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戦争前日譚 『魔王の脅威』

 魔王と勇者は表裏一体、対、二つで一つ。

 その運命は100人中100人が答える常識だ。

 ではなぜ運命なのか。

 それはおそらくとある共通点があるからだろう。

 例えば…………


 ***


 大日輪皇國軍魔王領の北、山脈の向こう、一つの国の王都が魔王軍に攻められていた。

 その王国の名前はサンメゴ王国。

 山々に囲まれ、そして高い要塞で都市を囲んだその王都は暗黒国群ではめずらしい1年も続いた国家。

 しかし三人の魔王軍相手ではそんな威光は通用するはずもなく、今サンメゴ側の防衛軍はなすすべなくやられていった。


 王国の包囲戦の一角を指揮していたのは魔将、シャー。

 見た目は正義ら破暁隊メンバーと同い年の少年に見えるがその実年齢は70歳以上。だが齢70で魔将まで上り詰めることができるのは魔人の中でも稀有。彼は魔人としての才能の塊なのだ。


 都市が滅び、焼け、壊れていく様子をシャーは冷徹に見下ろす。

 だがそれでも1年持った国。

 シャーが攻めた中で今までで一番の抵抗を見せ、膠着状態に陥っていた。もちろん無理をすれば倒せるだろうがこの後の門番(ハーリス)戦に備えるため兵を無駄に消耗したくない。

 どうしたものかと思案するシャーに対し、その部下の魔人がシャーに伝達する。


「シャー様。魔王様が到着なされました」


 その報告を聞いたシャーは勝利を確信。

 にやりと笑う。


「わかった……全軍に伝達! 直ちに撤退だ! 魔王様の猛攻に巻き込まれたくなければな!」


 シャーの伝令は魔法を伝って約一分後に全軍へ届く。


 ***


 逆に突如侵攻をやめて都市から出ていく三魔王軍にサンメゴ防衛軍側はあっけにとられてしまう。ついに勝ったのかと喜ぶものもいる、安堵する者もいる。


 だがこれは嵐の前の静けさ。

 滅亡までのカウントダウンのリセット、そして短縮の合図……



 突如、サンメゴ王都上空に巨大な魔法陣が3つ出現する。

 サンメゴにいる魔法使いはそれが転送魔法陣であることを判別。

 そこから3つの人影が出現した。


 王国の民や防衛軍はそれを一目見て何者か気づき、絶望する。



 魔王



 魔王が攻めてきた。

 魔王が自分たちの王国を呑みに来た。


 3つの絶望は空中で別れ、王都に堕ちる。


 4つのうでと紅の複眼で地上の雑兵を狙う迅蟲王(じんこおう) ムシャマは地上の魔法使いが放ってくる無数の魔法の弾を避けながら進む。


「ムダムダムダ! オレノ速度ハ音速ノ三倍! 当タルワケネエダロウガヨオ!」

 

 サンメゴの魔人は必死に魔法を放つもムシャマは止まらない。音速よりも速いため、ムシャマの煽りを聞く前に殺される。


「キエア!」


 地上付近で飛ぶムシャマだがその速度は変わらない。たとえ曲がったとしてもだ。音速を保ったまま縦横無尽に動き回り、その節足で魔人どもの首をもいでいく。

 そのことに()()()()本人は気づかない。

 たった十数秒で約200の魔人が殺された。


「魔王だろうが速いのみ! 我、魔将ヒューシャが切り伏せる!」


 ムシャマのはるか前方、鬼のように2本の角をはやした魔将が禍々しく、重々しい大剣を構える。

 確かに相手は速い。首はとれなくとも必ずどこかは斬ることができるはず。


「シャラクセエ!」


 ヒューシャはこのサンメゴ王国の守護神の一人。先ほどの動きを観察し完全に見切ることは不可能だったが体のどこかに当てることはできるだろうと確信。精神を統一し、剣を振り上げる。

