傭兵と獣おろし討伐
新章入りまーす
連休は書けないだろうからその前に出来るだけ書きます
それではお付き合いくださいませ
「さて、皆。仕事の話をしようか」
「うぇーい」
「了解だ!大佐殿」
「「寝かせて~」」
アリス中佐救出任務から2ヶ月ほどたった。あれからいくつかの戦場に援兵としてキルオンと共に赴いたりした結果、軍内部に確かな信頼を築くことができた。今や俺たちは正式なガーンズ軍特殊部隊である。といっても、俺は今でもフリーの傭兵だがな。
さて、今は大佐から呼び出されて俺、キルオン、ニールとネールが集まっている。一見するといつものメンバーがバカ騒ぎすべく集まっているようにも見えるが、大佐の先の一言とこの場にアリスのお嬢ちゃんがいないのがそうではないことを示していた。
「いきなりなにさね大佐。全員召集なんて珍しいじゃねーか」
「うん。傭兵が持ち帰ってくれた情報の精査が終わったのと、それに基づいたミッションプランを立てるよ。君達の出番というわけだね」
「おー、んじゃ早速聞かせてくだせぇ」
キルオンが作戦の説明を急かす。かくいう俺も久しぶりのしっかりした任務に武者震いがしてきた。
「コホン........。それじゃあ始めるよ。皆も知っていると思うけど、今から2ヶ月前に傭兵がウィーズ軍内部のある計画についての情報を入手してくれた。残念ながら作戦の内容は不明だが、これにはウィーズの精鋭『獣おろし』が深く関わっている。傭兵、ここまでは間違いないね?」
「おう、その通りだ」
「敵がどんな計画を立てているにしろ、ボクらにとってそれは好ましくないはずだ。当面の我々の活動はこの『獣おろし』の捜索および撃破となる。ここまでで何かあるかい?」
「はいぃ!」
「はいキルオン」
キルオンが勢いよく手をあげる。そこに大佐が返事をするこのやり取りはどこか学校のような感じだった。
「捜索と撃破っていってもオデたちは前線に出るのは2人だけだ。人手不足だと思うんですけどどうなってますかい?」
なるほど、確かにその通りだ。捜索だけなら1人でこなせるかもしれないが、撃破となると1人で相手にするのは骨だ。あのカメルでさえ『獣おろし』の中では弱い部類だったと言えばなおさらだ。
「そこは問題ないよ。他の部隊から少しばかり人員を借りてきてるから。後で挨拶しといてね」
「よくそんなことができたな大佐。畑違いなのに」
「ボクだってやるときはやるよ。傭兵にもキルオンにも死んでほしくないし」
「おーおー、そいつぁ身に余るお言葉ってやつだねぇ。んで?とりあえずは手分けして捜索か?」
「いや、『獣おろし』の1人の目星はついてる。ニール、ネール」
「「ちょっと待ってー」」
幼女姉妹が慌ただしくキーボードを叩いた後、
部屋の中央のプロジェクターからホログラムが映し出される。初めはたまげたが、もうこれにも驚かなくなった。慣れってのは恐ろしいもんだねぇ…。
それにしてもこいつは何だ?でこぼこした地形図の窪んだ部分が赤くなってるな。見たところ何かの範囲を示した地図のようだが........。
「傭兵が『獣おろし』の1人を倒してから1週間後ほどたった頃だ。この赤く示された範囲を通過しようとした我が軍の部隊が次々に奇襲を受けて壊滅する事案が発生した。情報によれば兵士だけではなくその範囲に入り込んだ猟師なども行方をくらませているらしい。残念ながら彼らがどこに消えたのかはいまだ不明だ」
「そんなに前から?何で今まで放っておいたんだ!?」
俺は思わず大佐を問い詰める。すでに相当数の被害が出てるってのに何をやってたんだ!
