考案~宮野の場合~
沙夜子が帰ってから、宮野は椅子に深く座り唸っていた。
写真から消えた小夜子
人々の記憶からも消えた小夜子
ただ一人、小夜子を覚えているという双子の沙夜子
「あー、訳がわからないですね」
「そうだね」
「先輩も解らないんですか??」
「君は神経を逆なでするね。解らないじゃなく、パズルのピースが少なすぎるんだよ」
テーブルの上の写真を、細い指で叩きながら先輩が言う。
「沙夜子君は覚えていて、ほかの人間は忘れている。写真からも消えたという小夜子という人物だが・・・・・」
そこまで言うと、先輩は椅子から立ち上がった。
そのままアンティーク棚の方へ歩いて行くと、棚からあるものを取り出した。
それは、宮野が苦手とする骨壺だった。
「うわぁ・・・・・」
「そう厭そうにしてくれるな。これはこれで美味なんだからな」
「それはそうと、先輩」
すくっと立ち上がり、宮野は拳を握った。
その瞳は爛々としている。
「これはまさしく【都市伝説】ですよ!神隠しとか、そういう系の」
「なんだ、宮野君」
「そんな【都市伝説】を信じているのかい?」
骨壺の中から砂糖菓子を一つ取り出し、口に放り込みながら言う。
大股に歩きテーブルに近づくと、骨壺を置き宮野に顔を近づけた。
切れ長の瞳が自分をとらえ、宮野は同性ながらどぎまぎした。
「よ、よくある話って・・・・・・」
「実際そうだろう?神隠し、口裂け女、人面犬など。どれもこれもどこにでもある、それこそよくある話じゃないか」
呆れたように言葉を吐き出すと、椅子に少々乱暴に座り直した。
冷めた紅茶を飲みながら、先輩はふぅ、と息を吐き出す。
「沙夜子君の件は、その【都市伝説】ではないよ。写真から人物が消える【都市伝説】なんて聞いたことないだろう?」
「じゃぁ・・・・」
「【都市伝説】を除いて、考えてみたまえ宮野君」
そう言われて宮野は頭を抱えた。
沙夜子だけから聞いた話だけでは、先輩の言う【都市伝説】のようにも思えてくる。
ただ、写真から消えた小夜子を考えていると、【都市伝説】とは違う気もする。
そもそも、小夜子という人物が本当に居たのか。
宮野は沙夜子の話を思い出しながら、小夜子が居るのかを考えた。
『いつものように部屋をノックして』『ノックすれば起きる沙夜子』
「先輩」
「ん?なんだ?」
「本当に小夜子という人物が居たんでしょうか?」
「と、いうと?」
「沙夜子さんは、小夜子さんが居なくなった朝に部屋をノックしたと言ってました。そして、ノックをすれば起きるとも言ってましたよね」
「そうだね」
「それだけで起きられる人が、わざわざ起こされるまで寝ているものなんでしょうか?」
「私は自分で起きるから問題ないが、宮野君は起こされるタイプなのか?」
「そ、それは今は関係ないとオモイマスケド」
アセアセと慌てる宮野を尻目に、先輩は口元に緩く笑みを浮かべる。
「君は本当にわかりやすい」
「あまりボクをからかわないでください」
「悪かった。では、本題に入ろうか」
足を組み、上にのせた足のまえで器用に手を組むと、にやりと先輩は笑みを浮かべた。