 その剣速はヒューシャの剣がムシャマの肩を捉えた。

 が、


 音を立てて壊れたのは剣の方。


「俺ノ身体ハ硬エンダ。テメエノ剣デ斬レルト思ウナヨ?」


「馬鹿な……」


 自分の剣が効かなかった、その絶望が頭を支配した瞬間、首をもがれて殺された。

 頼みの綱の魔将が負け、これ以上抵抗できるはずもなく、サンメゴ王都の三分の一、壊滅。


 

 ***


 

 輝光の魔術師王、アルトランサは飛行魔法を使い上空で静止していた。

 地上の魔法使いが彼に魔法を飛ばすもアルトランサはいつの間にか張っていた防御幕で魔法1つ届かない。それを感じた地上の魔法使いたちは威力を上げるため詠唱を始めていく。

 だがアルトランサはそんな彼らを嘲笑する。


「敵の目の前で詠唱などという隙を曝すなんて……愚の骨頂だよね!」


 アルトランサが杖を振ると、杖の先に飾ってある20を超える宝石が空中に分離し、鈍い輝きを放ち始める。

 

「君たちのお遊びのような魔法とは違う……真の魔法を見せてやるよ!」


 アルトランサの魔法は詠唱を必要としない。宝石にあらかじめ詠唱の機能を持たせ、ゆえにただ宝石に魔力を流すだけで魔法が発動できるのだ。


絶望の光群(アドゥワ・アルヤース)


 アルトランサがそうつぶやくと宝石が急に地上にワープし、魔人がなにかと怪しむ間もなく……


 爆発


 ドドドという轟音と火柱が上がり、すべて吹き飛ばすような十数のおぞましい破壊が地上で起きた。

 その爆発はただの爆発ではない。魔法使いを殺すために様々な工夫がなされた魔法。一端の魔法使い如きの防御魔法で防げるような代物ではない。

 アルトランサの魔法により、王都三分の一が全壊となった。

 

 

 ***

 

 

 ムシャマとアルトランサの成果により都市の三分の二が破壊されたことで熔灼漿王(ようしゃくじょうおう)ゼノンが動く。

 手を高く上げるとはるか上空、どこまでも続く雲ぎりぎりのところに魔法陣が展開される。

 だがその魔法陣は巨大などというものではない。直径は王都全域を包むほど広く、見上げる魔人たちは端が見えないまで。


 ゼノンは魔法を発動する。

 王としての矜持を示し、民へと宣言するように。


神火山の怒り(イフリーガ)


 その瞬間魔法陣がオレンジ色に光るもすぐには何も起きない。誰も死なず、街も壊れていない。

 魔人の中には不発かと思うものや、ハッタリかと考える者もいる。

 しかし魔法は発動しているのだ。

 ではなぜ何も起きないか。

 それはこれが()()させるためのものだから。


 魔法陣を見上げる地上の魔人の一人が、足元が熱くなっているのを感じる。その魔人が足元に目をやるとポツンと橙色の光があった。

 いや、ただの光だけではない。

 

 溶けていた。どろどろに溶けた床がオレンジ色に光っていたのだ。

 その溶解した光は地面にどんどんと、ポツポツと増えていく。再びそれに気づいた魔人が空を見上げれば、何が起きたかわかった。


 雨。


 魔法陣から熱で街を溶かす雨が降っていたのだ。

 その雨の量は増えていく。

 量どころか雨粒ほどの大きさは直径1センチ、10センチ、そして1メートル。落ちてくる溶岩の粒はどんどんと大きくなる。


 それから王都は地獄と化した。


 溶岩の雨が町を溶かす。戦闘員も非戦闘員も関係なく地上の魔人が焼かれていく。


 マグマに当たっただけでは即死ではないため、当たり所が悪い魔人は痛みで叫ぶものもいる。


 恐怖も混ざった悲鳴が王都を包む。

 眼前に映る獄炎色を見てゼノンは笑う。

 弱者の醜いあがきとともになすすべなく死んでゆく。絶対強者でしか味わえないその愉悦をゼノンは最後の一滴まで啜るのだ。

 

