第七章:決戦の胎動
灰の風が吹いていた。かつて都市だった場所には、瓦礫と沈黙だけが残されている。破壊された街の中央に立つのは、灰色のヒーロースーツを身にまとった少女——リリ。
その後ろには、紅炎の戦士・カイ、碧刃の戦士・ミナト、雷光の戦士・ルナ。150代目ヒーロー戦隊が勢揃いしていた。
ルナ「……やっぱり、あいつらか」
遠くから響く不気味な足音と共に現れたのは、漆黒のマントにコードのような装飾を纏った謎の集団。その胸には禍々しい紋章が刻まれていた。
カイ「カースコード……やっと出てきやがったな」
リリ「……ここで終わらせよう。これ以上、誰も傷つけさせない」
カースコードの幹部のひとり、グラウヴァイスと名乗る男が前に出る。その瞳は虚無を宿していた。
グラウヴァイス「灰の戦士よ。君の力は興味深い。まるで“あの者”を思わせる。だが、君に我々の理想は止められない」
リリ「……“あの者”って、アイのこと?」
グラウヴァイス「ふふ、さてね……でも、いずれわかるさ。我々が何を恐れ、何を追い求めているか……君たちはその答えに辿り着けるかな?」
その瞬間、雷光が空を裂いた。ルナが先陣を切り、光速に近い突撃を仕掛ける。
ルナ「黙ってやられるかぁっ!!」
続けてミナトが碧の刃を風と共に操り、敵の陣形を崩していく。
ミナト「背中は任せるよ、リリ!」
リリ「うん、行くよ……!」
リリは灰のエネルギーを体に収束させた。物理強化属性によって、肉体と反射神経を極限まで高め、超人的な動きで敵の中心に踏み込む。
その動きは、ヒーローたちを圧倒するほど鋭く、力強かった。
リリ(アイ……見てて。私、ちゃんと……戦えてるよ)
敵の攻撃は強力だった。カースコードの幹部たちは、それぞれが異なる術式や兵器を使い、ヒーロー戦隊を分断しようと試みてくる。
しかし、彼らの連携は完璧だった。リリはミナトと背中を預け合いながら、瞬時にカウンターを叩き込み、ルナとカイは前線を切り裂いて突き進む。
カイ「燃え上がれ、紅蓮の刃ッ!!」
リリ「この力……もう、迷わない。私は——」
その目には、もうかつての不安はなかった。姉として、ヒーローとして、守る者として、彼女は今、戦っている。
戦場の中、誰も気づかぬ一瞬。高空の遥か上、雲を突き抜けたその先に、金髪の少女が静かに空を見下ろしていた。
アイ「……リリ姉、頑張ってるな……その時が来たら、な…」
その姿は風に溶け、再び消えていく。
そして、戦いは続く。ヒーローたちとカースコードの衝突は、世界に新たな時代の胎動を刻みつけるのだった——。