開戦演説 『日輪ヨ 燦々ト輝キ 煌煌ト燃エヨ』
――諸君。
――今この時、魔界に立ち、決戦に備えている諸君。
――武器を握り、装備を整え、作戦を練り、使命に挑む者たちよ。
――まずは諸君らに感謝を述べたい。
――諸君らはこの国のために命を懸けて戦ってくれるのだから。
――諸君らが今そこに立っているのは、
――家族のため、恋人のため、友人のためか。
――はたまた名誉のため、お金のため、復讐のため、もしや闘争を求めたゆえか。
――そのいずれであれ、私は肯定する。
――そして誇りとしてほしい。
――この国の危機のために立ち上がってくれたのに変わりはないのだから。
――だからその決断に一切の不安を作らないでほしい。
――……
――これから諸君らが対峙する敵は、今までの雑兵や、魔獣如きではない、魔王軍だ。
――そもそも魔人は諸君らより肉体的に優れ、おぞましく、そして我々には使うことのできない『魔法』を使う。
――魔人、そしてそれらを束ねる魔将と魔王!
――この集合体が今攻めてきているのだ。
――諸君らは今恐れているか?
――不安が芽生えたか?
――もしかしたらそんな勇士もいるかもしれない。
――……
――だが!
――思い出してほしい!
――大日輪皇國軍はこの千年間の間! それら脅威を打ち砕いてきたのだ!
――かつての皇國軍人たちは、技術も武装も、現在に遠く及ばぬ時代においてさえ、魔人どもを退けた。
――それはなぜか!
――それは、かつての大日輪皇國軍人一人一人が、魔人どもの持っていない強靭で不屈の「精神」を持っているが故だ!
――奴らは魔人! されども獣!
――己より強いものと対峙したならば、矜持も使命も捨てて降伏し、逃げ出す生き物だ。
――しかし諸君らは違う!
――諸君らは今! プライドを捨てて逃げようとしているか?!
――魔王に滅ぼされると諦めているか?
――否!
――諸君らは己より強大な敵に対し! むしろ立ち向かっているではないか!
――この数週間! いや数年間!奴らに負けぬと、この国を守ろうと諸君らは技を鍛え! 術を研ぎ澄まし! 新たな武器を作り! 軍の一人として血の滲むような、文字通り決死の覚悟で努力してきただろう!
――その姿こそが! その精神こそが!
――我ら大日輪皇國軍が受け継いできた最大の武器であり! 千年間魔人どもを退けてきた所以なのだ!
――わが軍に勝利をもたらした歴史が証明するこの精神力と! そして千年積み上げ、練り上げた技術をもった我ら軍に!
――負ける道理が! 理由が! 運命があるものか!
――いやない!
――我々がこの強大な精神力と、千年にわたり練り上げた技術を持つ限り、敗北などあり得ぬ!
――よって命じる!
――これより一同心を鋼とし! 敵を滅す鬼となれ!
――我ら軍こそが! 真の脅威だと魔人どもに思い知らせる鬼となれ!
――斬れ! 穿て! 叩き潰せ! 千切れ! そして殺せ!
――皇國のため、全力を尽くせ!
――私、総司令官が! 元帥閣下が! そして日帝陛下が全てを許す!
――もう一度問う!
――諸君らがそこに立つ理由はなんだ!
――その一切にも! 我々は、『正義』という名の印を押し! 『お国のためだ』と署名しよう!
――大義という名の薪を焚べ! 闘志というの名の蒸気で動け!
――脅威を振るう鬼でなく、使命で殺す機械ともなれ!
――そうなった諸君ら一兵一兵は! もはや軍団長をも、十偉将をも超える力をひねり出すことができるはずだ!
――私はそう確信している!
――さあ燻ぶっている鬼械どもよ! 命を懸ける準備はできたか!
――日の丸に仇なす怨敵は、我ら日輪が焼き尽くすのだ!
――だからこその『大日輪皇國軍』!
――だが忘れるな。
――我々は、『お国のためだ』と署名した!
――その『国』には! 諸君らの友人や家族、故郷諸々だけではない!
――諸君らの前にいる戦友! 周りの仲間! そして諸君ら自身も『国』なのだ!
――だからこそ、積極的に死にに行くのは許さん!
――死にに行かせることも許さん!
――『命はかけても命は捨てるな!』
――それが私、『南郷』としての命令だ。
――……諸君、時は来た。
――開戦まであと幾数秒もない。
――最後に、この國の英雄の言葉をもって戦を始めたいと思う。
――『皇國の興廃! この一戦にあり! 各員! 一層! 奮励努力せよ!』
時計が0時を示す。
――全軍!
――攻撃開始ぃ!