傭兵、お嬢ちゃんを救い出す
毎度ありがとうございます。お楽しみいただけているでしょうか?
それではどうか駄文にお付き合いくださいませ
「ここだな........」
監禁部屋を探すこと30分、しらみつぶしに探した結果ようやくこの扉の前にたどり着いた。中を巡回してる兵士が少なかったのはありがたかったが、まさか他の候補部屋が全てハズレとはな、俺も運がないねぇ。とりあえずキーロックのコンソールをハッキングしてドアを開ける。ところが........
「........嘘だろ?」
入った部屋は何もなかった。ただ狭い部屋があるだけ。マジかよ........ここもハズレかよ。何度見回しても何もない。目にはいるのは壁だけである。ん?壁?
「まさか........この中か?」
見取り図と照らし合わせるとよくわかるが、この部屋は狭すぎる。となると考えられるのは1つ、この壁の向こうにもう1つ空間があるってことだ。
その時、壁からなにかを叩く音が聞こえた。
「中にいるんだな?よし、聞こえてたら少し下がってろ」
俺はコンテナから太刀(昔からの俺の相棒)を出して1回、2回、3回と壁に向かって斬撃をあたえる。壁は俺の思い描いた通りに静かに崩れた。その奥に俺の目指す人がいた。白髪、片眼を隠した包帯、メイドさんがつけているような黒いカチューシャ、ツインテール........。うぬ、間違い無さそうだな。少しイメージよりもいろんな部分がちっさいが、この際そんなことは問題じゃない。
「お嬢ちゃんがアリス中佐か?」
「........あなたは誰ですか?あと、私はお嬢ちゃんじゃありません」
「おっとそんなに警戒しなさんな。俺は傭兵の斬崎刃人、イツキ大佐の命令でお嬢ちゃんを助けに来た」
「本当ですか!?それと、私はお嬢ちゃんじゃありません」
「ホントだ。早速出るが大丈夫か?それと、俺からすればお前さんはお嬢ちゃんだよ」
「だから!私はお嬢ちゃんじゃありません!」
こいつ面白いな。いじればいじるだけいい反応を示してくれる。
「ハイハイ、続きはお前がナイスバディになってから聞きますよ~っと。ところで、何でこんなところにいたんだ?どうやって入った?」
「まったくこの人は........。敵の魔法使いにやられたんです。もともとは普通の部屋だったんですけどあの男は壁を作って私を閉じ込めて、更に壁をすり抜けて出ていったんです。並の魔法使いにあんなことはできませんから、多分指揮官クラスですね」
おいおいなんだそりゃ?壁を作って壁抜けするとは、魔法ってのはつくづく反則だなおい!んて思ってたその時........。
『................』
「........?」
なんだ?今気配がしたぞ?どこだ?誰かいるのか?
「どうかしたんですか?せっかく助けに来てくれたのなら、早く行きましょう?」
「いや今気配が........」
しかし何度確認しても誰もいない。気のせいか?
「誰もいませんよ?」
「........いないならいいか。よし行くぞ、遅れんなよ?」
「わわ!待ってください~」
こうして俺はアリスのお嬢ちゃんを連れてキルオンとの合流地点へ向かった。これならタイムリミットに間に合いそうだな。
『................フフフ』
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「速いです!速いです!」
「うるせぇ!静かにしとけ!」
「ごめんなさい........」
見た目的になんとなく予想はしてたがお嬢ちゃんは運動が苦手だった。結局途中でへばって俺が抱える羽目になった。今はいわゆるお姫様抱っこの形になっている。お嬢ちゃんいわく「憧れだったんです!」だそうだ。出会い頭にバカにしてきた男にお姫様抱っこされて喜ぶのはどうなのかと思うが、そんなことはこのお嬢ちゃんには関係ないらしい。天才だかなんだか知らんが、こういうところは見たまんまのようだ。
それにしても........
「おかしい........。少なすぎるぞ」
人がいないのだ。行きには歩哨がいたはずなんだが、帰りは誰もいないし気配すら感じない。おかげでこうして疾走しててもバレないのだが、とても不安だ。胸騒ぎがする。
そうして走っているうちに最下層の抜け道の入り口に着いた。
「さて、お嬢ちゃん。悪いが先に行っていてもらえるか?」
「........あなたはどうするんですか?」
「いやなに、ちょいと保険を掛けとこうと思ってな。この通路の先にキルオンがいるから、合流して待っていてもらえるか?」
「え!?キルオンも来てるんですか?」
「あぁ、この作戦の功労者だ。ちゃんと礼を言っとけよ?」
「それくらいわかってます!早くしてくださいね?待ってますから」
「おう!任せとけ!」
お嬢ちゃんを見送ったあと、俺は保険を掛けようとして........その手を止めた。
「一応やっとくか。なんかいたらヤだし」
なんかいる気がするのが最初から拭えなかった俺は、アサルトライフルに付いているスモークグレネードを撃った。
バシュン、ボフーン!
辺り一面に白煙が立ち込める。これならしばらくはなにも見えないだろ。そう思って俺は抜け道の入り口の周りに仕掛けを施してから抜け道に入った。
『........なかなか鋭い方ですね........ゲホ、ゴホ』
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合流地点のあのガラクタだらけの広場では、ちゃんとキルオンとお嬢ちゃんが待っていてくれた。ここまで来ればタイムリミットも関係ないな、作戦は成功したも同然だ。
「遅いですよ!お兄さん!」
「お兄さん!?」
いきなり何を言い出すんだこのお嬢ちゃんは。
「さっきのお姫様抱っこ、とっても気持ちよかったです。だからお兄さんです!」
「うん、意味わかんない。というかやめてくれやその呼び方。背中が痒くなってくるんだけどねぇ?」
「嫌です。私は自分の言ったことを曲げたりしません」
「えー........」
「あはは。諦めなジント。アリスちゃんはこうなったらテコでも動かねぇぞ?」
........うぇー。まぁいっか、どうせすぐ飽きるだろ。見てくれ通り子供の戯言だと思っとけばいいか。
「よーし、ほんじゃ早速........!?」
ゾクッ!!
「........?どうしたジント?」
「お兄さん?」
「お前たち、何度もすまんが先に行け」
「今度はなんだ?」
「何か来る........。俺が時間を稼ぐからお前たちは早く制圧部隊と合流しろ。今なら森の入り口で会えるはずだ」
「........わかった」
「キルオン!?お兄さんを置いていくんですか!?」
「違うさアリスちゃん。オデはジントを信じる。こいつはオデより強いからな」
「そういうことだ。わかったらさっさと行け」
「........生きてくださいね?」
「お子さまに心配されるとはな。俺も落ちたもんだ」
「だ・か・ら、私はお子さまでもお嬢ちゃんでもありません!」
そんなやり取りで俺は2人を見送ったあと、太刀とアサルトライフルを構え戦闘態勢をとる。かすかにだが確かにわかる。殺気を纏った気配がこちらに向かってくるのが。追い付かれる前に2人を逃がせたのはでかいな。これなら万が一俺がやられてもしばらく時間を稼げそうだ。
やがて気配がこの広場に入ってきたとき、動きが止まった。こちらの出方をうかがってるようにも、俺がいることに驚いてるようにも感じる。
「よう。いつまで隠れてるつもりだ?」
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