第六章:影に蠢く者たち、カースコード
リリの目の前に広がっていたのは、瓦礫と化した街並みだった。
黒い霧のような気配が、空間そのものを歪めている。空はどこまでも曇天で、陽の光すら地上に届かない。まるで世界そのものが、絶望に染まっていくかのようだった。
「……来たんだね……“カースコード”」
リリは呟いた。
ヒーロー協会に選ばれてから数週間、彼女は仲間たち——150代目ヒーロー戦隊とようやく合流し、訓練と任務を重ねてきた。誰もが己の力を信じ、正義の名の下に戦っていた。
そして今、その全員がこの地に集結していた。
紅炎の戦士・カイ「リリ、こっちの準備はできてる!あとはお前のタイミングに合わせるだけだ!」
碧刃の戦士・ミナト「敵の規模は大きい……けど、アイツら、無茶な突撃はしてこない。何かを“待ってる”気がする……」
雷光の戦士・ルナ「気を抜かないで、あの黒い空気、ただの演出じゃないよ。動くだけで力を削がれる感覚がある……!」
リリは静かに頷く。
「……大丈夫。私は、あの人に教えられた。自分の軸を持って、恐怖に流されないこと」
リリは足を踏み出す。
「ヒーロー戦隊、全員突撃準備。目標は、カースコード本隊の掃討。そして……市民の救出。誰一人、死なせない。わたしたちは、“ヒーロー”だから」
カイが拳を突き上げた。
「よし、行くぞ!150代目ヒーロー戦隊、全力出撃ッ!」
戦場に足音が響く。炎が立ち昇り、雷鳴が轟き、水と風が駆け抜け、木々の咆哮と闇の囁きが混ざり合う。
だが、彼らの前に立ち塞がったのは、人ならざる存在だった。
黒いコートをまとい、顔を仮面で隠した男。
「……我ら“カースコード”は、お前たちを歓迎する。ヒーローなどという幻想にすがる愚か者たちよ」
リリは睨みつけた。
「……幻想?違う。わたしたちは、“信じている”だけ。世界は守る価値があるって」
仮面の男は微かに笑う。
「ならば、試してやろう。我らの“呪い”が、いかに深く、この世界に根を張っているかを——」
その瞬間、空が裂けるような咆哮と共に、無数の黒い存在が一斉に戦隊へ襲いかかる。
仲間たちは叫び、踏ん張り、力を発揮する。
リリは跳び上がり、拳を振り抜いた。
その拳は、空気すら砕く。
「私は、“灰”の戦士。何度でも立ち上がる、何度でも抗う。あの人が見てるから。私のすべてが、ここにあるから!」
地に立つヒーローたちの姿は、希望そのものだった。
そして、どこかで微かに笑う少女の声が響いた。
こうして、「カースコード」との本格的な戦いが始まった。
世界の終わりを告げる者たちに抗うために。
彼女たちの物語は、まだ続く。