと........。確かにあった。だから俺は傭兵として戦っている。俺は見たかった。戦場を駆け抜けたその先にあるはずの物を手に入れるために........!


『問おう、貴様は生きて何を成す?』

「生きて生きて生き抜いて、戦場の先にあるお前らの夢を........」

『夢とは?』

『僕らの夢とは何?』

「誰も死なない世界を作る事だ!」


........すっかり忘れてたぜ。俺だけじゃなく多くの仲間が賛同してくれた夢、叶うはずのない途方もない理想。しかし戦わずにはいられない、変わるために俺達は戦うと誓ったから!


『........迷いは晴れたか?』

「完璧だ、手間をかけさせたな」

『なら行け!そして死んだ俺たちの分まで理想を叶えろ』

『行け!』

『『進め!』』

『『『駆け抜けろ!』』』

『『『『我らが掲げた理想のために!』』』』


力強い掛け声と共に、俺は意識を失った。


ーーーーーーー


「うぐぅ........。しぶといなぁ、何で死なないのよ!」


もうかれこれ5分は首を絞めてるのに、まだ魂がワタシの物にならない。どうなってるのよ!?


「もういいわ!なら突き殺してあげる!」


腕も疲れてきたしらちが明かないから、一思いに喉を一突きすることにした。まだ昏倒してるのかピクリとも動かない。........これなら絶対に外さない!


「終わりよ!」


手加減なんか一切しない、一秒でも早く魂がほしい。そう思って錫杖を突くワタシの頭の中には、目の前に真っ赤な花が咲く光景と血の気が失せていくにつれて出てくる今まで見たことのないような美しくてキレイな魂しかなかった。


「キャッ!」


........え?弾かれた?嘘でしょ?だって刃人はまだ意識がないのに........えっ?目が開いてる!?


「ハァーーーーッ!!」

「キャァァ!」


刃人が叫んだ。ただそれだけなら何てことはなかったのにワタシは吹き飛ばされた。あんまり急だったから受け身も取れずに地面に落とされる。


「あなた、誰........?」


そんな言葉が出てくる。目の前にいるのが誰かわかっているのにまるでワタシの心がこの人を本気で理解できない、いや理解したくないんじゃないかとさえ思う。それくらい目の前にいるのがさっきと同一人物どなんて思いたくなかった。

ただひとつだけ理解できたのは、この人を敵に回すのはあまりにも危険だってこと。もうこの人の魂とか関係なく、ただ自分の身が危ないことだけがわかった。


「........ようネクロ。待たせたな、すまんがもう一度仕切り直しといこうか?」







ネクロ戦はまだ続きます。傭兵が覚醒するので。

もっと戦闘描写がうまくなりたいですな。感想や指摘などもらえたらとてもありがたいです。

それではこの辺で失礼します。

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