「すばらしい、この色とこの音でしか、私の心は満たせない。……すばらしい」


 ゼノンの力ならばすぐに王都を滅ぼすこともできる。そうしないのは単にこの景色を見るためなのだ。


 だがゼノンとて魔王。

 その役目を果たさなければならない。


「シャー。聞こえるか」


『はい、ゼノン様』


「城に攻め込み、王を屈服させろ」


『かしこまりました』


 部下との魔法通信を終えた直後、自身に近づいてくる気配をゼノンは察知する。

 その気配は敵意を向けて接近。


「グウオオオオ!!」


 雄たけびを上げながら飛んでくるのは鎧を着こんだ黄金の鬣をたなびかせる獅子。背中には鷲のような翼をはためかせ、両手に持つは銀色の斧。


「なるほど……君がサンメゴの守護神の一人、魔将デュルクヴァングか」


 サンメゴ王国の強者を目にしてゼノンは余裕を見せつつも身構える。それほどに相手は強いかもしれない。下の雑魚のようにやられてはくれないだろう。


「いかにも。その首……もらい受ける!」

 

 デュルクヴァングは瞬間移動かと思うほどの速度でゼノンに接近、大斧を振り下ろす。

 ゼノンの予想よりも速く、二の腕で防ぐことしかできない。斧の刃はどんどんと腕に入り込み、痛みで苦悶の表情を浮かべるゼノン。

 

「私の剛力はサンメゴ1。魔王とて防ぐことはできぬ! それに貴様は魔法使いの類の魔王! 接近戦を得意としない! 魔王如き、私の敵ではない」


「ぐぬぬ」


 苦悶の表情を見せるゼノンは魔力を腕に込め、熱で溶かそうとするが斧は溶けない。どうやらただの鉄の斧ではないようだ。


「無駄だ! この斧は昔の魔の英雄が振るった伝説の時代の武器。壊れるわけがない! このまま腕を絶ち、そして首を斬る!」


 力を入れるデュルクヴァング。

 そのまま腕が斬られると思ったのも束の間、ゼノンは不敵な笑みを浮かべ、斧を押し返す。

 目の前の魔王の変化に驚くデュルクヴァング。傷も治っていき、ゼノンが腕を振るとそのままはじかれ、飛ばされた。


「馬鹿な……こんな力……いったいどこから?!」


 反撃されるとは思わず焦るデュルクヴァングにゼノンは余がある様子で言い放つ。


「どこから? そうだな……強いて言うならば『意志』だな」


「意志だと?」


「そうだ。我ら魔王は意志や欲望がそのまま力へと変える。『意志の増大』というらしい」


 そう、魔王の権利の1つであり、この世には2つの職業にしか付かない権利。

 意志をそのまま力へと変換させる権利。表裏一体の勇者と魔王が運命レベルで引き合う理由が、この権利ゆえであえる。


「それが魔王の『権利』というわけか……」


「その通り。これを魔法に適応させれば……」


 ゼノンは腕に再び魔力を集め、その熱による蜃気楼で揺れる拳でデュルクヴァングへ殴り掛かった。

 デュルクヴァングは斧で防ぐも斧が、そしてデュルクヴァングの鎧が溶かされて拳がデュルクヴァングの腹に突き刺さり、貫く。


「この私が……負けるとは……」


 腹を貫きながら、ゼノンはデュルクヴァングを称賛する。

 

「お前は強い。我の部下の中でもお前に勝てるものは少ないだろう。どうだ? 我の部下にならないか? ともに門番(ハーリス)を倒そうではないか」


 口から血を出し、意識をもうろうとさせながらもゼノンを睨む。


「わかった……そうする……」


 そうして守護神の一人が、意地も外聞も捨てて降伏した。


「さて、シャーは仕事をしたのかな?」


 

 ***


 

 サンメゴ王都の中心、この国を治める王がいる城のてっぺん。

 シャーは部下の魔人とともに頂へ続く階段を走っていた。途中兵士が止めようと向かってきたがシャーの敵ではなく、順調に王の間へとたどり着く。


 扉を蹴破ると王がいた。彼は逃げることも慌てることもなく、ただ豪華な椅子に座していた。豪華な衣装と薄黒い皮膚、禍々しくねじれた角が三本頭から生えている王はシャーを見下ろす。

