小夜子
「小夜子が居なくなったのは、一週間程前です。いつもなら、起きたら居る小夜子が居なくて・・・・。家は両親が海外で暮らしていて、家には私たち二人だけなんです」
その日はいつも通りに起きて、いつものように小夜子を起こそうと部屋へと向かった。
部屋をノックしても、小夜子の返事は聞こえなかった。
いつもならば、ノックで起きるはずの小夜子が起きない。
ドアノブを回してみれば、簡単に回った。
カチリ、と音を立ててドアが開いた。
そっと、中をのぞいた沙夜子は慌てて階下へと駆け下りた。
部屋の中、薄緑のベッドの中に、小夜子は居なかった。
居間へと続くドアを開け、沙夜子は隅々まで双子の姿を探した。
「でも、小夜子はどこにも居なかったんです」
沙夜子のカップを持つ手が震えているのか、小さくカップがカチカチと音を立てている。
「その日を境に、私の前から小夜子が居なくなったんです。いえ、私の前と言うよりも・・・・・皆の前からも居なくなったんです」
「皆の前、というと?」
「・・・・居なくなった、というよりは記憶がないんです。私はあるんですが、皆の記憶から小夜子が居なくなっているんです」
沙夜子は横に置いていたバッグから、あるものを取り出した。
それは、少し色褪せた写真だった。
「私と小夜子です」
そこに写っていたのは、左端よりに立った少女だけだった。
ふんわりとした白いワンピースと、少し大きめの麦藁帽子。
その左手は、何かを握っているかのように閉じている。
「この子は?君か?それとも」
「私です。小夜子は右にいるんですが、貴女にも見えませんか」
沙夜子は右を指さす。
だが、そこにはなにも写ってはいない。
「私には見えるんです。ここに写る小夜子が」
「そうか。写真からも消えるとは、これこそ怪異だな」
うれしそうに先輩が言う。
写真を手に取ると、それこそ穴が開くんじゃないかと思うほど見つめている。
「沙夜子君、写真を借りてもいいかな?」
「はい。小夜子を見つける手がかりであれば」
それからしばらく話した後、沙夜子はよろしくお願いします、と入ってきたときと同じようにお辞儀をして出て行った。




