第二章:時を越える師匠
遥か過去へ、アイは自身の力で時空を超えた。
3000年前の世界に降り立ったその日、彼女は出会った。まだ未熟で、戦う理由すら曖昧なヒーロー戦隊の少年少女たちに。
その者たちは「初代ヒーロー戦隊」と名乗った。
赤の戦士・レグルス、青の戦士・アクア、黄の戦士・エル、緑の戦士・ベリル、ピンクの戦士・サクラ、そして紫の戦士・ノクス。
アイ「ほぅ……みんな、やるじゃないか。短期間でここまでの制御ができるようになるとはな」
レグルス「アイ師匠、炎の流れが前より読みやすくなってきました!」
アクア「私は水刃の軌道を空間ごと捻じ曲げてみました!」
アイ「……ふむ、面白い発想だ。だがまだ甘いな。敵は正面から来るとは限らない。“視ろ”。相手の先の動きを、未来の分岐を意識しろ」
彼女は彼らに魔術を叩き込み、時に優しく、時に厳しく指導した。
教えるというより、鍛え上げる。
そしてその瞳は、常にどこか遠くを見ていた。
ノクス「……あなた、本当は、何を見てるの?」
アイ「……さあな。“私の視界”は少しばかり広いんだ。誰にも見えないものが、私には見える。それだけさ」
短い時間ではあったが、初代ヒーロー戦隊にとってアイは師であり、時には家族のような存在となっていた。
だが、アイは自分が生まれた時代に戻らねばならなかった。
サクラ「……また、会えるよね?」
アイ「……ああ、会えるさ。運命が望めばな」
そして彼女は、自分の時代へと帰還する。
迎えるのは、唯一の肉親であり、誰よりも大切な存在——灰の戦士、リリ。