傭兵、古強者と共闘する
戦闘は基本的に2話使うつもりです。例外はあるでしょうが........
それではお付き合いくださいませ~
「手を貸すべきか?斬崎刃人」
「クレイグか........?生きていたのか」
「なんとかな。残念ながら俺だけだが........」
「くっ........」
なんてこった........。部隊を失っちまうたぁな。俺も焼きがまわったかね、もっとうまく立ち回れたはずなのに。
「それにしてもずいぶんハデにやられたものだな。噂に聞いたお前はもう少し強いと思っていたが」
「買い被りすぎだ。俺にとっちゃ生きてりゃ勝ちだからな。それがどんなに泥臭く無様な勝ちでもな」
「そうか........。それにしてもあれはなんだ?プラズマビームを食らって5体満足とは........」
「あれたぶん死んでねぇぞ。てか気絶すらしてねぇ」
「何!?」
そりゃビックリするわな。あんなビームを食らったら俺なら粉々になるし、まして寝っ転がってるだけだってんなら絶望すら感じるわ。
「お~。よく気づいたなぁ?」
「!?」
「よぉ、寝たふりはもういいのか?」
間延びした声が響き、巨体がその身体を起こす。鎧の所々から煙が上がっているものの、本人には大したダメージはないようだ。頑丈過ぎだろ........。
「あ゛~。ガーンズの武器もすげえな。そんな攻撃ができるとは思わなかったぞ」
「........化け物か」
「その通り!なんたって俺は『獣おろし』だからなぁ!」
「!」
ウォーガーが紫のモヤに包まれる。こいつ、変身する気か。まあ今はこいつの正体よりもどうやってこいつを沈めるかを考えるのが先だな。
「........どうする?斬崎刃人」
「........鎧の継ぎ目を狙うしかねえな。それか首の部分の薄いとこが狙い目だ。最も、変身したあとにどうなるかはわからんが」
『ウオオオォォォォ!!!』
「「!!」」
作戦会議をしている俺たちの耳に信じられない声量の雄叫びが響く。その雄叫びから逃げるようにしてモヤが吹き飛ばされていく。
「おーおー、こりゃまたごついのが出てきたな」
「これが『獣おろし』か........」
見た感じでパッと思い浮かんだ動物は、サイだった。灰色のその体は防御力の高さを雄弁に語り、足は像足のようにシンプルかつ巨大なものになっている。体長は4mに届くかと言うカメルのカメレオン形態より大きく、それに比例してか武器のハンマーもより凶悪な形に変化している。そして頭は人間のままだったが、鼻先ではなく脳天に角が生えていた。........見上げるのも一苦労な図体である。首痛てぇ。
「2対1になったんだ。当然こっちも本気を出すぜぇ?」
「........仕切り直しってわけだ。やってやろうじゃないか!」
「ッハァ!行くぞぉ!」
1歩踏み込んでハンマーをふり下ろすウォーガー。巨体になったこととハンマーのリーチが延びたことにより、たった1歩の踏み込みで容易に俺たちをとらえた。
「嘘だろ!?」
「くっ!」
俺とクレイグはそれぞれ横に飛び退くことで回避する。それと同時に反射的に応射をかける。しかし
弾丸は灰色の鎧に弾かれてしまう。
「無駄だぁ!今の俺の外皮の前には砲弾すら効かねぇんだよぉ!」
あれ外皮なのか!?どうりで鎧から継ぎ目がなくなったわけだよ。あんなもんが生物の体から捻り出されてる上にそれで痛みとかないってマジかよ........。
「ちょこまかと鬱陶しいなぁ~。『ソニックデビル』!」
「なんだ!?」
ウォーガーがクレイグに迫る。その動きはさっきまでとは比べ物にならないくらい俊敏であった。どうやら『ソニックデビル』ってやつは速力をあげる強化魔法らしい。........って分析してる場合じゃねぇ!
「クレイグ!」
「........俺を見くびるなよ?斬崎刃人」
得物の大型ランチャーを構えるクレイグ。何であの男はあんなに余裕そうなんだよ。
「タクティカルランチャー、ショットガン!」
「ウオッ!?」
大砲をぶっ放したような轟音と同時に4mの巨体が後ろに吹っ飛ぶ。見ればランチャーの銃口から煙が出ていた。至近距離での発砲はスタングレネードと同じ効果があったらしく、ダメージは相変わらず無さそうだが、頭を押さえてふらふらしている。そりゃ強化された感覚にデカイ銃声とマズルフラッシュはキツいだろうねぇ。
それにしても、あの短時間で武器を切り替えて撃つとはあいつも人間やめてたりしねぇか?てかどうなってんだそのランチャー。
「なんて火力だよ........」
「それが俺の相棒の長所だ。構造などについては割愛するが、これ1つで理論上は一個師団も撃破できるとだけ言っておこう」
「え、なにそれこわい」
これぞガーンズ驚異のメカニズム!それなんてデンドロビウムだ?
「しかし........これでもあの装甲を貫徹できないとはな」
「それなんだかな。そいつには他にどんな武器が積んである?」
「他には先ほどのプラズマビームにミサイル、火炎放射機に焼夷榴弾、先端のダガーブレードにガトリング砲と言ったところだな。それと各種グレネード」
ホントにどうなってんだよ!物理的にそんなに入らねぇだろ!いい加減にしろこの人間武器庫!