「落ち着いてくれ傭兵。ボクらだってなにもしなかった訳じゃない。だが救援に向かった部隊も軒並み消えてしまうんだ。これ以上やられる味方を増やす訳にはいかない。わかるかい傭兵?」
「お、おう........。すまん」
「続けよう。人を送り込むのは無理だと判断したボクらは観測ポッドを放ってこの範囲を偵察したんだ。その結果見つかったのがこれだよ」
ホログラムが切り替わり、画像が出てくる。そこには、マントの兵士たちに指示を出していると思われる、デカいハンマーを担いだ屈強な男が映っていた。
「ん?大佐殿、こいつが『獣おろし』なのか?」
「その可能性が高いとボクは睨んでいるよ」
「根拠は?」
大佐は普段はバカだが、こういうときは意味のないことを言うようなやつじゃねぇことはわかってる。
「2人は知らないようだから教えてあげるけど、本来ウィーズの魔法使いは武器を携帯しないんだ。魔法使いは遠距離はエネルギー弾、近接戦闘に発展した際も魔法で即席で武器を作り出して闘うんだ。つまり........」
「わざわざ自前で武器を持つ物好きはそう多くないってことか?」
「その通り。傭兵、君が倒した『獣おろし』は武器を持っていたし魔法も使った。違うかい?」
「ああ、鎖鎌を使ってたしエネルギー弾みたいなのも使ってたぞ」
あれはなかなか手強かったぜ........。ん?武器を持ってたやつが『獣おろし』だったってことは........。
「わかったかい?傭兵」
「一応な........」
「ん?ん?どういうことだ?」
「「わかるように説明して~」」
キルオンたちはどうやら話についていけなくなったらしい。まぁ少しばかり飛躍した推論だから無理もないわな。
「つまり、武器を持つ必要のない魔法使いが武器を持っていた。この理由を考えるとね........」
「武器を持っていなけりゃいけねぇ理由があると考えられる。それが『獣おろし』と関係があるとすれば、それは『獣おろし』の決定的な特徴である可能性があるって訳だ」
「「「お~」」」
どうやら3人にも理解できたらしい。しかしキルオンはともかく、ニールとネールが理解できるとは........。全く末恐ろしいやつらだぜ。
「じゃあ俺の任務はこいつらを撃破することって訳だな?」
「そういうこと。察しが速くて助かるよ傭兵」
なるほど内容は理解したぜ。ところで........。
「キルオンは連れてっていいのか?」
「いや、キルオンには別の任務についてもらうつもりだよ?」
「んえ?なんだって大佐殿?」
再び画像が切り替わる。今度のは........なんだこのどでかい木は。
「これは例の襲撃と同時期に突然近くに出てきたものだよ。キルオンにはこれの偵察をお願いしたい。出てきたタイミングを見る限りどうも無関係だとは思えないんだよね」
「了解だ!自然はオデの専売特許ってやつだぜ!」
「ありがとう、そう言ってくれて嬉しいよ。じゃあこれで作戦の説明は終わりだよ。何かあるかい?」
「「アタシ達は~?」」
それまでほぼ空気だった2人が声をあげる。どことなく不機嫌そうなのは気のせいではないと思う。
むくれんなむくれんな。
「ニールは傭兵、ネールはキルオンをサポートしてもらえるかな?」
「おやつは~?」
「ある~?」
「傭兵がお菓子をたくさん作ってくれるそうだよ?」
「「わ~い」」
「!?」
え~!?なにその無茶ぶり!?ないわ~........。
「もうないかな?ないなら解散!」
こうしてブリーフィングは終わった。さて、とりあえずあてがってくれた部隊とやらを見に行くかねぇ........。なんて思ってたら大佐から声をかけられた。
「あ、そうだ傭兵。アリスが呼んでたから任務に出る前に顔だしといてね?」
「うぇーい」
お嬢ちゃんがねぇ、一体なんの用だろうか........。
なんか変なところとかありそうなので、見つけたらご指摘ください
それではこの辺で失礼します~