8/9
詩集 仮面の市場 3
Ⅴ
見えぬ帳場は
見えぬ癖に、
ずいぶん手際がいい。
僕が眼を伏せれば
伏せたことまで売りに出し、
僕が息を吐けば
吐いた息にまで見出しを付ける。
――「沈黙の告白」
――「退会匂わせ」
――「界隈に激震」
畜生!
誰が匂わせだ。
僕はただ
息を吐いたのだ。
肺は、広告代理店じゃない。
Ⅵ
それから
彼等は「炎」を飼っている。
火は本来、
暗い部屋にいる人間が
掌をかざして
やっと生き延びる為のものだろう。
だがここの火は
暖まらぬ火で、
ただ、よく燃えひろがる。
燃えひろがって、
燃えひろがるだけで、
灰の匂いがしないのが
妙に気味が悪い。
灰はどこへ行く?
灰は、僕の咽へ来る。
咽へ来て、
声をざらつかせ、
ざらついた声を
「強い言葉」として
また売りに出す。
――商売上手め。




