表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

番外編:灰の空に散るものたち

これは…IFルート…

もしもの世界…

例えば強敵がアイよりも強い奴なら?

そんなもしもの世界線…

さぁ、進めよう…

物語の時を…

重たい灰色の雲が空を覆っていた。

西暦5025年、都市の廃墟に立つ二人の姉妹。妹アイの胸元は血で濡れており、その体は今にも崩れそうだった。

目の前には、圧倒的な力を持つ存在——魔人。かつて存在したどの敵よりも強く、アイでさえ太刀打ちできないほどだった。


「アイっ! もうやめてよ!」

姉・リリの叫びが、傷だらけの空気を震わせる。

「このままじゃ、死ぬよ……! だから……逃げようよ!」


アイは、吐血しながら微笑んだ。

「逃げられない……こいつからは……戦って、勝つしかないんだ……」

「だいじょうぶ。私は、最強だからな……」


それは、強がりでも希望でもない。

ただ、大切な人を守り抜こうとする覚悟の言葉だった。


次の瞬間、空気が割れるような音が響いた。

アイの全魔力と命を込めた最終魔術が放たれ、魔人も全力で応じる。

二つの力が交わると、世界そのものが悲鳴をあげた。


空間に亀裂が走り、閃光と衝撃があたりを襲う。


「アイっ……!!」


リリは吹き飛ばされ、瓦礫に埋もれる。

耳鳴りの中、聞こえてきたのは——静寂。

そこに、アイの姿はなかった。


魔人は、息を乱しながらもまだ立っていた。

だが、それを見たリリの心の何かが、ぷつりと音を立てて切れた。


「アイを……返して……」


目に涙を浮かべたリリは、もうリリではなかった。

その戦いは、もはや戦闘とは呼べなかった。

魔人は抵抗する間もなく、リリの手によって苦しめられ、破壊された。


倒れた後も、リリは震える指でアイの名を呼んだ。

「アイ……ねぇ……起きてよ……」


答えはない。

リリは、血に染まった妹の身体を抱きしめながら、泣き崩れた。

そして静かに、アイの頬に口づけると、力なく微笑んだ。


「待ってて……すぐに……そっちに行くからね」


リリはアイの胸に額を預け、目を閉じた。

次の瞬間、心臓を自らの力で止めた。


誰にも知られず、誰にも届かない場所で、

二人の姉妹は、静かに終焉を迎えた。


灰の世界に、風だけが吹き抜けていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