写真部部長 久家匡秋
すたすたと早歩きで歩く先輩を、宮野は競歩のように追いかける。
歩くたびに先輩の背後で揺れる髪に、馬の尻尾とは上手く言ったものだと思う。
「せ、先輩。どこまで行くんですか?」
「ん?どこって写真部だよ。言ったじゃないか」
振り返らずに、相変わらずのスピードで歩きながら先輩は言う。
宮野は早歩きから小走りに変わり、先輩の跡について行く。
あの裏庭にある屋敷から出ないような雰囲気の先輩ではあるが、やはりというか学生で迷わずに部室棟に向かっている。
先輩の後について歩きながら、宮野はあることを思い出した。
写真部の部長は、超絶美形で全女生徒の憧れの的だと。
しかし、その反面独特な性格な持ち主だとも言われている。
「先輩、写真部の部長って・・・・・」
「君も噂ぐらいは聞いているだろう?変わり者の変人だと」
「いや、そこまでは・・・・。ボクが知っているのは、すごい美形で性格が独特だって」
「まぁ、間違ってはいないな。あいつは顔だけはいいのが取り柄みたいなものだからね」
そう言って先輩が立ち止まったのは、ドアプレートに【写真部】と書かれた部屋の前だった。
しかし、先輩は入ろうともせずにただドアの前で立っているだけだ。
仁王立ちで腕組みをし、じっとドアを睨む先輩。
その姿に、宮野は声をかけようか迷う。
ふぅ、とため息をついて先輩は宮野の方へと向き直った。
そして、微かに微笑むと
「宮野君、帰ろうか」
「は????」
「いや、ね。私はここに入るのがどうしても耐えられないんだよ。あいつが居る部屋に、私が入るなんてとんでもないことなんだ。そうだ、写真は専門家に・・・・」
瞬間、先輩の言葉を遮るようにドアが勢いよく開いた。
ドアを開けたのは、背の高い茶色の髪をした青年だった。
その顔はむっすりとしかめっ面をしている。
だが、彼が美形なのはそれでも変わりはない。
「ひどいじゃないか、七竈君。僕に会いたくないなんて、そんな嘘をついて。僕は君に会いたかったんだよ。解るかい?揚羽だって僕には会いに来てはくれないんだ。ナオだってそうだ。何で皆僕には会いに来てくれないんだ??」
開口で一気に喋って青年はにっこりと笑った。
不覚にも、宮野はその笑顔にときめいてしまったのだが。
「当たり前だ。アキ、貴様はあまり変わってはいないな。私もナオも烏丸も、そのお喋りに辟易しているんだ」
「そうなのかい?ん?おや、そこのお嬢さんは?新顔だね、初めまして。僕は久家匡秋。この写真部の部長さ。あぁ、僕のことはアキとでも好きに呼んでいいよ。これは可愛い女の子限定だけどね、はは。あぁ、七竈君はひどいよね。僕に会いたくないなんて」
この瞬間、彼が変わり者だということを宮野は悟った。
そして、先輩が言っていた顔だけがいいという理由も分かった気がした。
「宮野桜花です、久家先輩」
「はは、久家先輩だなんて。僕のことは【アキ】でいいよ、吉野君」
「え?あの宮野ですけど・・・・」
「ん?桜と言えば代表は染井吉野だろう?だから、吉野でいいんだよ」
「宮野君、アキは変なあだ名を付けたがるからな。なれるしかないよ」
「あ、そういえば先輩も七竈って・・・・・」
「私は不本意だがな」
これまたむすっとした表情で、先輩は久家を睨みながら言う。
そんな様子を見て楽しむかのように、久家は嬉しそうに楽しそうに笑っている。
「で?七竈君、僕に用があったんじゃないかい?」
「あぁ。見てもらいたい写真があってな」
「写真?まさか、また心霊写真の類いじゃないだろうね」
「いや。どこかに作りはあると思うが・・・」
先輩はポケットにしまっていた、沙夜子から借りた写真を出した。
相も変わらず、少女一人だけの写真。
「へぇ。おもしろい写真だね。一応鑑定はしてみるよ」
「そうしてくれ。私たちはこれから烏丸のところに行くから」
「揚羽のところにか?なら言っておいてくれないか?すてきな兄が待っていると」
「自分でよく言う。分かった、とりあえずは伝えておくよ」
寂しそうに手を振る久家を尻目に、先輩はきたときと同じようにすたすたと歩いて行ったしまった。
慌てて追いかけようとする宮野を、久家が呼び止めた。
「吉野君」
「え?あ、はい?」
「七竈君は君を気に入っているようだね。彼女は人を気に入ると言うことがあまりないから、ちょっとだけ驚いているんだ。でも、彼女のそばに居るのが君でよかったよ」
それだけ言って、久家は部室へと消えていった。
七竈 高さ7~10m程度になり、夏には白い花を咲かせる。葉は枝先に集まって着き、奇数羽状複葉。秋にはあざやかに紅葉し、赤い実を成らせる。実は鳥類の食用となる。果実酒にも利用でる。 備長炭の材料として火力も強く火持ちも良いので作られた炭は極上品とされている。
北欧などでは魔よけにもなっている。