 

 シャーは剣先を王へと向け言い放つ。


「投降しろ。魔王、サンメゴ=ヴァルメテウス王よ。さすれば王都の破壊はここで止めると約束しよう」


 ヴァルメテウス王は今まさに滅ぼされようとする国の主とは思えないほど傲慢に言い返す。

 

「投降? 笑わせるな。確かにこの国は亡びるだろうが()は滅びぬ。我さえいればサンメゴは復活する」


 ヴァルメテウス王は椅子から立ち上がり、魔法で金棒を作り出す。魔鬼(オーガ)として生まれ、そこから魔王へとのし上がった王の実力は戦わなくなった今でも健在。


「いざ!」

 

 最初に動いたのはヴァルメテウス王。

 何トンもある巨大で重厚な金棒をまるで木の棒を振るうような速度で振るう。だが木の棒レベル、シャーがいつも練習相手としているマッハ3の()()にはかなわない。

 余裕をもって間合いを図り、回避。


「遅い!」

 

 金棒を振り終わったところでシャーがヴァルメテウス王の懐に入り剣で鳩尾に刃を立てるも、


 剣が弾かれる。


 慌ててシャーは距離を取った。

 何が起こったか、防御魔法ではじかれたのではない、と考察しているとヴァルメテウス王が笑う。


「貴様の剣は我には届かん。なぜなら……」


 ヴァルメテウス王のオーラが変わる。まるで雷の如く、青白い光がバチバチとうねり始めた。


「なるほど、その魔力に俺は弾かれたということか」


「その通り! さあ絶望しながら死ね!」


 オーラを増幅させ、威圧するヴァルメテウス王だがシャーは動じない。


「確かに今の俺の魔力ならば、そのオーラを突破することは難しいだろう……なら、俺も『権利』を、魔王様より賜った『権利』を使うとしよう」


「なんだと?」


 シャーも魔力を高め、オーラをまとう。

 透明なオーラ。これは彼自身の魔力が具現されたものだ。

 シャーはゆっくりと、されど一瞬の隙を作らないように努めながら気を練り始める。


「権利、『発動』」


 突如、その透明なオーラが赤く燃え滾る。

 そしてその量も増幅。彼の変化にヴァルメテウス王は驚愕。

 

「馬鹿な?! そのオーラ……その魔力……まるで外にいる……」


「そうだ……魔王の権利『力の分配』、そして力を分けられた魔人が得る権利、「属臣化」。これにより俺はゼノン様の力を使うことができる」


 焦ってこん棒をシャーへと振り下ろすもシャーは避けず、それどころか……


「ハァ!」


 魔力を込めた拳を棍棒にたたきつけ、砕いた。


「なっ!?」


 動揺するヴァルメテウス王。魔界産の圧倒的に硬い金属を存分に込められた金棒が一匹の少年の拳によって砕かれたのだから驚くなと言う方が無理だ。

 その隙にと言わんばかりにシャーは魔力を剣へとまとわせ、再び接近。オーラを全開にして守りに転じるヴァルメテウス王だがその表情に余裕は見られない。剣を構え、ヴァルメテウス王の横腹に狙いを定めて剣を振る。


火竜の爪(ファッカ・ザファル)!」


 炎をまとった剛剣は……

 

「我は……魔王……」


 過去の栄光が自らの死を否定できるわけもなく、ヴァルメテウス王は真っ二つに切断。

 それでも魔王は生きている。

 死ねないとでもいうべきか。

 死ねないまま自信の敗北を嚙み締めなければならないヴァルメテウス王に対し、オーラを透明へ戻したシャーは無慈悲に伝える。


「投降しろ」


 

 ***


 

