傭兵と化け物
そろそろ2章も終わりです
それではどうかお付き合いくださいませ
「ぬおおおぉぉ!?」
「ァアアアァァァアア!!」
何あれ!?何なのあれェ!?これなんてバイオハザード!?怖すぎィ!
「畜生ォめェ!!」
向かってくる1つ目に向かって発砲する。しかし怯みはしてるんだが足が止まらない。相変わらずマジキチな叫び声だかうめき声をあげながらこっちに走ってくる。おいおい勘弁してくれよ、俺はパニックホラーが嫌いなんだよ!
「こうなりゃやけっぱちだぁ!」
弾丸があんまり意味がないとわかったら接近戦しかない。そう思った俺は太刀を抜いて1つ目に突進する。
「セイヤァァァ!!」
ヤツの眼前で体勢を低くし、胴体を横薙ぎ一閃で両断する。何とか上半身と下半身をお別れさせたが........何か手応えが違った。
何が違うんだろうと疑問な思った俺は両断したものを調べる。
「何だこりゃ........」
手応えが違ったのはどうやら俺が斬ったのは生物の肉ではなくただの土くれだったかららしい。化け物というよりは木偶人形といった方が正しいかもしれない。デカイ目玉は有機的だったが。........お?
「こいつぁ........骨、か?」
表面の土は泥だんごみたいな自壊しないような質感だったが、その中には人骨が入っていた。人形の体勢を保つ構造は生物と同じだったって訳だ。
「........ヤバイな」
人骨あるところ人の死あり。つまりは連れ去られた捕虜が早速殺されてあろうことか敵の下僕として死んだあとも戦わされたと言うことだ。その可能性は俺に時間がないことをこれでもかと告げていた。もしかしたらキルオンも........。
「やめだやめだ!考えたってしょうがねぇ」
頭によぎった縁起でもない考えを振りきるように頭を振る。万が一変わり果てた姿の戦友に会ったときは、俺の手で葬るだけだ。
ーーーーーーーーー
敵をあしらいつつ前進してたら、何か広いところに出た。今まで20体は斬ったかね?
それにしてもここはなんだ?流石に下のところほど広くはないが、ここも中々のもんだ。そして特に目を引くのは、脇に並んでるラグビーボールみたいな形の脈動する有機的な何かしらだ。ここは木の中のはずなのに目の前の物はどちらかと言うと肉っぽくて気持ち悪い、何かヌラヌラしてるし。........ん?何かはみ出てる。あれは........人の手じゃねーか!
「おいしっかりしろ!大丈夫か!?」
何も考えずに手をつかんで引っ張る。しかしこの肉のカプセル(?)は流石に人力で引っ張ったぐらいじゃびくともしない。ただ粘りけのある肉と中の誰かが擦れてぐちゃぐちゃと気持ちの悪い音を出すだけだった。
「ならこれでどうだ!」
太刀で肉の表面を斬りつける。後で手入れが大変だが、そんなことはこの際気にしない。縦一文字で肉を切り開くと、中から人が出てきた。良かったまだ生きてるっぽいな、てかこいつは........。
「キルオンじゃねーか!」
全身粘液でびしょ濡れだが、このモフモフ帽子は間違いない。あんまり触りたくないのだが、俺はキルオンの頬を叩く。
「う........うぅ........」
「聞こえるか?俺だ、斬崎刃人だ」
ペチペチ叩いていると、キルオンは目を覚ました。弱ってはいるが大丈夫そうだ。
「うぅ........ジント、か?」
「おうそうだ。無事なようで何よりだ」
「気分は最悪だけどな........」
でしょうね。
「何があった?」
「木の中に入って........デカイ木の箱を見たところまでは覚えてるんだけども........わからん」
「そうか........無理して思い出さなくていい、それで十分だ」
「すまねぇ........」
謝られることはないんだが........いやあるか、油断しやがって。しかしそんなことを今言っても何もならないので言わないでおく。大佐に連絡しておくか。
「こちら斬崎刃人、ニール聞こえるか?」
『むぐむぐ........ゴクン。なに~?』
........何か食ってやがる。寝てないのは進歩だが、これはこれで腹立つななんか。
「大佐出してくれ」
『了解~』
『........傭兵か?どうしたの?』
「キルオンを見つけた。無事だ」
『本当かい!?よかった........』
安堵の声が通信から伝わる。だが今は安心している暇もない。
「クレイグから連絡はあったか?」
『........まだだね何があっ『こちらクレイグ、聞こえるか?』』
ちょうど話題に上がってたクレイグが割り込みで通信をいれてくる。今は3人が通信で繋がっている状態だ。
「聞こえてる、首尾はどうだ?」
『指示通り廃村までの退却に成功した。全員無事だ』
「だとよ大佐」
『了解したよ。今から迎えをそちらに向かわせるから、それまで油断しないでね』
『ハッ、了解しました』
「で、だ。クレイグ、今キルオンを発見した。確認はまだだがおそらく他の連中も生きてるはずだ」
『そうか!俺はどうする?そちらへ行くか?』
「いや、そこで守りを固めてくれ。今から全員解放してから降ろす」
『........君はどうするつもりだい?傭兵』
『またひとりで行くつもりか?』
通信越しに2人の声が冷たく鋭いものになる。そんなに責めてくれるなよ........。
「この先にさらに上に続く通路がある。おそらくすぐに最上層だ。誰かいるとすればそこだろう」
『でも........』
「俺のことは捕捉されてると思っていいだろうな。このまま引いたら追撃を食らいかねない。だったらこっちから仕掛けに行く」
『なら下ってくる連中はどうする?』
「各々が戦う術は持っているし、武器も取り上げられてはいない様だ。徘徊してるのが確かにいるが雑魚ばかりだしなんとかなるだろ」
『........はあ、もう好きにしなよ』
『大佐殿!?』
おやこれは意外、てっきりまた止められるもんかと。........てか止めるのがここは普通なんだけどね。どうもガーンズ軍人は放任主義みたいなところがあるな。
『ただし、ボクに断りなく死んだりしてみろ。あの世に乗り込んででも連れて帰るから』
「........上等だ、死んでも迎えがあるんならためらうこたぁねぇな」
『だからって手間かけさせないでよね』
「善処するさね」
『大佐殿?斬崎刃人?あまり仲の良い様を見せつけないでもらえないか?』
クレイグの言葉が低く冷たくなっていく。流石に作戦中に駄弁るのはよくないな、よくない。
「それじゃあこれで終わりだ。次は生きてたら報告する」
『了解、死なないでね?』
『武運を祈る』
通信を切ってキルオンの方を向く。驚いたことに通信の内容を察してくれたらしく、連絡を取っている間に他の連中を解放してくれてたようだ。........どうやら全員動けそうだ。
「キルオン、わかってるな?」
「おう、全部聞いてた」
「じゃあ悪いが頼むぞ」
「任せとけ!........じゃあ皆!オデについてきてくれ!」
キルオンの先導で次々と降りていく元捕虜たち。1本道だし迷うこともないだろ。
全員が見えなくなったのを確認してから、俺は上に向かう通路を見る。........さっきからずっと気配がしていたが、回りに悟られないように極力押さえられたものだった。まあわかってたがな。それが俺が1人になった途端に強くなった。........来いってことか?
「さーてと、やってやりますかね」
気合いを入れ直して、俺は前に進んだ。
敵の攻撃を少しだけ触手にしようかとかんがえましたが、野郎と触手とか誰得だよ!と思ってやめました。
それではこの辺で失礼します