「そうだな........。俺が合図したら敵の注意を引いてもらっていいか?できれば足も止めてほしい」
「それは構わんが、お前はどうする?」
「ちょいと、考えがあってな........」
そうこうしているうちにウォーガーが首を振っている。どうやら混乱から回復したらしい。........うわ、目が血走ってる。お怒りですな。
「てめぇら~........。手加減してりゃあなめやがってこのやろう!叩き潰してやる!」
「行くぞ........GO!」
俺がウォーガーに向かって突っ込み、クレイグが後ろから援護をかけてくれる。俺はアサルトライフルを撃ちつつ、スモークグレネードで煙幕を張る。
「タクティカルランチャー、ガトリング!」
声と共に鼓膜をブチ破る勢いの連射音が辺りに響く。俺が渡した大型シールドを遮蔽物にしてとにかく撃ちまくっているようだ。
「グォォォアアア!!」
ウォーガーも応戦するようにエネルギー弾を放つ。だが、頭に血がのぼっている上に元々連射が聞かないために盾にすら当たらずに回りに穴を開けていくだけである。俺は煙幕の間からクレイグに向かって自分の意図をジェスチャーで伝える。
(そういうことか........)
クレイグから親指を立てた合図が帰ってくる。伝わったみたいだねぇ。
「タクティカルランチャー、フレイムガン!」
今度は火炎放射に切り替わり、辺りを火の海に変えていく。火炎をもろに食らっているウォーガーは足を止めもがきはじめる。やつの体の構造がどうなってるかは知らないが、俺の予想が正しければ蒸し焼き状態だろう。
「ウオオオォォォォ!!」
さっきから言葉を発してないが大丈夫かこいつ?まあ、関係のないことだがね。
「殺ス!叩キ潰ス!」
「なっ!?」
ウォーガーがハンマーを構え直し、クレイグに迫る。『ソニックデビル』の効果が残っているらしく、その動きはキレのある素早いものだった。
「グアッ!?」
対応が遅れたものの回避に成功したクレイグだが、無理に避けたためにバランスを崩してよろけてしまう。
「勝チダァ!」
ウォーガーがよろけたクレイグに再度ハンマーを振りおろす。しかしそれはクレイグを肉塊に変えることはなかった。なぜなら........。
「ああ、俺たちのな」
ウォーガーの振りかぶったハンマーを、俺が掴んでいるからである。俺は今、ウォーガーの肩にしゃがみこむ形で乗っている。クレイグしか見えてなかった上に仮説通り外皮には神経が通っていなかったため、ウォーガー自身を足場に肩まで行くのにはそれほど苦労はしなかった。流石に動き出したのは想定外だったが。そしてもう1つ予想通りだったのは........。
「思った通り、首回りは生身の部分が多いな」
ウォーガーの頭から鎖骨にかけての部分は生身の状態だった。兜を被ってない鎧ならもしかしてと思ったが、ドンピシャだったようだ。そして俺は........。
「お前の敗けだ!」
「く........クッソォォォォ!!」
ウォーガーの肩に太刀を突き立てた。
ーーーーーーーーーー
「肝が冷えたぞ........」
「すまんすまん。だが俺達ゃ生きてンだ、上出来だろ」
「うむ、見事だった」
ウォーガーが倒れたあと、俺はクレイグに手をさしのべた。起こしてやってから俺はウォーガーの方を見る。........まだ生きてるな。
「なぜこの男を生かした?」
「聴かなきゃならねぇことがあるんだよ」
ウォーガーのもとに歩み寄る。もはや身動き一つせず、瀕死なのは一目瞭然だ。
「ハァー........、ハァー........。まさか負けるとはな」
「さて、約束通り勝ったぞ。新兵たちの居場所とお前たちの目的についてしゃべってもらおうか」
「あの........雑魚どもは、........捕虜収容所だ。まだ........グッ!........生きてるはずだ........」
「どこだ?そこは」
「ここから........近くだ。見ればわかる」
「........いいだろう。まだ生きてるってわかっただけでも収穫だ」
「........ゴボ!!」
ウォーガーが盛大に血を吐く。生かしてるとはいえ大分深く刺したからなぁ。
「おい斬崎刃人!この男はもう持たないぞ!?」
「では最後に1つ、なぜ俺を知っていた?」
「俺達........『獣おろし』はなぁ........、常に........ゴホッ!........親父様と、共にある」
「親父様?」
「俺達『獣おろし』にとっちゃ........親であり........持ち主みてぇな........もんだ。俺達は........親父様の........操り人形だ」
「........だからか」
おそらくカメルから情報を得たんだろうな。どんな手かはわからんが。
「すんません........先に死にますぜ........親父様」
そう言い残してウォーガーは事切れた。その顔は戦いのなかで散った戦士の顔と、恩人に報いることができなかったような悔しそうな顔が一緒に表れていた。
ウォーガーの装甲は外皮と本体の間に魔力で層を作ることでダメージを限りなく軽減させる仕様です。
とりあえずガーンズの技術とウィーズの魔法にできないことはないと思ってくれればいいですよ
それではこの辺で失礼します~




