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怪異蒐集倶楽部  作者: 宿世愛
沙夜子
8/9

占術師 烏丸

 宮野は閉まった写真部のドアを、ぼんやりと見つめていた。


 公家が言った言葉が、頭の中を回っていた。




――七竈君は君を気に入っているようだね




 本当にそうなのだろうか?



 先輩の側には、ただ今自分しかいないだけで。


 もし、彼ら(・・)が居たならば。


 

 そう、ここに彼らが居たならば、彼の言葉はきっと変わっただろう。



 

 先輩にとって、自分は必要な人間なのか?



 

 先を歩く先輩の背中を見ながら、宮野は考えていた。



 

 


【ボクは先輩の名前すら知らないんだ】




 初めて会ったときから、先輩はあくまで【先輩】でしかなかった。


 名前すら知らない。



 

【ボクが追いかけている先輩は、本当にボクの先輩なのか?】




 そんなことをふと思う。




「宮野君?」



「え?」




「どうした?アキに何か変なことでも言われたのかい?」




「え?あ・・・いぇ。その、先輩がボクを気に入ってるって・・・・」




「ほぅ。アキもよく分かっているな」



「え?」






「私はね、宮野君。初めて君たちに会ったとき、ほかの3人はあまり興味がわかなかったんだよ」




 ニヤリ、と不敵な笑みを浮かべながら先輩は続ける。


 いつの間にか先輩は立ち止まっており、夕日の差し込む廊下に二人が対峙している形になる。



「君はとっても興味深いんだよ。なにせ、怖がりのくせに、怪異に首を突っ込みたがる。挙げ句の果てに自分が怪異に巻き込まれ、友人3名が犠牲・・・・あぁ、この場合は犠牲ではなく“被害者”の方が良いかな?になった。でも、君は今こうしてここに居る」







「だから、私は君に興味があり気に入っているんだよ」





 そう言って先輩は再び歩き出した。


 さっきまで差し込んでいた夕日の色が、今は濃い朱色になっている。



 



――あぁ、あの日もこんな色だったな




 夕日を見ながら、宮野は歩く先輩の背中を追いかけた。






~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~





 ガラリ、と開かれた扉に座っていた人影が顔を上げた。


 部屋の中は薄暗く、人影の顔も分からない。


 否、人影は顔にヴェールのようなものを被っており、部屋が明るくとも見えなかっただろう。



「あら、やっと来たのね。と言っても、早い部類だけれど」



「アキを早々に巻いてきたからな」



「ふふ。アキ兄様も、貴女にかかれば赤子同然ですものね」




 

 ヴェールの下から、凛とした女性の声が聞こえた。


 その声は艶を多く含み、とても同じ学生とは思えないほどだった。




「宮野さん、アキ兄様に会った感想は?」



「え??あ・・・・変わって、ますよね?」



「ふふふ。アキ兄様が変わっているのは、最初からなの。さぁ、用事を言ってちょうだい。待ってるだけではつまらないもの」




「そうせかすな。これが、私の用事だよ烏丸」



 先輩が取り出したのは、A4の用紙に『浦前沙夜子』と書かれたものだった。



「あら?これって願書ではなくて?」



「あぁ。あそこでは何かと手に入るので、困ることはないよ」



「そうね。浦前沙夜子・・・・・・どこかで聞いたことがあるわね」




 そう言って目の前の女性――烏丸は机の横から水晶を取り出した。




 占術部部長、烏丸。



 先の事件の時にも、先輩は彼女を頼っていた。



 彼女の占いは百発百中。





「だめだわ、邪魔が入る」




 そう言った時、後ろでドアが開いた。





「七竈君、吉野君!写真を解析したよ!!そして、我が愛しの妹揚羽よ!!」




 入ってきたのは久家だった。



「騒がしいのが来たな・・・・。で、アキ。なにが分かった?」




「この写真で加工されていたのは、人物の横ではなく人物そのものだったよ」



「人物?」




「そう!これを見てくれたまえ」



 久家が机の上に出した写真を見た瞬間、宮野は引きつった悲鳴を上げた。



 そこに写っていたのは、体がいびつに歪んだ少女だった。



 肩がボコリ、と異様に膨らんでいる。




「これ・・・なんですか・・・?」



「分からないよ、でも・・・・・」




人面瘡(じんめんそ)かなにかか?」




 先輩が言う。


 

「いえ、それにしては瘤が大きすぎるわ」


「そうだね。何かは分からないが、故意的に隠していたことは確かだよ」





 久家がそう言った時、スピーカーから音楽が流れた。




「あら、もぅこんな時間?」


「本当だね。七竈君達はどうするんだい?」



「帰るさ。ということで、アキ」


「ん?」





「宮野君を送ってくれ」

人面瘡(じんめんそう、人面疽)は、妖怪・奇病の一種。体の一部などに付いた傷が化膿し、人の顔のようなものができ、話をしたり、物を食べたりするとされる架空の病気。薬あるいは毒を食べさせると療治するとされる。

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