 戦闘が終わった。

 王都は落ち、今は三魔王軍が勝利の宴でどんちゃん騒ぎのお祭り状態。

 ヴァルメテウス王がいた王の間は今三人の魔王が魔法で作った椅子に座って占領している。


「まさかシャーが魔王を倒すと話思わんかった! さすが右腕!」


 後ろに立っているシャーを称賛するゼノン。


「おほめに預かり光栄です」


 冷静に受け止めるもシャーの心のうちは狂喜乱舞であった。アルトランサも彼の活躍を評価する。


「そうですね。どうです? 私の後継者になりませんか? シャー君ならできますよ」


「いえ、私はゼノン様に忠誠を誓っています。うれしい誘いではありますが、申し訳ございません」


「まったく、かわいいやつめ!」


 ゼノンはその大きな手でシャーの髪をわしゃわしゃと撫でるがシャーは嫌がるような様子を見せない。


「カッカッカ! ソウダナ! シャーハオレノ戦闘訓練ニ唯一付キ合エル魔将! オレモオマエガ後継者ダナ!」


 三人の魔王に功績をたたえられ、シャーはこの世の絶頂を味わう。

 シャーのほかにもその空間には何人か魔将がいるが、全員が彼に嫉妬の感情を向けた。

 

「しかし順調! このまま門番(ハーリス)も滅ぼしてしまおうではないか!」


「ええゼノン。しかしどうしましょうか。戦争中、我々魔王はいつどこで戦います?」


「ワレワレハ強イ。ダガ奴ラモ強イ。我々ノ軍勢ガ不利ニナッテイル所ニ我々全員ガ助ケニ行ケバイインジャナイカ?」


 珍しくまともなことを言うムシャマの提言にほかの二人は納得するようにうなずく。


 






 ■■■



 

 王都が静寂に包まれる。

 どす黒い殺意にお祭り騒ぎをしていた魔人は動きを止め、魔将、魔王ですらフリーズしたかのように停止。どこからか来るすさまじいそれはまるで獲物を探す龍の如く恐ろしく、見つかってはいけないと彼らは思ってしまう。

 ようやく魔王や魔将たちが殺意に慣れ、その殺意が()からくることを察する。今まで感じたことのない恐怖に魔将やシャーは動けない。

 魔王も先ほどの勝利ムードとは一変、沈黙してしまう。

 

「この殺意……なんだ……?」


 シャーのひねり出したような疑問にゼノンが答える。

 顔をゆがませ、汗をたらしながら。

 よく見ると魔王三人全員がこの殺気に怖気づいている。さきほどまでこの都市を笑って蹂躙した奴らとは思えない。


不変国家の絶対錨(アンカー)だ……」


「アンカー?」


「絶えず国家や共同体の滅亡と創生が繰り返されるこの魔界で、自らの国家を何百年単位で存続させることを可能にする『個』……その存在は世界に認識されているという……まさか門番(ハーリス)の中にそれがいたとは……」


 主の苦し紛れのゆがんだ顔をシャーは初めて見た。よっぽどの出来事なのだろう。ゼノンは立ち上がり、周りの魔将と魔王に宣言する。


「作戦を変更する! ここにいる三人の魔王、そして数十の魔将で不変国家の絶対錨(アンカー)と決戦する! いや! そうしなければ勝てない!」


 作戦を提案したムシャマすら反論せず同意。それが最善だと考えているからだ。

 ゼノンは外で殺意を恐れる魔人に叫ぶ。


「諸君ら恐れるな! この殺意がなんだというのか! 我ら魔がこの殺意ごと滅ぼしてくれようではないか!」


 その演説に心動かされ、魔人どもは雄たけびを上げる。

 と、ともに彼らの殺意への恐れはなくなった。

 

 おそらく不変国家の絶対錨(アンカー)は我々を脅し、牽制しようとしたのだろう。

 だがそうはならなかった。

 魔王軍(われわれ)は強い。

 そんな自信を魔人に芽生えさせるとともに戦意はむしろ高まることとなる。


 彼らを鼓舞したゼノンが一人の魔将にこう伝えた。


「例の件、受け入れようではないか」


 戦争開始まで、あと数日。

戦争前日譚を読んでくださりありがとうございます!


不変国家の絶対錨アンカーがこの作品の最強の立ち位置です。


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