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【走り書き】進まぬ筆は

作者: 銑鉄

白紙を前にして、僕は動けずにいた

そこに何を書けば良いのか分からないのだ


問題用紙なら求められる答えがある


アンケート用紙にも質問がある


白紙には、なにもない


各々が自由に書き込む事を許されている


僕はそれが怖い


何をすれば良いのか分からないのだ


ペンを執り、白紙に向き合い、そこから先に進めない


いや二~三歩なら先に進んだ事もある


それは自己紹介であったり、面白くも無い小説の書き出しであったりした


けれど二~三行書くとペンが止まるのだ


書きながら、考えながら、ふと脳に浮かぶ言葉


「本当にこれが書きたいのだろうか」


その言葉が脳を過ぎ去ると、今まで書いていた物がどうにも陳腐で恥ずかしい物のように感じてしまう


結果、何も書かなかった事にして白紙に舞い戻るのだ


その点を見て判断するならば、僕はやはり動けずにいるのだ


それは呪縛のようでもあり、単に僕に才能や柔軟性がないだけにも思える


何時からこうなったのだろうか


小学生の頃はまだ躊躇う事無くクレヨンや筆を持って自由気ままに書き殴っていたと思う


では中学生


この頃も違う、むしろ全盛期だ


毎日友人を共にして創作を続け、暇さえあれば禄にない頭で展開を考え文字を認めた


ならば高校生


これも、違ったと思う


中学生の頃と比べれば頻度は落ちたが経済的余裕ができた事で本を読み漁っていた記憶がある


言うなれば充電期間だ、中学生の頃に芽生えた芽に花を咲かすために栄養を蓄えていた



ならば今、社会人になった時期しかない



蓄えた栄養は根腐れを引き起こしたのだ

量が多ければ多いほどその被害は大きい


そして腐った花が咲くことは無い

きっと僕も咲く事はないのだろう


この白紙が青空の下だとして


書き記す物が花弁だとして


それが開く事はない


結末が見えている事が、茎を潰す石のようだ


目に映る有象無象が根を食らう土竜のようだ


そして僕は、それらをどうにかする力なんてものは持っていない


ただ黙って死んでいく、いや腐っていく


それをこの白紙はただ黙って見届けるのだ


何故、何故この白紙を捨てさり他の道を探せないのか


腐っていても花なのだ


咲くことがなくても、空の下に居たいのだ


ただ存在を許され、気紛れでもその陽光を浴びたいのだ


それが叶わぬ夢だとしても


そして、僕はペンを握る


数行書いては消し、また白紙を見つめて頭を抱える


書きたい物が見付かった時、空はまだ晴れているのだろうか


この紙は朽ちることなく眼前にあり続けるのだろうか


そんな事はありえない


物事は変化し、劣化し、消える


だからこそ、受け入れられた証が欲しい

だからこそ、自分だけに注ぐ光が欲しい

だからこそ、揺り篭の様な救いが欲しい

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