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詩集 声の巣  作者: よねり


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詩集 仮面の市場






電燈が 腐った眼玉で


昼間から ぶら下っている。


街角の酒場は もう要らぬ、


硝子の中に 酒場があるから。




硝子の酒場では


誰も 喉を濡らさぬ。


濡らさぬ代りに


舌だけが 赤い。




「本音」という札が 壁に貼ってある。


「本音」という札の下で


みんな ひそひそと叫んでいる。


――叫びとは こんなに


小さく 早いものだったか。







奴等は 仮面を持っている。


仮面といっても 紙ではない、


輪郭だけの 影のようなものだ。


それを顔の前に差し出して


「私」という。




私! 私! 私!


と、棚に並べて


値札を揃べて


互いの値段を 見較べる。




ところが値段は


己では決められぬ。


見えぬ帳場が 遠くにあって、


そこで誰かが


算盤を 鳴らしている。




鳴らしているのは 舎密せいみの音か、


それとも 蟲の歎きか。


歎きに似た算盤の音で


今日も「人気」が 配給される。







あるものは 善を売り、


あるものは 憤りを売り、


あるものは 哀悼を売る。


(売るつもりがなくても


売場に置けば 売れてしまう)




そうして


泣いた人の横に


解説が立つ。


倒れた人の横に


実況が立つ。


――立つ、立つ、立つ、


看板ばかりが いやにおとなびている。




僕は思う。


ほんとうの人間は


いつ 出て来るのだろう。




出て来ない。


出て来ない代りに


切り抜かれた言葉が


踊っている。


踊っているが


胴体は 何処にもない。

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